◎欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長はドイツのメディアの取材に対し、「ワクチンの開発だけでなく、生産と配達にもっと焦点を当てるべきだった」と述べた。
◎ドイツの一部メディアはフォン・デア・ライエン委員長を打ち負かしたが、政府の全ての高官が欧州委員会を非難したわけではない。
2月5日、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、EU加盟国のコロナワクチン展開が遅れていることについて、初めて対応の過ちを認めた。
フォン・デア・ライエン委員長はドイツのメディアの取材に対し、「ワクチンの開発だけでなく、生産と配達にもっと焦点を当てるべきだった」と述べた。
フォン・デア・ライエン委員長の母国の市民は、自国の企業「バイオNテック」とファイザー社が協力して開発したワクチンが、アメリカとイギリスに大量輸入されていることに不満を募らせている。
これまでにドイツ国内で展開されたワクチンは約300万回分。一方、イギリスは1,100万回を超えた、
ドイツはワクチンの展開に向けて、集団ワクチン接種センターを全国に約400カ所整備したが、ファイザーワクチンの供給量が予想よりはるかに少なく、センターの多くが閉鎖されたままだという。
ドイツは厳しいロックダウンを継続しているにも関わらず死亡者数は高止まりしており、連日700~900人が亡くなっている。ジョンズ・ホプキンズ大学のまとめによると、累計感染者数は227万件、累計死亡者は6万人を超えた。
<人口あたりワクチン接種率:2月5日時点>
1位 イスラエル 61.7%
2位 UAE 38.9%
3位 イギリス 16.5%
4位 アメリカ 10.5%
5位 バーレーン 10.4%
ー ドイツ 3.6%
ドイツの一部メディアはフォン・デア・ライエン委員長を打ち負かしたが、政府の全ての高官が欧州委員会を非難したわけではない。
ドイツの左翼または右翼コメンテーターは、イギリスのワクチン展開に感銘を受けている。しかし、彼らはイギリスの死者数が世界で最も高いレベルに達していることも理解している。ドイツ政府および大半の市民も、イギリスのパンデミックへの対応をロールモデルとは思っていない。
一方、ワクチン展開で大きく後れを取ったドイツの感染状況は確実に低下している。過去7日間の10万人あたりの感染者数は80人、イギリスは224人だった。
ドイツ政府および市民は、「EU加盟国で連帯して最前線の医療従事者、高齢者、小規模な州にバランス良くワクチンを展開すべき」というEUの考えを受け入れている。
アンゲラ・メルケル首相はこの考えを繰り返し支持しており、フォン・デア・ライエン首相を擁護したと伝えられている。メルケル首相は5日の記者会見で、「EUでまとめてワクチンを購入するという決定は正しい」と述べた。
欧州委員会に対する罵倒は、メルケル首相の後任選びと関係がある。
オラフ・ショルツ財務相兼副首相は閣議で、「欧州委員会のワクチン戦略はガラクタ」と述べたという。
ショルツ副首相は中道左派の社会民主党員であり、9月の選挙でメルケル首相のドイツキリスト教民主同盟(CDU)を打ち負かし、新首相に就任することを望んでいる。
しかし、社会民主党の支持率は伸び悩んでおり、ショルツ氏はCDUおよび欧州委員会のワクチン戦略を非難することで支持率を上げたいと考えている。
他の地域の指導者も欧州委員会の調達問題を非難し、一部メディアに指摘された「州のワクチン予約システムの機能不全問題」から注意をそらすことに力を注いている。
一方、あと半年で退任するメルケル首相も厳しい状況に置かれている。
メルケル首相のリーダーシップは市民を安心させてきた。しかし、ワクチンの展開遅れなどが影響し、市民の考えは変わりつつある。最新の世論調査によると、政府のコロナウイルスの対応に満足している人は50%以下にまで低下したという。
市民はメルケル首相がテレビ画面に映った時は、「事態が悪い方向に進んでいる」と理解している。先週、メルケル首相は2度、メディアのインタビューに応じた。