アマゾン開発を推奨するボルソナロ大統領
9月22日、ブラジルのジェイル・ボルソナロ大統領は、ニューヨークの国連本部で開催されている”米中戦争回避会議”にビデオメッセージを投稿した。
ボルソナロ大統領は、アマゾン熱帯雨林開発を推奨する自政権および現在も進行中の山火事について以下のように語った。
ジェイル・ボルソナロ大統領:
「ブラジルは環境破壊の推進者ではない。我々は地球温暖化の犠牲者である」
「地球全体の気温が上昇した結果、アマゾンでは山火事が頻発し、とてつもない量の自然が失われている」
同日、ボルソナロ大統領のアマゾン破壊活動に抗議する批評家たちは、このメッセージを却下した。
ボルソナロ大統領は国連総会一般討論の最初の演説者だった。その中で同氏は、「南米の農業ビジネス部門が輸出を拡大したことで、世界の食料供給に素晴らしい影響を与えた」と自画自賛した。
また、アマゾンを焼き尽くす山火事についても言及。ブラジルは地球温暖化の犠牲者である、と被害者面をした。
ジェイル・ボルソナロ大統領:
「私たちは、アマゾンとパンタナル(世界最大級の熱帯性湿地)で発生した山火事に関する偽情報の犠牲者でもある」
「アマゾンは、世界一豊かな自然に恵まれた素晴らしい土地であり、我々もそれを心から愛している。しかし、国際機関は私と政府がそれを無造作に破壊していると主張し、嘘情報をSNSなどで発信し続けている。私はブラジルの自然を誰よりも愛する男であり、国民も理解しているはずだ」
先週、ドイツ率いる”アムステルダム宣言パートナーシップ”はブラジルに対し、アマゾンでの大規模自然破壊を今すぐ止めるよう共同声明を発表した。
欧州各国の代表者たちは、「ブラジルの企業や投資家は環境、社会、ガバナンスの基準を満たさず、好き勝手に樹木を伐採、土地を焼き尽くしている」と警告した。
リオデジャネイロに拠点を置くシンクタンク、”イガラベインスティテュート”の共同創設者であるロバート・マガ氏は、以下のように述べた。
ロバート・マガ氏:
「ボルソナロは国連総会で嘘をつき、政府の信用を傷つけた。政府は率先して環境法を無視し、違法な森林伐採、樹木の焼却処理を意図的に見過ごし、山火事を誘発させた。ボルソナロはアマゾンを破壊しながら、被害者面をしている」
「ボルソナロは違法な土地の収用、占用、森林伐採、樹木の焼却処理を注意深く監視し、アマゾンの破壊に大きく貢献している」
国連総会で被害者面したアマゾンハンターことボルソナロ大統領は、2019年に農業や鉱業などの開発でアマゾンを切り開くと約束、大統領に就任した。
同年、議会デビューを果たしたボルソナロ大統領は、批判的な報道ばかりするメディアと社会主義者たちに宣戦布告。アマゾンに対するブラジルの主権を宣言し、「土地の使い方を決めるのは大統領」と力強く語った。
なお、昨年発生した大規模火災に世界の注目が集まり、多くの投資家や企業はアマゾン開発から撤退。ボルソナロ大統領に対し、「ルールを設けるなどの対策が必要」と圧力をかけている。
国連貿易開発会議(UNCTAD)の事務総長を務めたブラジル人のルーベンス・リクペロ氏はボルソナロ大統領の演説を聞き、「2019年と何も変わらない。ボルソナロ大統領は存在しない環境政策をニューヨークから世界に発信し、ブラジル国民に恥をかかせた」と語った。
5月、ボルソナロ大統領は熱帯雨林保護のために軍を配備。2か月後、国が乾期に入ったため、農場や森林での焼却処理を120日間禁止すると発表した。
しかし、この禁止措置はパフォーマンスに過ぎず、過去からずっと無視されてきた。ボルソナロ大統領自身もそのことを承知しており、関係機関には「慎重に伐採および焼却処理を行うこと」と指示を出している。
ブラジル、記録を更新する山火事が絶滅危惧種を脅かしている
アマゾンハンター・ボルソナロ
ブラジルの宇宙機関が先月発表したデータによると、アマゾンを燃やし尽くしている森林火災は過去14年間で最大規模に達した可能性があるという。
世界最大級の湿地帯、パンタナルでは火災が急増しており、2020年に発生した火災エリアの数は16,000を超えている。これは統計を開始した1998年以降の記録を大幅に上回る数だという。
国連総会のモニターに登場したボルソナロ大統領は、政府のコロナウイルス対策を自画自賛したうえで、6,500万人の低所得者層に対して行った緊急現金配布、中小企業への財政支援対策を熱く語った。
ジェイル・ボルソナロ大統領:
「ブラジルのマスコミの一部は、コロナウイルスを高度に政治化し、”自宅に留まれば全て上手くいく”と吹聴してくれた。それだけでなく、ウイルスに感染すれば死ぬとSNSで拡散し、国民をパニックに陥れ、経済に大ダメージを与えてくれた」
「ブラジル政府はこれらの下劣な行為に屈せず、大胆な方法でコロナウイルスと戦い、素晴らしい経済対策を実施した」
ブラジルのシンクタンク、”イガラベインスティテュート”のロバート・マガ氏は、ボルソナロ大統領が率先してコロナウイルス対策を却下し、致命的な結果を招いたと断罪した。
アルコアドバイスで政治コンサルタント戦略責任者を務めるチアゴ・デアラガオン氏は、以下のように述べた。
チアゴ・デアラガオン氏:
「ブラジルで進行中のパンデミックを”意図的”に拡大させたのはボルソナロである」
「彼は証拠も根拠もない意味不明の対策を推奨した。さらに、マスクを却下したうえでアルコールが身体によいなどと吹聴し、今もトランプ大統領やプーチン大統領の物マネに興じている」
ジョンズ・ホプキンズ大学のまとめによると、ブラジルの累計感染者数は約463万人、これまでに13.9万人超の死亡が確認されている。なお、ボルソナロ大統領自身もコロナウイルスに感染したが、国民の期待に応え、復職した。
【関連トピック】
・パンデミックを放置したボルソナロ大統領の罪
・コロナショックとボルソナロ大統領への抗議運動
ブラジルの炎
9月23日、ブラジル当局はパンタナルで戦う消防士たちに増援部隊を送ると発表した。
リオデジャネイロ連邦大学が分析した衛星画像によると、これまでに干ばつで乾いたバンタナルの湿原、約310万ヘクタール(東京都の面積の約14倍)が焼失したという。
これはブラジル史上最悪の火災であり、16,000カ所以上で発生した炎は致命的な規模の自然を破壊し、人間の力だけでは到底排出できない量の温室効果ガスを大気に放出している。
ブラジルの気象学者は、この地域が過去47年間で最も深刻な干ばつに直面していると警告した。
当局は、最も深刻な影響を受けているマットグロッソ州ブレイズで約240人の消防士が炎と戦っており、今回、新たに43人がチームに送りこまれたとコメントした。
パンタナルには159種類の哺乳類を含む数千の動植物が生息しており、ジャガーサファリツアーが特に有名である。
22日の国連総会に動画を投稿したボルソナロ大統領は、記者団から「政府は世界有数の大自然を破壊するだけでなく、燃やし尽くしたいのか?」と質問され、憤慨した。
アルコアドバイスのチアゴ・デアラガオン氏はアマゾンハンターが投稿した動画について、「彼の発言は世界ではなく、支持者に向けて発信されたものだった。残念なことに、世界はボルソナロの発言をますます軽視し、”どうでもよい”と思うようになった」と述べた。
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