米国の次世代ミサイル防衛システム「ゴールデンドーム」、知っておくべきこと
「ゴールデンドーム」は米国史上最大級のミサイル防衛プロジェクトとして位置づけられ、宇宙空間を活用した多層的防衛網を構想している。
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現状(2025年12月時点)
2025年5月20日、トランプ米大統領は次世代ミサイル防衛システム「ゴールデンドーム(Golden Dome)」構想を正式に発表した。これは従来のミサイル防衛を大きく超える国家的プロジェクトとして位置づけられ、宇宙空間を含む多層防衛網によって米本土を守ることを目的としている。発表時、トランプ大統領は約1,750億ドルの事業費、3年以内の完成を目標とする意向を示したが、その実現性や詳細設計には依然として議論が残る。
連邦議会や国防当局、専門家の間では、2028年〜2029年までに初期運用能力を得る可能性があるとの見方の一方、費用上昇や技術的課題、国際的な安全保障への影響などが懸念されている。
ゴールデンドーム(Golden Dome)とは
「ゴールデンドーム」は、米国本土を対象とし、既存の地上ベースのミサイル防衛(Ground Based Midcourse Defense: GMD)を含む複数の防衛要素を統合した包括的ミサイル防衛システムである。システム名は、イスラエルの短距離ミサイル防衛「アイアン・ドーム(Iron Dome)」から影響を受けた命名である。
トランプ政権はこれを「史上最高の防衛システム」と位置づけ、弾道ミサイルだけでなく極超音速ミサイル、巡航ミサイル、宇宙からの攻撃も含めたあらゆる脅威に対応可能と主張している。
宇宙空間を活用して全米を覆う「貫通不可能な盾」
ゴールデンドームの特徴として、宇宙空間を活用し米本土を事実上覆う多層的防衛網を構築するという壮大なビジョンが掲げられている。具体的には:
宇宙配備型センサーによる全方位の検知・追跡
宇宙や高高度での迎撃手段の展開
地上・航空・海上ミサイル防衛システムとの統合
といった構成を想定している。こうした設計は冷戦期の「戦略防衛構想(SDI)」と類似する「宇宙ベース防衛」構想として評価されることもある。
ただし、現時点で「完全に貫通不可能」なシールドを構築する具体的な技術は存在しておらず、完全防御の実現可能性については専門家の間でも評価が分かれている(後節参照)。
システムの概要
ゴールデンドームは複数のコンポーネントを統合するシステム・オブ・システムズ(system of systems)として設計される。
主要な構成要素は次の通りである:
宇宙・高高度センサー
軌道上の衛星や高高度プラットフォームにより、弾道ミサイル・極超音速兵器・巡航ミサイル・その他飛翔体の早期検知・追跡を行う。迎撃システム
宇宙での迎撃能力も視野に入れた「ブーストフェイズ」迎撃、ミドル・ターミナルフェイズ迎撃を組み合わせる。指揮統制・通信ネットワーク
国防総省が既に運用するC2BMC(Command and Control, Battle Management and Communications)を基盤として、即応性を高めるネットワーク一体化を進める。既存システムとの統合
THAAD、パトリオットPAC-3、Aegis SM-6など既存防衛装備と新技術を統合することで多様な脅威に対応する。
これらを一体化することで、従来より広範囲・高速度の脅威に対応する設計を目指している。
多層的な防衛網
米国防総省系メディア「Defense News」の報道によると、ゴールデンドームは四層の防衛構造として計画されている:
ブーストフェイズ空間迎撃:ミサイルの打ち上げ直後に宇宙で迎撃
ミッドコース迎撃:大気圏外での中間迎撃
高高度終端迎撃:大気圏再突入前後の迎撃
低高度・点防御:地上近傍での最終防衛(PATRIOT等)
このような階層化・複層化は、単一の迎撃層に依存するよりも効果を高めるという理論的利点があるとされる。
迎撃対象
ゴールデンドームが想定する迎撃対象は次のように多岐にわたる:
弾道ミサイル(ICBMやSLBMなど)
極超音速滑空体(HGV)
巡航ミサイル
高度飛翔体・宇宙からの脅威
トランプ大統領は「宇宙から発射されたミサイルも迎撃可能」と述べ、既存防衛システムでは対応が困難な複雑な脅威への対処を強調している。
宇宙兵器の導入
ゴールデンドームが特筆される点は、宇宙空間での迎撃技術の導入を視野に入れていることである。ただし、公表されている範囲では具体的な宇宙兵器の詳細は限定的であり、現状では研究・開発段階の技術にとどまる可能性が高い。
米ミサイル防衛局は宇宙ミサイル迎撃機のアイデアを募っているとの報道もあり、宇宙兵器を含む多様なアプローチが検討されている。
計画の規模と予算
ゴールデンドーム計画の総予算は約1,750億ドルとトランプ政権から公式発表がなされている。
しかし、アメリカ議会予算局(CBO)など複数の専門機関は、この種のミサイル防衛の長期コスト(20年規模)については5000億ドル以上になる可能性を指摘しており、予算評価の不確実性も指摘される。
計画の規模は冷戦期の国家的大プロジェクトに匹敵するとまで評価する専門家もいる。
開発期間
公式には2025年発表の3年以内を目標に初期運用能力(IOC)を得るとされているが、国防総省内では2028年頃を初期段階としており、完全運用はさらに後ろ倒しになる可能性が高いとする見方もある。
司令塔
指揮・管理責任者として、米宇宙軍副司令官マイケル・ゲトレイン(Michael Guetlein)が指名されている。これは宇宙軍が本計画において中心的役割を担うことを示している。
日本との関わり
2025年末時点では、米国と日本の間でゴールデンドームについての公式な共同開発・参加の合意は公表されていない。ただし、日米は従来からミサイル防衛協力を進めており、日本側でも本システムの技術的含意や安全保障への影響に関する分析が進められている。
2025年末時点の課題
技術的・時間的制約
宇宙迎撃技術はまだ実戦配備された例がなく高い技術的障壁がある
ブーストフェイズ迎撃の実現には極めて高精度の追跡・制御技術が必要
これらにより、トランプ政権目標の3年以内の完成は現実的に困難との専門家評価もある。
不透明な詳細
公開情報が限定されているため、システムの設計仕様や迎撃性能に関する詳細は未確定であり、ペンタゴン内部の計画資料でも大部分が公表されていないという指摘がある。
貫通不可能なシールドを構築することは可能か?
専門家の間ではミサイル防衛システムが100%の完璧な防御を実現することは極めて困難との見方が一般的である。多層防衛は理論的に迎撃率を高めるが、完全無欠のシールド(“1発も通さない”)を築くのは現実的に難しいとの評価がある。これは歴史的な戦略防衛構想(SDI)時代の議論でも示されているとおり、オフェンス側とディフェンス側の技術競争が続く限り、絶対的な防御は理論上だけであるという主張である。
今後の展望
ゴールデンドームは2025〜2026年にかけて開発・試験が進む予定であり、まずは宇宙配備型センサーや迎撃システムのプロトタイプ試験が焦点となる。米国防総省は今後の技術評価や議会予算審議を通じて、計画全体の実行可能性を逐次見直す必要に直面する。
まとめ
「ゴールデンドーム」は米国史上最大級のミサイル防衛プロジェクトとして位置づけられ、宇宙空間を活用した多層的防衛網を構想している。発表された予算は約1,750億ドルであり、初期完成目標は2028〜2029年頃とされるが、技術的課題や費用・安全保障上の議論が存在する。完全無欠の防御システムという理念は軍事科学的には理論上の挑戦であり、今後の進捗が注目される。
参考・引用リスト
米国次世代ミサイル防衛「ゴールデンドーム」発表(テレビ朝日報道)
Trump rolls out 'Golden Dome' missile defense system plan(CNBC)
Golden Dome for America(Lockheed Martin)
Honeywell Aerospace Technologies – Golden Dome
米ゴールデンドーム構想の評価と課題(朝日新聞記事要旨)
Pentagon $175 Billion Golden Dome Missile Shield Four Layer Defense
ゴールデンドーム構想の全体像(笹川平和財団IINA)
新システム発表詳細(AFPBB News)
米ミサイル防衛システム責任者指名ニュース
以下では、先に提示した本文を補完する形で、①技術的側面(ミサイル迎撃理論・宇宙ベース迎撃技術)および②国際法・戦略安定性の観点から、ゴールデンドーム構想をより専門的・理論的に分析する。
技術的側面①:ミサイル迎撃理論
ミサイル迎撃の基本理論
ミサイル防衛(Missile Defense)は、攻撃側のミサイルを飛翔の各段階(フェーズ)で探知・追跡・識別し、迎撃体(インターセプター)を衝突させることで無力化する技術体系である。理論上、迎撃可能なフェーズは以下の三つに大別される。
ブーストフェーズ(Boost Phase)
ミサイルがロケットエンジンを燃焼させながら上昇している段階ミッドコースフェーズ(Midcourse Phase)
大気圏外を弾道飛行している段階ターミナルフェーズ(Terminal Phase)
弾頭が大気圏に再突入し、目標に接近する段階
ゴールデンドーム構想は、この三段階すべてを対象とする多層迎撃理論を前提としている。
ブーストフェーズ迎撃の理論的利点と困難
ブーストフェーズ迎撃は、理論上もっとも有利な迎撃方法とされる。理由は以下の通りである。
ミサイルの速度がまだ比較的遅い
弾頭とデコイ(欺瞞目標)が分離していない
赤外線放射が大きく、探知しやすい
一方で、技術的困難も極めて大きい。
迎撃可能時間は数分程度と非常に短い
発射地点近傍に迎撃手段を常時配置する必要がある
大陸間弾道ミサイル(ICBM)の場合、発射国の領空・近傍空域への即応能力が不可欠
そのため、地上配備型では現実性が低く、宇宙ベース迎撃が検討される背景となっている。
ミッドコース迎撃と「弾頭識別問題」
ミッドコース迎撃は、現在の米国本土防衛(GMD)でも採用されている方式であり、ゴールデンドームでも中核を成すと見られる。
最大の技術的課題は、実弾頭とデコイの識別(Discrimination)である。攻撃側は以下のような対抗手段を取ることが可能である。
軽量デコイの大量放出
赤外線特性を実弾頭に近づけた偽装
回転・姿勢制御による識別妨害
このため、防衛側は高性能センサー融合(赤外線・可視光・レーダー)とAIによるリアルタイム分析を必要とする。ゴールデンドームでは宇宙配備センサー群による「常時監視」が、この問題への解決策として位置づけられている。
極超音速兵器迎撃の理論的課題
極超音速滑空体(HGV)は、従来の弾道ミサイル迎撃理論を根本から揺さぶる存在である。
速度:マッハ5以上
飛翔経路:予測困難な機動軌道
飛翔高度:弾道ミサイルより低高度
このため、従来の「弾道計算に基づく迎撃理論」が成立しにくい。ゴールデンドームでは、
宇宙センサーによる連続追跡
高速迎撃体
迎撃判断の自動化
によって対応するとされるが、2025年末時点で実戦配備可能な確立技術は存在しない。
技術的側面②:宇宙ベース迎撃技術
宇宙配備センサーの役割
ゴールデンドームにおける宇宙利用の中核は、迎撃そのものよりも探知・追跡能力の飛躍的向上にある。
宇宙配備赤外線センサーは、
地球全域を死角なく監視可能
地平線制約を受けない
ミサイル発射直後を即座に検知可能
という利点を持つ。これは既存のSBIRS(宇宙配備赤外線システム)をさらに高度化・多層化する構想と整合する。
宇宙迎撃体(Space-Based Interceptors, SBI)
より議論を呼んでいるのが、宇宙空間に迎撃兵器を配備する構想である。これは冷戦期のSDI(戦略防衛構想)でも検討されたが、当時は実現しなかった。
想定される迎撃手段には以下が含まれる。
運動エネルギー迎撃体(Kinetic Kill Vehicle)
指向性エネルギー兵器(将来的にはレーザー)
理論的には、宇宙配備迎撃体はブーストフェーズ迎撃を可能にするが、
配備数が膨大になる
衛星が脆弱(対衛星攻撃の標的)
宇宙ゴミ増大のリスク
といった問題を内包する。
国際法の観点からの分析
宇宙条約(1967年)との関係
国際法上、最大の論点は宇宙条約(Outer Space Treaty)である。同条約は、
宇宙空間への大量破壊兵器(WMD)の配備を禁止
宇宙の平和利用を原則とする
と定めている。一方で、
通常兵器の配備は禁止されていない
防御目的の兵器について明確な禁止規定はない
そのため、ゴールデンドームが核兵器以外の迎撃体を宇宙に配備する場合、条約違反とは直ちには言えない。ただし、「平和利用」の理念との整合性は国際的議論を呼ぶ可能性が高い。
軍備管理体制への影響
ゴールデンドームは、事実上、
ABM条約(2002年に米国脱退)以後の流れを加速
ミサイル防衛と攻撃兵器の競争を再燃
させる可能性がある。ロシアや中国は一貫して、米国の大規模ミサイル防衛を「戦略的安定性を損なう」と批判してきた。
戦略安定性の観点
抑止理論との緊張関係
核抑止理論は、「相互確証破壊(MAD)」を基礎としてきた。これは、
攻撃すれば必ず報復される
防御ではなく、報復能力が安定性を生む
という前提に立つ。
ゴールデンドームのような包括的防衛構想は、
「報復を無力化できる」と相手に認識させる
先制攻撃誘因を高める
との懸念を生む可能性がある。
攻撃側の対抗措置と「コスト交換比」
戦略研究では、防衛が強化されるほど攻撃側は、
ミサイル数の増加
デコイ・極超音速化
飽和攻撃
によって対抗する傾向がある。結果として、
防衛側が1ドル使うごとに、攻撃側はそれ以下のコストで対抗できる
という「コスト交換比の不利」が指摘される。ゴールデンドームが完全防御を達成できない場合、巨額投資が戦略安定性をむしろ低下させる可能性もある。
日本および同盟国への示唆
ゴールデンドームが実現すれば、日米同盟においても、
米国の防衛傘への依存構造の変化
日本独自のミサイル防衛との役割分担
宇宙領域での同盟協力の拡大
といった議論が不可避となる。特に宇宙の軍事利用が常態化すれば、日本の宇宙基本法・防衛政策にも中長期的影響を及ぼす。
総合評価
技術的観点から見れば、ゴールデンドームは、
探知・追跡能力の向上という点では現実的
完全迎撃という点では未達の可能性が高い
国際法・戦略面では、
明確な違法性はないが
軍拡競争と戦略不安定性を誘発するリスク
を併せ持つ構想である。
したがって、ゴールデンドームは「貫通不可能な盾」というよりも、抑止構造を再編する巨大な政治・戦略プロジェクトとして評価すべきであり、その成否は技術だけでなく、国際政治・同盟管理・軍備管理の枠組みと不可分である。
SDI(スター・ウォーズ計画)との歴史的比較
SDIの成立背景
SDI(Strategic Defense Initiative:戦略防衛構想)は、1983年にレーガン米大統領が発表した大規模ミサイル防衛構想である。冷戦後期、米ソ間の核抑止が相互確証破壊(MAD)に依存している状況を「道徳的に受け入れ難い」とし、核攻撃を物理的に無力化する防衛構想を掲げた。
SDIは以下の要素を特徴とした。
宇宙配備レーザーや粒子ビーム兵器
宇宙ベース迎撃体によるブーストフェーズ迎撃
国家規模の多層ミサイル防衛
これは当時としては極めて先進的かつ野心的であり、技術的には「未来技術のカタログ」と評された。
技術成熟度の比較
SDIとゴールデンドームの最大の違いは、技術成熟度にある。
SDI当時は、
高性能センサー
宇宙通信
精密誘導
リアルタイム演算
の多くが未成熟であり、結果として「技術的に実現不能」「費用対効果が成立しない」との評価が支配的となった。
一方、ゴールデンドームは、
衛星コンステレーション
高性能赤外線センサー
AIによるデータ融合
精密誘導迎撃体
といった技術が実用段階に入りつつある点で、SDIよりも現実性が高いとされる。
しかし、完全防御という理念自体はSDIと同質であり、根本的な課題(飽和攻撃、コスト交換比の不利)は現在も解消されていない。
政治的・戦略的意味の比較
SDIは結果的に、
ソ連に対する経済的・心理的圧力
軍拡競争の加速
冷戦終結の一因
となったと評価されることがある。
ゴールデンドームもまた、
技術的防衛計画であると同時に
戦略的シグナリング(政治的威嚇)
としての側面を強く持つ。すなわち、実際の迎撃能力以上に、「米国は抑止構造を書き換える意思と能力を持つ」というメッセージが重要である点で、SDIと強い連続性を持つ。
中国の公式反応と戦略的評価
中国政府の公式見解
中国外務省および国防部は、米国の大規模ミサイル防衛構想に対して一貫して懸念を表明している。ゴールデンドームについても、
「世界的戦略バランスと安定を損なう」
「宇宙の軍事化を加速させる」
との立場を示している。
中国側の論理は、米国のミサイル防衛が進展すれば、
中国の核抑止力が相対的に弱体化
米国による先制攻撃の誘因が増大
するという点に集約される。
中国の対抗戦略
中国はゴールデンドームに対し、以下の方向で対抗すると見られる。
極超音速兵器(DF-17等)の高度化
MIRV(多弾頭化)による飽和攻撃能力
デコイ・電子戦能力の強化
対衛星(ASAT)能力の拡充
特に、宇宙ベース防衛に対しては、対衛星兵器が最も費用対効果の高い対抗手段と認識されている点が重要である。
ロシアの公式反応と戦略的評価
ロシアの基本姿勢
ロシアは米国のミサイル防衛に対し、冷戦期から現在に至るまで一貫して強い警戒感を示してきた。プーチン政権は、
ABM条約からの米国脱退
欧州MD配備
宇宙利用の拡大
を、戦略安定性を破壊する行為と位置づけている。
ゴールデンドームに対しても、
「新たな軍拡競争の引き金」
「核抑止の基盤を揺るがす」
との公式評価を示している。
ロシアの対抗能力
ロシアは既に、
アバンガルド(極超音速滑空体)
キンジャル(空中発射型極超音速兵器)
原子力推進巡航ミサイル(ブレヴェストニク)
といった、ミサイル防衛を意図的に突破する兵器体系を開発・配備している。
これは、ゴールデンドームのような構想が、防衛の強化よりも攻撃兵器の多様化を促進する典型例であることを示唆している。
日本の防衛白書との比較評価
日本のミサイル防衛観
日本の防衛白書(2023〜2025年版)において、ミサイル防衛は以下の原則に基づいている。
専守防衛
日米同盟を基軸
段階的・現実的能力整備
日本は、弾道ミサイル防衛(BMD)として、
イージス艦
PAC-3
将来的な反撃能力(スタンドオフ)
を組み合わせる構想を取っており、「完全防御」ではなく被害抑止と限定的防御を前提としている。
ゴールデンドームとの思想的差異
ゴールデンドームと日本の防衛白書を比較すると、根本的な思想の違いが明確である。
ゴールデンドーム:
国家規模での包括的・理想的防御を追求日本の防衛構想:
防御の限界を認識した上で、抑止力全体を補完
日本の防衛政策は、ミサイル防衛単独で抑止が成立しないことを前提としており、これは多くの戦略研究者の主流的見解とも整合的である。
日米同盟への含意
ゴールデンドームが進展した場合、
米国の防衛優先順位が本土防衛に集中
同盟国防衛への関与の形が変化
する可能性がある。一方で、
宇宙センサー
データ共有
迎撃技術
の分野では、日本が技術的・運用的に関与する余地も拡大する。
したがって、日本にとってゴールデンドームは「参加すべき防衛計画」というよりも、戦略環境を変化させる前提条件として評価すべき対象である。
評価
SDIとの比較、中国・ロシアの反応、日本の防衛政策との対照から導かれる結論は以下の通りである。
ゴールデンドームはSDIの再来ではあるが、技術的現実性は相対的に高い
しかし、戦略的影響はSDI同様、軍拡競争を刺激する可能性が高い
中国・ロシアは防衛ではなく攻撃能力の強化で応答する
日本の防衛構想は、ゴールデンドームよりも抑止理論的に慎重である
ゆえに、ゴールデンドームは「技術プロジェクト」である以上に、21世紀型戦略安定性をめぐる思想的挑戦と位置づけるべきであり、その評価は軍事技術だけで完結しない。
