◎対象は2億ARGペソ(約2.4億円)以上の資産を保有している個人および企業。
1月29日、アルゼンチン政府は、2020年12月4日に上院を通過(賛成42票ー反対26票)した「億万長者税」を施行した。
この法律は、大多数の市民や中小企業向けのコロナウイルス救済コストを賄うと同時に、貧富の差を解消すると期待されている。
対象は2億ARGペソ(約2.4億円)以上の資産を保有している個人および企業。
対象者(企業)は、国内で申告した資産の最大3.5%および、海外保有資産の最大5.25%の税金を納付しなければならない。なお、支払いは1回限り。
現地メディアの報道によると、対象者は約12,000人にのぼるという。
政府はこの税金を奨学金や社会扶助の資金にも充てたいと考えており、3,000億ARGペソ(約3,600億円)調達することを望んでいる。
中道左派のアルベルト・フェルナンデス大統領が提案した億万長者税は、一部の反対派から「没収」「搾取」と厳しく非難された。
これに対しアルゼンチン農村協会は声明で、「億万長者税は恒久化すべきであり、市民の大多数もそれを望んでいる」と述べた。
アルゼンチンの経済はコロナウイルスの影響で危機的状況にあり、元々高かった貧困率はさらに悪化した。報告によると、市民の約40%が貧困ライン以下の生活を送り、失業率は11%まで悪化したという。
経済的不平等を調査する英オックスファムは年次報告書の中で、「アルゼンチン政府はコロナ危機から回復する鍵を世界に示した。富裕層への累進課税はコロナだけでなく不平等も解消する」と述べた。
英オックスファム(報告書):
「コロナウイルスの大流行中に企業が稼いだ超過利益に対する税金は、1,040億ドル(約11兆円)を生み出す可能性があります。これは、すべての労働者に失業保護を提供し、最貧国のすべての子供と高齢者に財政的支援を提供するのに十分な額です」
「世界で最も裕福な10人の男性がパンデミック以来、約5兆ドル(550兆円)稼ぎました。これはすべての人にコロナワクチンを提供できる額です」
億万長者税に対する意見は様々である。ソーシャルメディアでは賛成意見が目立った。
<賛成意見>
・アルゼンチンと同じ法律を導入する国が増えるだろう。
・1回限りではなく、恒久にすべき。
・海外の資産も逃さない点を評価したい。
<反対意見>
・社会主義大統領の搾取。
・アルゼンチンから撤退する企業が増える。
・海外投資家に嫌われる。
・億万長者に対する差別。
ジョンズ・ホプキンズ大学のまとめによると、アルゼンチンの累計感染者数は1月29日時点で191万件、累計死亡者は47,601人。1月28日の新規陽性者数は9,471件、死亡者は166人だった。