誰かに見て欲しい

注目されたい、見せたい願望は誰にでもある。

「いい感じの服を購入した。家族や友人に見て欲しい」「可愛い彼女ができた。みんなに自慢したい」「ダイエットに成功した。引き締まったウエストと太ももを見て欲しい」などと思ったことのない人はいないはずだ。

なぜ見せたいと思うのか。私は心理学や人間工学の専門家ではないが、答えはひとつしかないと確信している。人間は「好きもの」なのだ。

「好きもの」とは、「変態、ド変態、どスケベ、エロオヤジ、絶倫、好色家、色狂い、出歯亀」などの意味を持つ。人間は好きもの、すなわち、ド変態野郎なのだ。

人間に欠かせことのできない欲求のひとつ、「性欲」のおかげ(?)で私たちはド変態野郎になり、結果、人間性を保つことができている。

注目されたい、見せつけたい願望の強い人は、標準的な人間よりド変態ということになる。これは法を犯さない限り、別に悪いことではない。

私は人に注目されたくない、と思っている。ただし、「自分は変態じゃない」とアピールしたいわけではない。注目されるのが苦手なのだ。

昔、付き合っていた女性、愛子(20歳:仮名)に、「あなたは人の視線を全く気にしないし、気づかない。もう少し第三者からの視線を感じ取れるように努力した方がよい」と言われたことがある。

私は鈍くないし、馬鹿でもない(と思う)。しかし、人に注目されることが苦手なので、第三者が行き交う街中では、意識を彼女に集中させていた。「周りの人間は皆カボチャである」、と念じ、愛子の顔、胸元、太ももだけを見ていたのだ。

注目されるのが苦手、あまり見せつけたくないと思う人間はド変態野郎ではないのか?答えは否である。私は自分のことを真正のド変態野郎だと確信している。間違いなく、標準的かつ健康的なド変態野郎である。

愛子も真正のド変態野郎だった。しかも、かなり特殊な性癖を持っており、「ついていけない」と思ったことが何度もある。

付き合い始めてから1カ月、人前でキスを迫られた時、私は困惑した。欧米人は人前でキスすることに抵抗を感じない(らしい)。これは文化的なものであり、彼らは握手やハイタッチ感覚でキスできるのだ。

私は日本人である。人前でキスするなど考えたこともなかったし、「恥ずかしい」と思った。しかし、同じく日本人の愛子は混雑する駅の改札付近で「キスしたい」と懇願し、私を困惑させた。なお、彼女は酒に酔っていたわけでも、クスリをキメていたわけでもない。

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見せつけたい男と女

人間は慣れる生き物である。

私は愛子(20歳:仮名)に調教され、人前でキスすることに抵抗を感じなくなった。ただし、もともと第三者からの視線を無視することが得意だったので、感じなくなったというより、「無視できるようになった」と言った方が正しいかもしれない。

付き合い始めてから数か月後、愛子は屋外でのセックスを求めてきた。これは法を犯す迷惑行為である。(公然わいせつ罪(刑法174条)

エレベーター、観覧車、公園のベンチ、車内、ボンネットの上、浜辺、小学校のグラウンド。私はいろんな場所で愛子の欲求に応えた。が、屋外よりホテルや自宅でしたい、と常に意見提起していた。

愛子の要求はエスカレートし、「他人(第三者)の前でセックスしたい」と言い出した。さすがにこの提案は受け入れることができず拒否、「なぜ見せたいのか?」と聞くと、「興奮するから」という本能剥き出しの答えが返ってきた。

公開セックスだけはムリだ、と愛子に懇願し、何とか納得させることができた。その後、彼女は「実家でセックスしたい」と言い出したため、ご両親がいないことを条件にOKした。

夜、ご両親のベッドで愛し合っていると、愛子の母親にセックスを目撃されてしまった。私はショックで言葉も出ず、目の前が真っ暗になった。しかし、彼女は知ったことではないという感じで腰を振り、乱れに乱れている。

私は真正のド変態女に終始圧倒され、別れを決意した。この経験で確信したことはひとつ、人間は心の中に魔獣を飼っている。つまり、清楚な妻を演じている女性も、眼鏡をかけ優秀な学者であることをアピールする男性も、皆、ド変態野郎なのだ。

しかし、見せつけたい欲求が爆発すると、取り返しのつかない事態を招く。露出魔と呼ばれる男女は、道行く人に自分の身体や性器を見せつけることで興奮を覚える。これも純然たる犯罪、見たくない人にとっては迷惑極まりない悪質な変態行為である。

ニューヨークの地下鉄に乗ると、見せつけたい男女によく遭遇する。「女性ならご褒美じゃないか」と喜んでいる男性諸君、目の前でいきなりコートを広げられ秘部を見せつけられても、「セックスしたい」という気持ちは恐らく湧いてこない。私は、「ヤバい」「怖い」という感情の方が強いはるかに強かった、と記憶している。

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記録し見せつける

ニューヨークで画家として活動するジェイク(仮名)は、かなり特殊な嗜好を持つ変態男だった。

彼の絵が売れているか否かは分からないが、裕福な生活をしていることは確かだった。アッパーイーストでドアマン付きの物件に住み、作品作りのためのアトリエまで別に借りているのだから大したものである。

意外と裕福なジェイクは、日替わり定食感覚で女性とセックスする男だった。かなりの男前なので、当然と言えば当然かもしれない。

以前、ジェイクに「ナオミ(仮名)を紹介するよ。彼女とのセックスは最高だからきっと気に入るはずだ」と提案されたものの、丁重にお断りしたことを覚えている。

ジェイクは寝室にカメラを複数台セットし、自分のセックスを撮影、観賞することが趣味だった。パートナーとの行為にふける自分の姿を見ると異様に興奮し、いてもたってもいられなくなるらしい。

盗撮はもちろん犯罪である。主にこの行為でつかまる男は、「女性の痴態を見たい」「それを撮影しオカズにしたい」と考え、犯罪に手を染める。

しかし、ジェイクは女性の裸や痴態ではなく、セックスにふける自分の姿を見て興奮すのである。「女性に興味はないのか?」と聞くと、「男性でもOK。ただし、女性の方がキレイでカメラ映えするし、後々皆で観賞することを考えると、男性は避けた方がよいと思う。僕は自分がセックスしているところを全世界に発信すべく、準備を進めている」と述べた。

ジェイクは、女性の乳房や秘部より自分の尻やイチモツを世界に公開したいと思う好きものだった。私はその映像を見てげんなりし、盗撮よりアダルトビデオの方が100倍よいと確信した。

マンハッタンには、世界中から奇人変人が集まってくる。私が在住していた頃は、新聞や雑誌に「3Pできる男女望む」「今すぐセックスできる方、要交渉」などと広告が掲載され、いつでも誰でも好きな時にセックスできる環境だった。

ゴールデンシャワーを浴びたい、アザができるぐらい殴ってほしい、ア〇ルに腕を突っ込んでほしいなどは当たり前。そして、そのような願望を持つ男女が普通にバリバリ仕事をこなし、何百万ドルも稼いでいたりする。

今、誰かに見て欲しい、見せつけたいという願望をお持ちの方は、出会い系サイトなどで同じ思考を持つ方を探し、その日限りの関係に徹した方がよい、と私は思う。恋人や不倫関係になると後々ややこしいし、自分の首を絞めることになりかねない。

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