通常であれば夏の新作発表が世界各地で大々的に行われているはずだった

ファッションショーなど夢のまた夢、と業界関係者は言う。

世界中で猛威を振るうコロナウイルス。旅行(観光)客の激減とロックダウンの影響を受け、3月の衣料品販売は過去に例を見ない勢いで急落した。

先月、NEXTのサイモン・ウルフソンCEOは、「服が売れない。誰も外出せず、自宅に待機することを望んでいる。当然の結果だろう」と述べた。

ファッション業界はコロナウイルスの発生により、考えられるあらゆるレベルの影響を受けている。生産は停止し、小売業者、店舗は閉鎖、需要は急落した。

同業界はほぼ小売業者に依存していると言っても過言ではない。業界全体の売り上げの80%は小売店舗からもたらされている。今多くの消費者は服を買うことに一切興味を示していない。パンデミックを生き残るために必要なアイテムが世界中で好まれ、消費されている。これは当たり前のこと、マスクやアルコール消毒液より服を優先する者は極めて少ない

野菜や果物、肉とは違い、服に賞味期限はない。在庫を倉庫に抱えていても問題ないように思えるが、関係者は話にならないと頭を抱えている状態だ。

半年前に売り出されたブランドの最新商品は、既に時代遅れ、賞味期限切れだと業界関係者は言う。期限が切れても購入する者はいるが、次の新作を製作し、ファッションショーで公開せねばこの業界では生き残れないのだ。

しかし、ファッション業界もただ手をこまねいているだけではない。多くの小売業者は在庫を一掃すべく、オンラインで商品を販売している。当然大幅に値引きしたうえでだ

ユニクロはジョギング用ボトムスやレギンス販売に力を入れ、自宅待機および運動したい人々の需要に応えている。

また、時間が経つにつれ、より多くのブランドが商品を大幅に割引して提供する可能性が高い。これは利益率を大幅に損なうものだが、大半の人々は気に入ったデザインの服があれば購入するはず。半年時代遅れだから終わり、と考える人はごくわずかであろう(恐らく)。

また売れる日がくる・・・

2020年の春夏コレクションを2021年の春夏に販売する予定のデザイナーもいる。今年のパリコレで披露したから、今年すぐに販売せねばならない、というルールはなく、発売日を決めるのはブランドや小売業者だ。

多くのブランドは現在広告(CMなど)を停止しているが、ツイッターやインスタグラムのインフルエンサーによる宣言は継続している。70万以上のインスタグラムフォロワーを持つエミリー・キャンハム氏(モデル)は、健康食品、化粧品、衣服などの製品(全てブランド)を定期的に宣言している。

キャンハム氏は、「私にとって最も適切と思われるものをフォロワーに宣伝している。フォロワーの多くは流行や伝統、ルール、価格にとらわれず、自分にとってベストの服を着たいと考えている」と述べた。

9月にパリ、ロンドン、ニューヨーク、ミラノで開催されるファッションショー(ウィーク)がどうなるかは、コロナウイルスの感染状況次第。社会的距離の推奨が継続されていれば、オンラインでの配信もあり得る、と関係者は言う。

ヴォーグの編集長を務めるアナ・ウィンター氏は、ファッション業界の置かれている現状を大変厳しいと評価した。「たくさんの人々がこの業界、私たちの生活、服への価値観、服から生み出される廃棄物、売り上げ、過剰消費を再考するはず。この業界がもたらしてきた問題を考え直さねばならないし、その必要がある」と述べた。

ファストファッション」は、消費者が安いもの(服)を購入し、数回身につけたら廃棄、新しい流行を探すという流れを繰り返す。結果、世界中で恐ろしい量の衣服が廃棄、処理、酷い場合は海に投棄されることもある。同業界は、毎年12億トンもの炭素を排出していることが研究の結果明らかになった。

また、倉庫に積み上げられている「時代遅れ」の在庫品の多くも廃棄処理しなければならない。数か月後には新作が誕生し、売れ残りが倉庫を占領するのだから。

環境保護への機運は同業界でも確実に高まっている。破棄せずとも良い持続可能なブランドを生み出すべく、多くのデザイナーが奮闘しているという。

ファッション業界がもたらす全世界の年間収益は約2.5兆ドル(280兆円)。服が売れなくなれば、小売業者、店舗は廃業。ファッションショーを開催できなければ、モデルも仕事を失うだろう。

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