◎コロナを制圧したと主張する湖北省武漢市は、1年前の戦いと医療従事者の奮闘を記録したドキュメンタリー映画を公開し、化学防護服を着た当局者の模型を飾り、習近平 国家主席の映像を巨大スクリーンで連日流し続けている。
◎ある市場の女性は「コロナは他の国から来た。中国は犠牲者、感染源に仕立て上げられた。今の武漢を見れば、ここが震源地でないことは明らかだ」と述べた。
2021年 ロイター通信/中国、湖北省武漢市

コロナウイルスの震源地と考えられている中国湖北省武漢市は、コロナウイルスとの戦いを制したと宣言し、他国の感染状況を嘲笑したうえで、「中国は被害者」と主張した。

サイエンスマガジンの記事によると、2019年12月に武漢市で最初に確認された症例の前に、コロナウイルスが中国国外に存在したことを示唆する多くの証拠が見つかっているという。

コロナウイルスを専門に研究する施設の石正麗 教授は記事の中で、「輸入食品パッケージの表面からコロナウイルスが見つかったことを考えると、汚染された食品との接触が武漢の感染拡大の原因になった可能性がある」と書いている。

武漢市の医療機関に大打撃を与え、世界初のコロナによる都市封鎖を引き起こし、地球全体に広がったこのウイルスが輸入食品パッケージから伝わったと考える学者は少ない。

しかし、都市封鎖とコロナを克服した約1,100万人の武漢市民は、それが輸入品もしくは何かしらの方法で海外から持ち込まれたと信じている。

市場の女性はBBCニュースの取材に対し、「コロナは他の国から来た。中国は犠牲者、感染源に仕立て上げられた。今の武漢を見れば、ここが震源地でないことは明らかだ」と述べた。

また別の男性は、「中国は感染者を9万人も出してしまった。これは恥ずべきことだ。他国はもっと感染者を低く抑えていると聞く。感染予防のコツをぜひ教えてほしい」と他国の感染状況を嘲笑した。

2021年 BBCニュース/中国、湖北省武漢市の市場

2020年1月23日、共産党指導部は武漢市を完全封鎖し、市民に外出禁止を命じた。

しかし、毎年恒例の春節連休と完全封鎖のタイミングが一致し、武漢市の市民約500万人は封鎖前にすでに街を去っていたため、コロナは世界中に拡散された。

医師の警告は無視され、インターネットには怒りが溢れ、世界は共産党指導部が最初の感染を隠蔽したと厳しく非難した。

2021年1月、武漢市に当時の怒りと混乱はなく、街は買い物を楽しむ市民で賑わっている。

ある市民は、「コロナウイルスは消え去り、市場、レストラン、喫茶店、ショッピングモールはかつての賑わいを取り戻した」と笑顔で答えた。

コロナを制圧したと主張する武漢市は、1年前の戦いと医療従事者の奮闘を記録したドキュメンタリー映画を公開し、化学防護服を着た当局者の模型を飾り、習近平 国家主席の映像を巨大スクリーンで連日流し続けている。

2021年 BBCニュース/中国、湖北省武漢市、展覧会場

中国の一斉検査プログラム、アプリを活用した濃厚接触者の特定と追跡、共産党指導部による徹底した感染予防対策の成功に疑いの余地はない。

しかし、個人の権利を一切考えずに厳格な封鎖を実行し、マスク着用を強制し、違反者を粛正するスタイルを真似できる民主主義国家はほとんどない。

展示会の主催者は、「コロナとの戦いにおける成功で、世界は中国共産党の強力なリーダーシップと我が国の社会主義システムが最も優れていることを知った」と宣言している。

一方、共産党指導部は世界保健機関(WHO)の調査をサポートすると誓約しつつも、震源地は国外だという態度を取っている。

国営メディアも、「コロナは輸入冷凍食品で武漢市に入った」「起源は欧米のどこか」などの調査報告を応援している。

中国外務省の華春瑩 報道官は記者から「根拠もなく海外から持ち込まれたと主張してよいのか?」と質問されると、「あなたは中国に偏見を持っている差別主義者である」と応戦した。

華春瑩 報道官:
「2019年の秋の時点で、オーストラリア、イタリア、その他多くの国などでもコロナウイルスが発見されていた、という報告が出ている」

「世界はそれらの報告を無視し、中国だけを調査しようとする。これはとても不公平なことだ」

ある武漢市の男性は地元メディアの取材に対し、「世界は中国が感染対策に成功したことを妬んでいる。成功した者を妬むことはすごく恥ずかしいことだ。私たちも代償を払った。同胞が亡くなったことに皆ショックを受けている」と述べた。

保健当局によると、中国の累計感染者数は約9万人、死亡者は約4,500人。新規報告者は1月に入ってから上昇傾向にあり、1日100~150件で推移しているという。

共産党指導部は、今年クラスターの発生した湖北省、吉林省、黒竜江省を封鎖し、約2,900万人が影響を受けている。

保健当局は1月末から始まる旅行シーズンと2月の春節連休がさらなる感染拡大につながると懸念しており、市民に旅行や外出を控えるよう促している。

【世界の感染状況/2021年1月23日時点】

累計感染者累計死亡者新規感染者
(直近)
世界9,860万人211万人
アメリカ2,490万人41.4万人191,912人
インド1,071万人15.3万人14,256人
ブラジル875万人21.5万人56,552人
ロシア364万人67,376人21,182人
イギリス358万人95,981人40,261人
日本35.7万人4,980人4,717人
中国約9万人約4,500人約100人
2021年 ロイター通信/中国、湖北省武漢市、展覧会場
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