◎WHOのテドロス・アダノム事務局長「厳しい決定を下す必要があります。どうかイベントの中止または延期を決断してください」
2021年12月19日/イギリス、ロンドン・ヒースロー空港(Getty Images/AFP通信)

12月20日、世界保健機関(WHO)はコロナ変異ウイルス「オミクロン株」が急速に拡大していることに懸念を表明し、医療システムを保護するために年末年始のイベントを見直すよう警告した。

テドロス・アダノム事務局長は声明の中で、「あなたの命はイベントより大切です」と語った。「厳しい決定を下す必要があります。どうかイベントの中止または延期を決断してください」

またテドロス事務局長は「オミクロン株がデルタ株以上の勢いで拡大しているという証拠がある」と述べ、欧米の感染拡大に懸念を表明した。

オランダ、ドイツ、フランスを含む多くのEU加盟国がクリスマス前に制限を強化した。オランダの全国封鎖は1月14日まで続く予定である。オミクロン株のパンデミックに直面しているイギリスはWithコロナ政策を維持すると誓ったが、マスク義務化とワクチンパスポートシステムを導入した。

ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は20日、ジョー・バイデン大統領は全国封鎖を計画していないと述べたが、国の首席医療顧問であるアンソニー・ファウチ博士は、「クリスマス旅行はオミクロン株の背中を押すだろう」と警告した。

米疾病予防管理センター(CDC)によると、オミクロン株は現在、全米の症例の約3%を占め、その割合は今後さらに増加する可能性が極めて高いという。テキサス州のヒューストン・メソジスト病院は、新規陽性のオミクロン株の割合が80%を超えたと報告した。ミズーリ州の保健当局は、州のサンプルの99%がオミクロン株だったと報告している。

一方、イギリスのボリス・ジョンソン首相は20日の会見で「新しい制限を導入する”可能性”を検討する」と述べたが、詳細は明らかにしなかった。

テドロス事務局長は、「世界はパンデミックにウンザリしている」と述べ、イベントや集会の中止または延期で感染拡大を抑えることが重要と強調した。「私たちは家族や友人と穏やかなクリスマスを過ごしたい、日常を取り戻したいと思っています。それを実現する最善の道がイベントの中止または延期です。中止せず後悔するより、感染が収まった後に祝うほうがよいでしょう」

またテドロス事務局長は、2022年の半ばまでに全世界のワクチン完全接種率を70%まで引き上げることができれば、パンデミックは来年中に終息する可能性があると述べた。

さらに、コロナウイルスの震源地と考えられている中国は、関連するデータを提供しなければならないと指摘した。「私たちは起源を解明しなければなりません。コロナの起源を知ることができれば、その教訓を次に活かすことができるでしょう」

一方、WHOの主任科学者であるソミヤ・スワミナサン博士は20日、オミクロン株の重症化リスクはデルタ株に比べると低い可能性があるという初期データの証拠を鵜呑みにするべきではないと警告した。

スワミナサン博士は「重症化リスクが仮に低かったとしても、陽性者が爆発的に増加すれば医療システムは危機に直面する」と述べた。

2021年12月18日/イギリス、ロンドンの中心部、政府のコロナ制限に反対する抗議デモ(Getty Images/AFP通信/EPA通信)

北米では穏やかな年末年始を諦める地域が増えている。

ニューヨークのビル・デブラシオ市長はブロードウェイの閉鎖を擁護し、タイムズ・スクエアの恒例イベントである大晦日カウントダウンの中止もしくは規模の縮小を示唆した。

マサチューセッツ州ボストンのアジア系女性市長であるミシェル・ウー氏(民主党)はレストラン、バー、その他の屋内施設利用時のワクチンパス提示を義務化し、共和党支持者の激しいバッシングに直面した。

共和党支持者は「ウーは恥を知れ!」「恥辱!」などと叫んだが、ウー市長は命と家族と医療機関を守るために行動する必要があると市民に呼びかけ、理解を求めた。

カナダのケベック州の飲食業界は時短営業を命じられ、スポーツイベントは無観客開催になり、学校は一足早く冬休みに突入し、企業はテレワーク率を引き上げるよう州政府に命じられた。

スイスのダボスで開催される予定だった世界経済フォーラムも延期が決まった。

しかし、オミクロン株の新たな震源地になったイギリスのジョンソン首相は、「今のところ、新たな制限を発効する予定はない」と述べ、保守党員に配慮した。

BBCニュースなどによると、ロンドンのヒースロー空港ではサンタの衣装を着た旅行者が複数確認されたという。あるサンタはタブロイド紙の取材に対し、「クリスマスがやってくる」と語った。

バイデン大統領は21日にオミクロン株の感染拡大に関する演説を行う予定である。バイデン大統領は7月4日の独立記念日にコロナからの独立を宣言したが、半年も経たないうちに事態は急変した。

ファウチ博士は19日に放送されたNBCのインタビューの中で、「バイデン大統領は厳しい警告を出す」と述べたが、詳細は明らかにしなかった。

フランスのエマニュエル・マクロン大統領は来年4月の大統領選挙を考慮し、全国封鎖を回避するための取り組みを加速させている。パリ市長は大晦日の花火大会やイベントを禁止した。

アイルランド政府は夜間外出禁止令を発効し、午後8時以降の外出を禁じた。ギリシャは年末年始の休暇期間中に警察官10,000人を動員してワクチンパスポートチェックを行う予定である。

一方、スペイン政府はマスク義務化だけで年末年始を乗り切る予定。ワクチン接種率世界4位のポルトガルはテレワークを推奨しているが、年末年始の休暇に影響を与える制限は出していない。

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