◎イギリスが世界初のファイザーワクチン接種を始めてから約2か月。脆弱なアフリカ大陸の市民はワクチンの到着を心待ちにしているが、接種を始めた国はまだない。
◎世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム事務局長は声明で、「世界の道徳は危機に瀕しており、最貧国がその代償を支払う羽目になるだろう」と警告した。
アフリカ連合(AU)によると、アフリカ大陸の市民は世界保健機関(WHO)が承認したコロナワクチンを受け取るまでに少なくとも数週間から数カ月待たなければならないという。
AUは、ファイザー(米)、アストラゼネカ(英)、セラム・インスティテュート・オブ・インディア(印)、ジョンソン&ジョンソン(米)、COVAXイニシアチブ、WHO、Gavi Vaccine Allianceイニシアチブとワクチン購入契約を結び、約8億7,000万回分の権利を獲得している。
しかし、主要経済国の買い占め、資金不足、様々な規制、ワクチンの厳しい温度管理条件などの影響で、アフリカ大陸のワクチン展開プロセスは大きく遅れている。
先日、WHOのテドロス・アダノム事務局長は声明で、「世界の道徳は危機に瀕しており、最貧国がその代償を支払うことになるだろう」と警告した。
テドロス・アダノム事務局長:
「49の高所得国のワクチン接種回数は4,000万回近くに達した。それに対し最貧国の接種回数は25回にとどまっている。2,500万でも25,000でもなく、25回だ」
イギリスが世界初のファイザーワクチン接種を始めてから約2か月。脆弱なアフリカ大陸の市民はワクチンの到着を心待ちにしているが、接種を始めた国はまだない。
ワクチンの展開状況を調査している団体は、「豊かな国(世界の人口の約14%)が、最も有望なワクチンの約53%を購入した」と報告した。
団体によると、「米モデルナが2021年に生産を予定している全ワクチン」および、「米ファイザーが2021年に生産を予定しているワクチンの96%」は、豊かな国にのみ供給されることが決まっているという。
また、調査の結果、カナダ政府は「総人口の約5倍のワクチンを確保」し、その多くが契約の都合上、最貧国より先に供給される予定と判明した。
1990年代、アフリカ大陸で猛威を振るったHIVの緊急治療薬がアフリカの市民の手に届いたのは、西側で販売が開始されてから約6年後だった。
テドロス事務局長は、「公平なアクセスを求めているにもかかわらず、一部の国と企業は直接取引を優先し続け、入札価格を引き上げることで、他国を追い抜こうとしている」と語った。
WHOの関連組織のひとつ、COVAXイニシアチブは、ワクチンを世界中に公平に配布しようとしている。
WHOアフリカ事務所の予防接種およびワクチン開発責任者を務めるリチャード・ミヒゴ博士は、「主要なワクチンのほとんどが、安全性と有効性のデータを公開する前に裕福な国に買い占められていた」と述べた。
ミヒゴ博士は記者から、「なぜ同じように買い占めないのか?」と質問され、「当時、手元に資金がなかった」と答えた。
AUの議長、南アフリカのシリル・ラマポーザ大統領は、ワクチン購入資金を確保するよう加盟国に要請したと伝えられている。これにより、AUは国債などで賄われた約70億ドル(7,200億円)を確保し、ワクチン2億7,000万回分を購入する。
現在、AUの一部の国はワクチンの超低温輸送に向けた施設の整備を進めているが、最貧国の準備はほとんど進んでいない。(ファイザーワクチンの輸送温度はマイナス70℃以下)
AUの当局者は、「アメリカなどの先進国と違い、アフリカの最貧国には冷蔵庫も保管容器も道路もない。それらを一から構築するにはかなりの予算が必要であり、加盟国の資金だけでは足りないかもしれない」と述べた。
なお、仮に予算を確保したうえで輸送の準備を整えたとしても、COVAXイニシアチブはWHOが承認したワクチン以外は購入できない。
WHOはファイザーワクチンの緊急使用は許可したが、モデルナとアストラゼネカはまだ審査中である。