世界保健機関の予想
世界保健機関(WHO)は、効果的なワクチンが広く使用される前に、世界のコロナウイルスの総死者数は200万人に達すると警告した。
WHOコロナウイルス緊急対策チームの責任者を務めるマイク・ライアン博士は、「国際的な協調行動がなければ、この数値はさらに高くなる」と語った。
昨年末に中国でコロナウイルスが誕生して以来、世界の死者数は約100万人に達した。
感染は現在も拡大し続けており、累計感染者数は3,200万人を超えている。
また、北半球の多くの国で第二波の始まりとみられる新たな感染増加が始まっている。
パンデミックの到来から約半年、これまでのところアメリカ、インド、ブラジルで最も多くの症例が確認されており、3国の合計感染者は1,500万人を超えた。
さらに、ここ数日の間にヨーロッパ全土で第二波の勢いが増し、3月に課されたロックダウンと同レベルの国家封鎖が始まる、と懸念されている。
ライアン博士は、ヨーロッパの症例数が著しく増加していることについて、「現在は特定のエリアに限定されているが、放置すれば拡大することは間違いないだろう」と語った。
ライアン博士は記者団に対し以下のように述べた。
マイク・ライアン博士:
「ロックダウンを回避するためには、PCR検査の拡充、追跡調査、検疫、感染予防対策などを徹底しなければならない。欧州各国の人々には、それらの対策が徹底されているかを自問してほしい」
「ロックダウンは最後の手段と考えるべき。そして、9月にリゾート地域を早めに閉鎖したことは、とても冷静な判断だと思う」
記者から「死者200万人の可能性」について質問されたライアン博士は、「十分にあり得る」と述べたうえで、「治療法が確立され始めており、死亡率は明らかに低下している」と付け加えた。
しかしライアン博士は、素晴らしいワクチンが開発されたとしても、”世界全体”の死者数を抑えることは難しいかもしれないと注意を促し、各国政府にありとあらゆる準備を進めるよう警告した。
マイク・ライアン博士:
「200万人を回避するためには”準備”が必要である。そして、それは1か国だけでなく、世界が同時に行わねばならない」
「素晴らしいワクチンは恐らく開発されるだろう。しかし、それを世界の隅々に行き渡らせるためには、とてつもない時間と予算が必要である。準備・感染予防の徹底・協調が徹底されない限り、200万人突破は十分にあり得ると警戒すべきだ」
世界の動向
世界中で第二波を抑制するための対策が進められており、より厳しい社会的距離のガイドラインと企業などへの制限が始まっている。
スペインでは首都マドリードが深刻な状況にあり、政府は部分的なロックダウンを発出した。結果、人口密集地域での制限が強化され、約100万人に影響を与えている。
同じく深刻な状況にあるフランスでは、南部の都市マルセイユのバーやレストランのスタッフが政府の制限措置に抗議した。
イギリスでもいくつかの地域で制限が強化され、ボリス・ジョンソン首相は国民に対し、「感染予防対策を徹底してほしい。屋外に出る時は、必ずマスクを着用すること」と強く呼びかけた。
一方、感染再拡大の兆候を見せるアメリカの各州では、制限措置の解除が始まっている。
ホワイトハウスコロナウイルス対策チームの最高顧問を務めるアンソニー・ファウチ博士は、「アメリカの第一波はいまだに収束する兆しを見せず、再拡大する恐れすらある」と警告した。
アンソニー・ファウチ博士:
「我々は第二波ではなく、まず現状を克服し、冬にやってくるインフルエンザの襲撃に備えなければならない」
【世界の感染状況/9月27日時点】
累計感染者 | 累計死者 | 新規感染者 (直近) | |
世界 | 3,260万人 | 99万人 | 233,014人 |
アメリカ | 708万人 | 20.4万人 | 48,567人 |
インド | 590万人 | 93,379人 | 85,362人 |
ブラジル | 459万人 | 14,1万人 | 31,911人 |
ロシア | 114万人 | 20,225人 | 7,523人 |
スペイン | 71.6万人 | 31,232人 | 11,289人 |
フランス | 52.7万人 | 31,700人 | 15,797人 |
イギリス | 42.9万人 | 41,971人 | 6,873人 |
日本 | 81,055人 | 1,540人 | 558人 |
スペインの第二波
9月25日、スペイン政府はマドリード当局に対し、市内全域で規制を強化するよう要請。実施しなければ深刻な事態を招くと警告した。
一方、マドリード当局は、一部地域に発出したロックダウンの延長を発表したが、市内全域の制限は拒否した。
9月26日、サルバドール・イラ保健相は、十分な規制が実行されていないと語った。
サルバドール・イラ保健相:
「パンデミックを抑え込むためには、決意を持って行動しなければならない。首都マドリードは今、その状態にある」
「このままでは、ロックダウンされていない地域外の住人に感染が拡大する。大切なことは市民の健康を守ることであり、市内全域を今すぐ閉鎖すべきだ」
スペインの中央政府は、地方政府の権限を越えて”特定の地域だけに”ロックダウンを課すことはできない。
首都マドリードは3月初めに始まったパンデミックの震源地になり、第二波でも同じ状況を迎えつつある。
スペインの25日の新規感染者数は12,000件を超え、累計感染者数は71万人を突破した。
マドリード地域は、スペインの全症例(感染者数と死者数)の約3分の1を占めており、ここ数週間で感染者数は再び急増。入院患者の増加に伴い、医療関係者への負担増を懸念する声が上がっている。
地元メディアによると、9月25日時点でマドリード地域のコロナウイルス発生率は全国一高く、過去14日間の10万人あたり新規症例数は742.6件に達したという。
状況が悪化する中、中央政府と地方当局の意見は分かれており、適切な対策(ロックダウン)をとるべきか否かに焦点が集まっている。
地方当局は市内全域のロックダウンを拒否し、代わりに計8区の移動制限錯措置を強化。約100万人に影響が出ている。
ロイター通信によると、マドリードの貧困街、計45の地域に制限が課されており、住人たちは「我々は見捨てられ、汚名を着せられ、そして収入を失った」と嘆いているという。
ロックダウンされていた一部地域の住人たちは、28日から仕事、学校、そして他のエリアへの移動を許可される。
ただし、集会等の開催は原則禁止、公園は閉鎖され、バーやレストランなどは22:00までに閉店しなければならない。
一方、中央政府はこれらの制限緩和に反対し、市内全域のロックダウンを主張している。
イラ保健相は地方当局に対し、「政治的配慮は忘れ、科学に基づいて行動しなければならない」と呼びかけた。
サルバドール・イラ保健相:
「マドリードは科学者や専門家の話に耳を傾け、政治配慮より市民の健康を最優先に考えてほしい。私はこの要求が通るまで、何度も繰り返し助言するつもりだ」