パンデミックは続く

ブラジルのパンデミックは一向に収まる兆しを見せず、感染者数と死者数増加に歯止めがかからなくなった。

ジョンズ・ホプキンズ大学のまとめによると、8月9日時点のブラジルの累計感染者数は304万人以上、死者数は100,000人を超えた

コロナウイルスは約3カ月でブラジル国民を50,000人殺し、その数は50日で2倍になった。

ブラジルのパンデミックがいつピークに達するかは、誰にも分からない。しかし、政府の方針に従い、ショップやバー、レストランなどは既に営業を再開している。

ジェイル・ボルソナロ大統領はCOVID-19ウイルスを軽視し、「経済活動以上に優先すべき事項はない」「感染予防対策を優先させれば、経済が低迷する」と主張し続けてきた。

自分自身が率先してウイルスに感染、復活を果たした最右翼指導者は、州知事の発出した感染予防対策を打ち負かし、マスク着用を拒否。「コロナウイルスに勝ちたければ社会的距離よりウォッカだ」と言わんばかりの勢いで支持者の群衆に加わった。

同国の専門家たちは、ボルソナロ政権のノープラン政策に対する不満を訴えてきた。しかし、最後の砦と考えられてきた地方自治体までもが、ウイルスの蔓延を後押しする経済活動再開に焦点を合わせている。

現在の厚生大臣は、公衆衛生対策経験ゼロの陸軍大将が務めている。なお、前任者と前々任者は、ボルソナロ大統領がコロナウイルス対策としてイチ押しする「ヒドロキシクロロキン(抗マラリア薬)」の使用に反対、辞任した。

ボルソナロ大統領はコロナウイルスを「軽いインフルエンザ」と軽視。国内で初めて感染者が確認された日から今日まで、効果的な感染予防対策をことごとく却下し続けた

先日、自分自身がウイルスに感染、復活した際には、「ヒドロキシクロロキンのおかげで体調はすこぶる良好」と述べている。

ブラジル感染症協会で活動するホセ・ダビ・ウルバエス博士はロイター通信に対し、「死者数100,000人突破は、第二次世界大戦の悲劇に匹敵する。我々は絶望の中いる、と理解すべきだ。しかし、ブラジル国民はボルソナロ大統領に麻酔を打ち込まれ、感覚がマヒしてしまった」と語った。

同国内のホットスポットは南部と西部の州に移り、最も人口の多いサンパウロの感染状況は改善しつつある。

パンデミックに苦しめられたアマゾナス州アマゾンを含む北部の各州と、今週初めに大混雑したバーとビーチの写真が出回り国民の怒りを買ったリオデジャネイロの感染状況も少しずつ改善しているようだ。

8月8日、同国内で活動する非営利団体は、リオデジャネイロのコパカバーナビーチに複数の十字架を配置、亡くなった方たちに哀悼の意を表したうえで、1,000個の赤い風船を空に放った。

コロナウイルスで子供を亡くしたタクシー運転手のマルシオ・ドナシメント・シルバ氏はAP通信に対し、「政府と国民の間には大きな溝がある。大統領と私たちが目指すゴールはあまりに違う。死は現実になり、私たちの目の前に迫っている」と述べた。

特に深刻な被害を受けた貧困地域および先住民の多く住む地域では、公式発表以上にウイルスが蔓延している可能性も指摘されている。先住民連合Apibによると、これまでに少なくとも22,300人の先住民がウイルスに感染し、633人が死亡したという。

上院議長のデイヴ・アルコロンブレ氏は、死者が100,000人を突破したことに対し、4日間の追悼期間を設けると発表。ボルソナロ大統領はまだコメントを出していない。

アルコロンブレ議長は国民に向けて、「全ての死に哀悼の意を表し、お悔やみ申し上げる。私たちはこの国で人生を歩み続けねばならない」と述べた。

ブラジルの死者数が10万人を突破

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リーダーシップ

ブラジルの死者数が100,000人を突破した日。サンパウロは歓声と花火に包まれ、人々は沸いた

これは、コロナウイルスの各種記録を更新したお祝いではなく、サンパウロに本拠地を置くサッカーチーム、SEパルメイラスが、緊迫したペナルティ戦をを制しチャンピオンリングを獲得したためである。

サッカー大国ブラジルらしい催しだが、SEパルメイラスに興味のない方、そしてウイルスで家族や友人を失った方たちは、狂気の花火と思ったはずだ。

8月9日の新聞社説欄は、ボルソナロ大統領の批判で埋め尽くされていた。

大統領の無関心と国民に寄り添おうとしない共感能力の欠如は、アメリカのトランプ大統領をはるかに上回る。圧倒的なリーダーシップの欠如により、ブラジルはボロ雑巾にされてしまった。

全世界のコロナウイルス累計感染者は、まもなく2,000万人を突破する。その約半数をアメリカ(500万人超)とブラジル(300万人超)が占めており、アメリカ大陸は地球最大の震源地になった。

なお、他のラテンアメリカ地域で感染が深刻な国は、メキシコ、ペルー、コロンビア、チリである。

一方、圧倒的な力とチームワークでコロナウイルスを殲滅したニュージーランドでは、100日間連続で新規感染者が報告されていない

同国内で最後に感染者が確認された日は、ロックダウンの緩和を開始した5月1日である。

現在、ニュージーランド国内で入院している患者は計23人。全て当局の管理下に置かれている。

同国の感染予防対策と国民の意識は、世界で最も優れていると言っても過言ではない。

感染拡大の兆候が確認された時点で、政府は効果的かつ効率的に行動を開始した。結果、3月に発出された厳格なロックダウンはほとんど解除されたのである。

感染初期段階でのロックダウン、国境および州境の封鎖、効果的な国民へのメッセージ、積極的なPCR検査の導入と追跡プログラムにより、同国内のCOVID-19ウイルスは死地に追いやられた。

アシュリー・ブルームフィールド保険局長は記者団に対し、「100日間連続で新規感染者ゼロを達成できたことは素晴らしい。しかし、世界の情勢を見れば、気を緩めることなどできない。警戒を怠らず、ひとりひとりが必要な時に感染予防対策をとり、第二波の発生に備えなければならない」と語った。

ジャシンダ・アーダーン首相は保険局長と同じく、世界の状況を注視し、第二波の発生に備えることが重要だと述べた。また、「リスクを軽減することはできない。新規感染者が出ていないことは素晴らしいが、来たるべき時のために政府と国民が一丸となって準備を進めなければならない」と付け加えた。

アメリカ、ブラジル、インドが第一波の阻止に失敗する一方、ニュージーランド、オーストラリア、ベトナム、台湾、日本などはそれを抑え込むことに成功した。

しかし、ロックダウンや緊急事態宣言を解除した結果、多くの国々で第二波が発生し、感染者と死者数の増加局面を迎えている。

ベトナムでは7月に感染者が確認されるまで、99日連続で新規感染者ゼロを維持した。しかし、7月末にダナンでクラスターが発生、政府は対応に追われている。

オーストラリアや日本も同様である。規制の効果で第一波は抑え込んだが、現在両国とも第二波に苦しめられている。

【世界の感染状況/8月8日】

累計感染者累計死者新規感染者
世界1,970万人72.9万人285,208人
アメリカ501万人16.2万人55,692人
ブラジル304万人10.1万人49,970人
インド215万人43,379人61,537人
メキシコ47.6万人52,006人6,495人
ペルー47.1万人20,844人7,137人
コロンビア38.7万人12,842人9,674人
チリ37.3万人10,077人2,198人
NZ1,569人220人
(100日連続)
ベトナム8411126人
AUS21,084人295人426人
日本48,774人1,047人1,624人

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