◎一部の欧州諸国は制限緩和に向けた話し合いを進めており、Withコロナは既定路線になりつつある。
中国共産党の極めて厳しい「ゼロコロナ政策」はウイルスの感染拡大を抑え込むという点では大きな成果を上げてきたが、出口戦略を難しくする可能性がある。
ほとんどの医療専門家は、「コロナは消滅せず、進化の過程で弱毒化し、インフルエンザと同じレベルのウイルスになる」と考えている。
展開中のワクチンはウイルスに対する免疫力を高め、ウイルスの進化する機会を減らし、さらに飲み薬で重症化を防ぐことができるようになれば、コロナはインフルエンザと同じレベルのウイルスとして扱われるようになるかもしれない。
オミクロン株の重症化リスクはデルタ株より低く見えるため、感染爆発に見舞われた米国やイギリスの一部の専門家は「希望の光が見えた」と指摘している。イギリスの新規陽性は減少傾向、死亡者も昨年のピークに比べるとはるかに少ない。
一部の欧州諸国は制限緩和に向けた話し合いを進めており、Withコロナは既定路線になりつつある。
一方、北京2022冬季五輪を主催する中国は、「コロナを受け入れる」という一部の国の戦略には今のところ興味を示していない。
陽性者と濃厚接触者をひとり残らず捕らえるという共産党の政策は医療機関と国民を保護してきた。しかし、妥協を知らない厳しい政策は中国人の大半がコロナに感染していないことを意味する。
また、仮に他国がコロナの受け入れに成功した場合、共産党は難しい決断を迫られることになるかもしれない。専門家によると、人口約14億人の中国が現在の制限を緩和した場合、インドやブラジルが経験したような陽性者と死者の急増に直面する可能性が高いという。
ただし、中国のワクチン接種率は高く、人口の約85%がすでに接種を終えているため、ワクチンがうまく機能すれば、死者はそこまで増えないかもしれない。
インド科学教育研究所の免疫学者であるヴィニータ・バル博士は、「中国人の大多数は厳格な制限の影響でコロナに接していないため、制限緩和に踏み切れば、恐らく陽性者と死者の急増に直面する」と指摘した。
またバル博士は、オミクロン株が流行している今制限を緩和することは極めて危険と警告した。
シカゴ大学で中国の政治を研究しているダリ・ヤン教授はゼロコロナ戦略の見直しについて、「その過程で数万人が死亡すれば、国民は共産党に不信感を抱くかもしれない」と述べた。
習近平 国家主席はゼロコロナ政策の効果を称賛し、「西側の政治システムでは決してなしえなかった」と大々的に宣伝している。
中国は2020年に成長した唯一の主要国であり、累計陽性と死者は世界累計の0.01%にも満たない。
共産党はゼロコロナ政策の一環として国民に専用アプリの取得を義務付け、食料品店、オフィス、首都圏などに入る際はワクチン接種済みか陰性であることを確実に証明しなければならない。
しかし、北京2022の開幕直前にオミクロン株の侵入を許した結果、1,000万人規模の都市が封鎖される事態に発展した。
また共産党は春節休暇期間中の大移動に懸念を表明し、移動を控えるよう国民に呼びかけた。しかし、国営の環球時報によると、期間中に鉄道を利用する人は約2億8,000万人に達し、国内線の運航本数は60万便、利用者は3,500万人と見積もられている。
共産党は今秋、習 国家主席の3期目を決める党大会を大々的に開催する予定であり、Withコロナ政策に移行する可能性は極めて低いと予想されている。
香港中文大学のウィリー・ラム教授はAP通信のインタビューの中で、「陽性者の急増は習近平のキャリアに傷をつけるため、共産党は少なくとも今秋まではゼロコロナを維持すると思う」と述べた。
環球時報によると、共産党は現在、mRMAワクチンの開発に力を注いでいるという。開発中の一部のワクチンは後期試験に入ったと伝えられている。
一部の専門家は、「中国はコロナの重症化リスクがさらに低下するまで封鎖を維持する」と指摘している。しかし、コロナの進化がオミクロン株で終わるかどうか、さらに弱まるかどうかは誰にも分からない。
オミクロン株を最初に確認した南アフリカの陽性者はピークアウトした。ワクチン展開の進んでいない他のアフリカ諸国の感染状況も落ち着きつつある。中国はどうする?