太陽光発電はまだまだ成長できる。発電効率を上げれば世界が変わる

右肩下がりのイギリス経済の中で、好調を維持した数少ないもののひとつが太陽光発電だった。気象庁によると、2020年4月の日照時間は過去に類を見ないほど素晴らしく、4月20日月曜日12:30に過去最高の発電量(9.68GW)を記録した。

自宅の屋根に16枚のソーラーパネルを設置しているブライアン・マッカリオン氏は、4月の天候から大きな恩恵を受けたという。「パネルを設置してから約5年。年間約1,000ポンド(約134,000円)を節約できている。発電効率が良くなれば(上がれば)さらなる電気代の節約につながるだろう」と述べた。

太陽光発電、ソーラーパネルの発電効率上昇競争は世界中で進められている。業界が活性化された結果、パネル本体の価格も大幅に安くなり、さらに発電効率も上昇すれば、消費者は素晴らしい恩恵を受けることができるだろう。

現在の平均的な商業用ソーラーパネルは、光エネルギーの17%~19%を電力に変換できる。10年前が約12%だったことを考えると、素晴らしい進歩である。しかし、発電効率を30%まで上昇させることができたとしたら。

太陽光発電は世界で最も急成長しているエネルギー技術のひとつである。10年前、世界の太陽光発電容量は20GW(ギガワット)に過ぎなかった。ちなみに、同発電所のおおよその出力が1GWである。

2019年末時点、世界の太陽光発電容量は約600GWにまで跳ね上がった。10年で約30倍である。コロナウイルスによる混乱の中にあっても、同発電事業は加速し続けることが予想されている。ロンドンに拠点を置くIHS マークイット(調査会社)は、2020年だけで少なくとも100GW以上の設備が追加されると見込んでいる。

30%

太陽電池の多くは、シリコン結晶(水晶)のウエーハ薄片から作られている。なお、同製品の世界シェアの70%を中国、台湾が独占している状態だ。

ウエーハ薄片を利用したパネルの発電効率は、最大効率とされる「理論値」に限りなく近づいている。同材料だけを利用してパネルを作った場合の効率は約32%、現時点の値(17%~19%)を大きく上回っている。

さらに、異なる6つの材料を組み合わせて作るマルチジャンクションセルを利用すると、その値は47%にまで上昇するという。現在の効率値を劇的に向上させる手法が「集中太陽光」である。これはレンズを使用して太陽電池に当たる太陽光を拡大・集中させる方法である。ただし、同手法は非常に高価、コストがかかり、現時点では衛星にのみ利用されている。

今、世界で最も急速に改善の進む技術がペロブスカイト技術(構造)である。これは太陽光吸収に適した結晶構造を有している。人間の髪の毛よりはるかに薄い約300ナノメートル(0.000007m)の薄膜は、溶液から製造可能(コストも比較的安価)。建物、車、衣服のコーティングなどにも利用できる。

また同技術は、曇りの日や屋内といった低条件、光度の低い場所でもシリコン以上の吸収効率を実現する。

カリフォルニア州の新興企業であるスイフト・ソーラー社のマックス・ホーラントナー氏によると、同技術の開発に取り組んでいる企業は世界で10社程度だという。

イギリスの名門、オックスフォード大学は、2018年末にペロブスカイト技術を採用したソーラーパネルで28%の発電効率を達成した。この技術を利用した生産ラインは既に稼働しており、2020年だけで250MW分のパネルを供給するという。

スイスの新興企業、イン・ソーラー社は、太陽電池パネルの保護ガラスに六角レンズのグリッドを埋め込み、光を200倍に集光する取り組み(研究)を行っている。マドリッド大学の太陽エネルギー研究賞は、同社の製造したパネルが29%の発電効率を達成したと述べた。同社は現在、目標とする32%の達成に向け、研究を進めているという。

発電効率を上昇させることができれば、世界の電力業界の潮流は大きく変化するだろう。まずは様々な問題点(コスト、強度、安全性など)をクリアしなければならないが、30%が当たり前の時代は目の前まで来ている。

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