トランプ大統領「納税申告書?監査中だ」
ドナルド・トランプ大統領の納税申告書は現在監査中であり、それが継続している間はリリースしないと断言している。
なお、「監査中なので納税報告書はリリースできません」という法的な制約はない。
恐らくトランプ大統領は、アメリカ合衆国史上初の納税報告書をリリースしなかった大統領になるだろう。
監査を受けていますか?
これは機密情報であり、関係者以外は分からない。
情報を公開できるのは監査対象者またはその弁護士だけである。調査を実施する内国歳入庁(IRS)は、個人の財務が調査中であるかどうかを開示することはできない。
1970年代以降、アメリカ合衆国大統領がIRS監査を受けることは”慣行”だった。
つまり、トランプ大統領の公式アカウントも2017年から監査を受けている可能性が高い。
大統領就任前、トランプ大統領の弁護士のひとりは納税申告書について、「2002年以来、継続的に監査を受けていた」とコメントを発表した。
当時弁護士は「2009年以降の監査が進行中」と述べている。なおIRSは、2002年~2008年までのトランプ公式アカウントチェックが完了したと報告している。
トランプ大統領は監査を終えた2002年~2008年の納税申告書をリリースしてない。
2016年の大統領選挙立候補前、トランプ大統領は記者団に対し、「私が立候補することになったら、必ず納税申告書を作成するだろう」と述べている。
当選後、トランプ大統領はこの発言は撤回、「監査が完了すればリリースするだろう」と力強く語った。
監査中でもリリースできますか?
できる。
現職のアメリカ合衆国大統領がIRS監査を受けることは慣行であり、ジェラルド・フォード大統領以降の大統領は在任中に納税申告書を公開していた。
なお、「アメリカ合衆国大統領は納税申告書を公にしなければならない」という法律はなく、義務もない。
しかし、それを要求された場合、「議会に提出しなければならない」という法律はある。
民主党はこれを利用したが、共和党は「個人アカウントの開示を法律で強制する」ことに異議を唱えている。なお、共和党は上院でこの要求を却下するため、トランプ公式アカウントが開示されたことはない。
議会への納税申告書提出について尋ねられたトランプ大統領は、「そんな法律はない。監査が終わればリリースする。終わらなければリリースしない」と述べている。
ナンシー・ペロシ下院議長「国家安全保障の問題」
9月28日、民主党のナンシー・ペロシ下院議長はトランプ大統領の租税回避術について、「国家安全保障の問題」と指摘した。
ニューヨーク・タイムズが投下した爆弾によると、トランプ大統領は2016年と2017年に「連邦所得税を750ドル(約79,000円)も支払った」という。
ペロシ下院議長はNBCニュースの取材に対し、「報告書によると、トランプは4億ドル以上の借金を抱えているようだ」と語った。
ナンシー・ペロシ下院議長:
「トランプは誰に借金をしている?個人?国家?レバレッジは何だ?」
「現職の大統領が4億ドル以上も借金を抱えている。誰から金を借りたかも分からない。国家安全保障上の問題と言えるだろう?」
「トランプはロシアの大統領に恩恵を受けているのか?個人的に?財政的に?」
ニューヨーク・タイムズによると、トランプ大統領は「過去15年間のうち10年間所得税を全く支払っていなかった」という。なお同紙は、今後4年間で3億ドル以上の”ローン”を支払う責任があると付け加えている。
トランプ大統領がロシアから収入を得ていた証拠は示されていないが、他国から金を稼いでいたことは明らかになった。
ニューヨーク・タイムズは今回発表したレポートの情報について、「合法的にアクセスできる情報源から提供された」と述べた。
タイムズの主張1
タイムズは、「トランプ大統領は2016年と2017年に750ドルもの巨額所得税を支払ったが、過去15年間のうち10年間はそれを全く支払っていなかった」と主張している。
この租税回避術は、「稼いだ金より失った金の方がはるかに多かった」と報告することで実現した。
トランプ大統領は世界一有名な実業家のひとりであり、不動産王として大成功を収め、数億ドル規模の利益を毎年確保している。
これに対しタイムズはトランプ大統領の個人アカウントについて、「年間数億ドルもの利益を確保しているにも関わらず、税金を支払いたくない一心で毎年意図的に損失を積み上げているビジネスマン」と述べている。
米国労働統計局のレポートによると、アメリカの世帯の平均所得額は78,635ドル、連邦所得税平均納付額は9,302ドルだった(いずれも2018年)。
トランプ大統領は2018年に少なくとも4億3,490万ドルを稼いだと述べている。一方、タイムズは4,740万ドルの大赤字だったと主張した。
トランプカンパニーの最高法務責任者を務めるアラン・ガーデン氏はタイムズの投下した爆弾について、「全てではないが、ほとんどが不正確であるように見える」とコメントした。
タイムズの主張に対しトランプ大統領は以下のように述べた。
ドナルド・トランプ大統領:
「2015年に立候補を発表して以来、私は毎年数千万ドルもの”個人税”を連邦政府に支払ってきた」
トランプ大統領はタイムズが指摘する「個人税」という単語を使用したが、これは連邦税(社会保障、メディケア、その他税金)のことであり、所得税とは異なると認識しなければならない。
タイムズの主張2
タイムズのレポートは、トランプ大統領の事業のほとんどが「毎年数百万ドル規模の赤字経営状態」にあると報告している。
ニューヨーク・タイムズ:
「この方程式はトランプ氏の財政を支える重要な錬金術である。彼はテレビなどで得た収入をビジネスに投じ、税金を避けるために負債を確保する」
「トランプ氏はロビイスト、外国の役人、彼に好意を抱く人々などから現金を回収している」
タイムズは、トランプ大統領が就任から2年間の間に海外から7,300万ドルの収入を得たと主張している。なお、その多くはアイルランドとスコットランドなどのゴルフコースから得たものだった、
また、フィリピンから約300万ドル、インドから約230万ドル、トルコから約100万ドルを獲得したことも報告されている。
トランプ大統領は2018年までにアプレンティス(原題:The Apprentice)で合計4億2,740万ドル稼ぎ、また、オフィスビルに投資することで1億7,650万ドルの利益を上げた。
一方、トランプカンパニーは、「これらの収益は事業が重大な損失を計上したことで相殺、ほとんど連邦所得税を支払わずに済んだ」と主張すると思われる。
タイムズは、トランプ大統領がイヴァンカ・トランプ大統領補佐官にコンサルティング料を支払うことで課税所得を減らした、と主張している。
レポートによると、イヴァンカ女史の所有するコンサルティング会社は、2017年の財務開示で747,622ドルを受けとったと報告。同年、トランプカンパニーは、ホテルプロジェクトの税額控除として同額のコンサルティング料を請求したという。
また、イヴァンカ女史の「見習い期間中の事業費」として、70,000ドル以上のヘアスタイリング費用を償却している。
レポートは、トランプ大統領が「将来の減税のために、残損失の繰り越しを可能とする税法を利用している」と主張した。
マイアミ近郊にあるトランプ大統領所有のゴルフリゾート、トランプ・ナショナル・ドラルは2012年の購入以来、計1億6,230万ドルの損失を計上している。
スコットランドとアイルランドのゴルフコースの合計損失は6,360万ドルだった。
税務弁護士兼政策アナリストのスティーブ・ローゼンタール氏は以下のように述べた。
スティーブ・ローゼンタール氏:
「実業家トランプはこの手法で成功を収めた」
「他の成功がなければ、このレベルの損失を生み出すことはできない。タイムズのレポートが事実であれば、トランプは借金を重ね続けていることになる」
2016年、ヒラリー・クリントン氏はトランプ大統領の納税額の少なさに異議を唱えた。
これに対しトランプ大統領は、「私は法に従い賢く税金を支払っている」と述べ、共和党支持者から拍手と歓声を浴びた。
トランプ大統領は、彼自身が指摘する腐敗した税制の抜け穴を利用する能力に長けており、共和党支持者は法に従い税金を納めていれば万事OKと考えるだろう。
しかし、億万長者のアメリカ合衆国大統領より多くの連邦所得税を支払った数百万~数千万人の国民は、この手法に恐らく反対する。
うやむやにされるコロナ問題
タイムズの爆弾はトランプ大統領の願いを叶えてくれるかもしれない。
人種差別、最高裁判所判事、そして今回の所得税問題は、トランプ大統領最大の懸案事項、「コロナウイルス対策の失敗」の緩衝材になると思われる。
しかし、政治に関心の薄い無党派層から「トランプは750ドルしか税金を納めていない詐欺師」と決めつけられてしまえば、貴重な1票を失ってしまう。
納税申告書のリリースも含め、今後数週間でこれらの問題は綿密に精査されるだろう。
トランプ大統領「フェイクニュースだ」