◎主要国は新たな変異ウイルス「オミクロン株」に深刻な懸念を表明し、一部の国はワクチン接種の義務化に舵を切った。
2021年10月9日/イタリア、首都ローマで開催された反ワクチン抗議集会(Getty Images/AFP通信)

2019年末に中国の武漢市で初めて確認されたコロナウイルスは形を変え、今も世界中で大暴れしている。

主要国は新たな変異ウイルス「オミクロン株」に深刻な懸念を表明し、一部の国はワクチン接種の義務化に舵を切った。

米国は連邦政府職員に接種を義務付けた。昨年、全国封鎖で感染をうまく抑え込んだニュージーランドも第三者と接触する機会の多い労働者に接種を義務付け、カナダの公務員も仕事を続けるためにはワクチンが必須になった。

ギリシャは60歳以上の居住者に接種を義務付ける予定である。そしてオーストリア政府は全国民にワクチン接種を義務付けると誓った。義務化法は2月1日に施行する予定。

オーストリアの義務化はEUの感染予防対策の中で最も強力だが、基礎疾患や宗教上の理由などによる免除を認めている。しかし、児童を除く国民の大多数は接種を強制され、拒否した者は罰金に直面する予定である。

まもなく退任するドイツのアンゲラ・メルケル首相もワクチンの義務化に向けた検討を支持した。次期首相のオラフ・ショルツ副首相は来年2月に道筋を示すと約束している。

コロナワクチンは感染に伴う重症化リスクを抑え、死亡者を減らした。ワクチン完全接種率の高い国の死亡率は劇的に減少している。

米国立アレルギー・感染症研究所のアンソニー・ファウチ博士やその他の著名な科学者たちは、「ワクチンは効き目があり、絶対に効き目があり、間違いなく効き目があり...」などと述べている。

しかし、ワクチンが嫌いな人、政府が嫌いな人、とにかく抵抗したい人、政権を奪取したい野党などは数千、場合によって数万人規模の抗議デモを展開し、ワクチン義務化だけでなくグリーンパスポートやマスクの着用などにも強く反対した。

反対派の少ない国はデモを抑えつつ準備を進めているが、反対派が人口の半数近くを占める国は対応に苦慮している。米共和党が主導する州はバイデン政権の規則を新たな州法で無効化した。フロリダ州の企業は労働者にマスク着用を命じると罰金を科される。

フロリダ州のロン・デサンティス州知事とドナルド・トランプ大統領(Getty Images/AFP通信)

オーストリアの保健機関が行った最新の調査によると、ワクチンを接種していない回答者の約15%が「政府を信用できず、接種を躊躇している」、9%が「なんとなく信用できない」と回答したという。

オミクロン株の感染拡大に見舞われている南アフリカ・ケープタウン大学のキャスリーン・パウエル教授は、「(ワクチン)拒否は人間に与えられた権利のひとつだが、ワクチンを拒否しコロナを拡散することは、他者の権利と健康を侵害することに外ならず、致命的な結果を招く」と述べた。「コロナの危険性を理解することが重要です...」

各国のワクチン接種率には大きな隔たりがあるが、主要先進国の完全接種率はおおむね60%を超えている。ただし、ファイザー、モデルナ、J&Jワクチンを世界に展開している米国の接種率は60%に届いていない。

EUを統括する欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は先日、加盟27カ国にワクチン接種の義務化を検討する時が来たと述べた。EUの接種率の開きは大きく、1位のポルトガルは88%、最下位のブルガリアは約26%である。

一方、アフリカ大陸の完全接種率は8%未満、our world in dataがまとめている世界の接種率によると、アフリカ大陸を含む貧しい国々で少なくとも1回接種した人は12月4日時点で約6.2%にとどまっている。

our world in dataをまとめている英オックスフォード大学のアルベルト・ジュビリーニ上級研究員は、「ワクチン義務化を導入できるであれば、厳しい渡航制限や全国封鎖を課す必要はなくなる」と述べた。

政府は全国封鎖、マスク着用、社会的距離のルール、飲食店の営業時間制限など、様々な義務化政策を国民に課している。ジュビリーニ上級研究員を含む多くの専門家が、「ワクチン義務化は全国封鎖と渡航制限の終わりを意味する可能性がある」と指摘した。

しかし、一部の専門家は感染拡大中の強制は怒りを煽り、さらなる感染拡大と混乱を引き起こす可能性があると警告した。

世界保健機関(WHO)の専門家委員会に助言する疫学者のディッキー・ブディマン博士は、「接種の義務化は陰謀論を主張する人々の意見を強化し、暴動を煽り、混乱を引き起こすだろう」と述べた。「米国を見てください...」

別の専門家はワクチン義務化が野党勢力の勢いを加速させ、分断と政権交代を加速させると指摘した。極右政党はおおむね義務化に反対している。

一方、感染の抑え込みに成功した国の多くは、義務化の有無にかかわず感染予防対策を徹底している。中国共産党は国民にワクチンを積極的に接種するよう圧力をかけているが、厳しい検疫とその他のルールで感染の抑え込みに成功した。

ワクチンが政治化されていない日本の接種率は、スタートでこけたにもかかわらずG7トップに立つ勢いである。

接種率世界2位のシンガポールは先月、デルタ株の波に直面したが、対策を徹底することで感染の勢いは収束しつつある。

2021年11月13日/オランダ、ハーグで開催された反ワクチン抗議デモ(Getty Images/AFP通信/PAメディア)
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