◎市内で陽性診断を受けた症状のある患者は病院、無症状者は隔離施設に入る必要があり、自宅待機は認められていない。
香港政府はこの2年間、コロナウイルスをほぼ抑え込むことに成功し、数カ月間陽性者を報告しないこともあった。
しかし、感染力の強いオミクロン株は香港政府の防御を突き破り、世界で最も人口密度の高い街で急速に広がり、医療機関と隔離施設に圧力をかけている。
政府は来月、市内の全住民750万人を3回検査し、陽性者をひとり残らず医療機関または隔離施設に収容する予定である。
市内で陽性診断を受けた症状のある患者は病院、無症状者は隔離施設に入る必要があり、自宅待機は認められていない。隔離期間は今のところ最低14日間。
保健当局によると、市内の80歳以上のワクチン接種率は約30%、70歳代は約60%と低く、その他の年代から大きく後れを取っている。政府は昨年初めに中国産ワクチンの接種を開始したが、中国本土のようにワクチン接種率は伸びなかった。
この3日間で亡くなった約150人の大半がワクチンを接種していない高齢者と報告されている。
保健当局は先週、「この2年でコロナ感染がほとんど確認されなかった結果、高齢者はワクチンを接種しなくても大丈夫と思い込んでしまった」と述べた。
香港大学の公衆衛生専門家であるグレパン博士はソーシャルメディアに、「一部の高齢者は中国産ワクチンの副反応を恐れ、接種を避けている」と投稿した。「一部の高齢者は感染より副反応のリスクの方が大きいと信じています...」
香港で展開されている中国のシノバックワクチンは世界保健機関(WHO)の緊急使用承認を得ている。ただし、香港の研究者チームは昨年末、シノバックはオミクロン株に有効な中和抗体を十分作れないという初期の研究結果を発表している。
グレバン博士は、「香港は世界のモルモットになった」と懸念を表明した。
香港の感染拡大は中国本土の制限がいつまで続くかをテストする機会になると考えられている。本土は入国者に2~3週間の強制隔離を義務付けており、香港も例外ではない。
また今回の感染拡大で陽性者をひとり残らず隔離する「ゼロコロナ政策」を維持することの難しさも露呈した。中国本土は都市封鎖と強制検査・隔離を実施できる資源を持っているが、香港の医療資源は限られている。
本土から派遣された建設チームは2万人以上の患者を収容できる常設の隔離治療センター2つと仮設の隔離治療センター4つの建設を急いでいる。
香港政府はワクチンパスシステム24日に導入し、市民にシノバックワクチンを接種するよう強く促している。
市内のワクチン接種会場の列に並んでいた女性はAP通信の取材に対し、「ワクチンを接種しなければどこにも行けない」と語った。「中国ワクチンはイヤですが、接種しなければ何もできません...」
一部の科学者は、「香港はデルタ株やその他の変異株の感染拡大を経験しておらず、免疫を持っている人が少ないため、他国より深刻な状況に陥っている可能性がある」と指摘している。
他の変異株に感染することで得られる免疫がオミクロン株の症状を和らげるという証拠は示されていないが、一度ウイルスに感染し回復すれば、体内の免疫が同じウイルスに感染するリスクをある程度下げてくれるまたは症状を和らげてくれる可能性は高い。
英サウサンプトン大学のグローバルヘルス専門家であるミハエル・ヘッド博士はSNSに、「香港はワクチン未接種の高齢者が多く、以前の感染拡大を経験していないことから、今後数週間は重症患者が増え続けるかもしれない」と投稿した。
オミクロン株の重症化リスクは他の変異株より低いと考えられているが、風邪やインフルエンザなどの呼吸器感染症よりは重症化しやすく、回復後も後遺症に悩まされる人が多数報告されている。
26日に市内のワクチン接種会場で1回目を接種した男性は、「ワクチンは必要ないと思っていた」と語った。「ここまで急速に感染が拡大するとは思っていませんでした...」