カイル・リッテンハウス
17歳のカイル・リッテンハウスは、ウィスコンシン州で発生した抗議活動中に2人を殺害した容疑で起訴された。
8月27日に提出された刑事訴状によると、25日夜、ウィスコンシン州キノーシャでの抗議活動において、犠牲者のひとりが頭を含む5カ所に銃弾を受け、もうひとりが胸などを撃たれた。
事件は「ジェイコブ・ブレイク氏銃撃事件」の抗議活動が始まってから3日目の夜に発生した。
キノーシャ警察によると、2人の犠牲者は銃撃により死亡。銃弾を浴びたもうひとりの男性は、「重篤な怪我だが、命に別状はない」という。
抗議活動の様子を記録した映像には、半自動小銃で武装し、抗議参加者たちに追われている白人男性の姿が写っており、その後、逃げながら発砲している様子も確認された。
アンティオキア警察署長のジェフ・ガットショー氏は記者会見で次のように語った。
ジェフ・ガットショー警察署長:
「容疑者はイリノイ州のカイル・リッテンハウス17歳。26日の夜明け前にイリノイ州アンティオキア警察に投降した」
リッテンハウスはウィスコンシン州キノーシャ警察から発行された令状に基き逮捕され、殺人容疑で起訴された。
死亡したのは、ジョセフ・ローゼンバウム氏とアンソニー・フーバー氏の2人。ガイジ・グロスクロイツ氏は入院中である。
刑事訴状によると、ローゼンバウム氏はリッテンハウスを追跡し、自動車修理工場”Car Source Auto Service”の駐車場で追いついたという。
検察官が公開した映像には、大声を上げてリッテンハウスに接近するローゼンバウム氏の姿が写っている。
その後、ローゼンバウム氏は右足の付け根、背中、左手、左太腿、額の右側に銃弾を撃ち込まれた。
銃撃後、リッテンハウスはその場で電話をかけ、「私は誰かを殺した」と述べている。
ローゼンバウム氏を射殺する前、リッテンハウスはフーバー氏と何らかの理由でもみ合いになり、銃撃。さらに、両手を上げ降伏の姿勢をとっていたグロスクロイツ氏の右手を撃ったという。
解剖の結果、フーバー氏は心臓および大動脈、肺動脈、右肺に銃撃を受けていた。
使用されて銃は、スミス&ウェッソンAR-15スタイル、.223ライフルだった。
当局は、容疑者の名前に関連するソーシャルメディアアカウントを調査し、以下のように述べた。
ウィスコンシン州キノーシャ警察:
「リッテンハウスは動画内でドナルド・トランプ大統領を支持する、と言及し、共和党のキャンペーンポスターを紹介していた」
このソーシャルメディアアカウントは26日に非アクティブ化され、現在調査が進められている。当局はABCの取材に対し、「アカウントが合法であるか否かをチェックし、事件に関連する情報を集めている」と述べた。
なお、イリノイ州アンティオキア警察当局は、リッテンハウスのソーシャルメディアアカウントについてコメントしていない。
トランプ2020再選キャンペーンチームは、26日夜に声明を発表。リッテンハウスを非難し、個人が起こした事件とチームを結びつけるべきではないと主張した。
トランプ2020再選キャンペーンチームのコミュニケーションディレクターを務めるティム・マートー氏は以下のように述べた。
ティム・マートー氏:
「トランプ大統領は、あらゆる形態の暴力を一貫して否定し、全てのアメリカ国民を混乱と無法から守らねばならない、と信じている」
「リッテンハウスとキャンペーンチームは、何の関係もない。私たちは法執行機関が迅速な調査と行動をとれるように、全力でサポートする」
ウィスコンシン州の抗議デモ
刑事告訴
アンティオキアのジェフ・ガットショー警察署長によると、リッテンハウスは現在、イリノイ州ヴァーノンヒルズのレイク郡少年拘留所で拘留中だという。
アンティオキア消防署長のジョン・コークフェアはABCの取材に対し、「リッテンハウスは2018年9月から2020年3月までの間、同消防署の士官候補生だった」と述べた。
ロサンゼルスのジョン・ピアース弁護士はABCの取材に対し、「現在、リッテンハウスの代理を務めている」と述べ、「私たちはカイルの無実および正義を証明する」と付け加えた。
ピアース弁護士は27日夜にクライアントの家族と面会。28日の午前中にリッテンハウスの保釈審問に出廷した。
また、ピアース弁護士は、ジョージア州の弁護士、L・リンウッドが創設した”FightBack Foundation Inc.”と呼ばれる非営利団体組織を通じて、リッテンハウスの法的防衛基金を立ち上げたと語った。
この基金についてピアース弁護士は、「カイルの防衛に資金を供給する唯一の手段になるだろう」と述べた。
一方、警察当局は、「25日夜に使用された半自動小銃、アルコール類、タバコ、その他火器および爆発物の調査を関係部門と行っている」とコメントした。
8月23日夕方、ジェイコブ・ブレイク氏は、ウィスコンシン州キノーシャの警察官に背後から7発もの銃弾を撃ち込まれた。
運転席側のドアを開けたブレイク氏を追跡していた警察官は、3人の子供が後部座席に乗っている状態で銃撃。その様子を撮影した目撃者が動画を拡散した。
ウィスコンシン州司法省の刑事捜査部門によると、銃撃に関与した警察官は休暇を取得中だという。なお、キノーシャ警察はボディカメラ着用を義務化していない。
キノーシャ警察は声明の中で、「ブレイク氏をテイザー銃で止めようとしたが、失敗した」とコメントしている。
以来、キノーシャ警察本部と郡庁舎には数百名規模の抗議者が集まり、一部の暴徒がパトカーを破壊、建物に火をつけた。これに対し機動隊は、催涙ガス、閃光弾、ゴム弾で応戦した。
抗議の暴徒化を受け、ウィスコンシン州のトニー・エバーズ州知事は州兵の配備を決定。それに続き、トランプ大統領が連邦捜査局(FBI)の部隊、200名超を配備すると発表した。
ブレイク氏の家族は平和的な抗議活動を求めていたが、暴徒化を防ぐことはできなかった。
ウィスコンシン州司法省は26日夜に声明を発表。内容は以下の通りである。
ウィスコンシン州司法省:
「23日、通報を受けたキノーシャ警察の警察官、計3名がブレイク氏の自宅に向かった。その後、ブレイク氏を逮捕しようと試みたが、テイザー銃による捕縛は失敗した」
「ブレイク氏は制止を振り切り運転席のドアを開け、車内に寄り掛かった。その直後、キノーシャ警察に7年勤務している”ラステン・シェスキー氏”がブレイク氏の背中に向け7回発砲。他の警察官は武器を使用しなかった」
「ブレイク氏は運転席にナイフを隠し持っていた。銃撃後、運転席側のフロアボードから凶器を回収している。なお、他の武器や火器は見つかっていない」
ブレイク氏の家族を代表する著名な公民権弁護士のベンジャミン・クランプ氏は、ジョージ・フロイド氏の事件以降も続く人種差別がエスカレートし、悲劇に至ったと述べた。
クランプ氏はABCの取材に対し、以下のように述べた。
ベンジャミン・クランプ弁護士:
「ブレイク氏は、車内の子供の様子をチェックするために運転席側のドアを開けた」
「ブレイク氏の家族は、銃撃に関与した警察官たちの解雇、起訴を求めている」
「警察に人道・プロフェッショナリズム・トレーニングはないのか。なぜブレイク氏は背後から”7発”も撃たれなければならなかったのか。アフリカ系アメリカ人だけが残酷かつ過度な暴力にさらされる理由があるのか」
「車内にいた3人の小さな男の子たちは、目の前で父親が背後から銃撃されるところを見た。子供たちが抱える心理的影響を想像してほしい」
ブレイク氏の家族はABCの取材に対し、「腰から下が麻痺しているものの、医師はそれが一時的なものであることを望み、できる限りのことをしてくれている」と述べた。
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