ブレオナ・テイラー射殺事件／全米の抗議活動が激化

ケンタッキー州当局の決定に非難が集まる

9月23日、ケンタッキー州の検事総長、ダニエル・キャメロン氏は、ブレンナ・テイラー氏射殺で告発された警察官に殺人罪を適用せず、他の3つの容疑で起訴すると発表した。

この決定に同州ルイビル市で行動するBlack Lives Matterの抗議者たちは怒り狂い、その怒りは全米に飛び火した。

元ルイビル警察のブレット・ハンキソンは、「テイラー氏射殺までの過程の中で」、隣のアパートの住人を危険にさらした罪などで起訴された。

キャメロン検事総長によると、事件当時、隣のアパートには計3名の住人がおり、今回の起訴はその3名に対するものだという。なお、テイラー氏の死に関与した他の現職警察官２名は起訴されなかった。

テイラー家の弁護士を務めるベン・クランプ氏は、「州当局の決定は空っぽで何もない。法外で攻撃的だ！」とツイートした。

州当局の決定に対する怒りが全米中の抗議活動に拡散された、結果、1日で100人以上が逮捕され、ルイビルでは2人の警察官が何者かに銃撃を受け、負傷した。

ニューヨーク州では、数百名の平和的な抗議者たちがブルックリンとマンハッタンに集まった。

ABCニュースステーションWABCによると、逮捕者は1人も出ていないという。

ワシントン州シアトルで発生した抗議活動は州当局と激しく衝突した。

東地区の抗議活動では、何者かが爆発物を投げ、バリケードを破壊。爆発物は自転車に乗る警察官の近くで爆発した。当局によると、その衝撃で付近に設置されていた防犯カメラおよび電線が破損したという。

また、各地で複数の火災が発生し、警察への爆弾攻撃が頻発。当局は「違法な抗議活動」と警告した。

シアトル警察の広報担当は記者団に対し、「抗議者たちは警察官に石やビン、消火器や爆発物などを投げつけている」と語った。

シアトルの抗議活動では、少なくとも13人が建造物等を破壊した行為もしくは暴行容疑で逮捕された。

ニューヨーク州当局は、バッファロー市でピックアップトラックが抗議者を跳ね飛ばし逃走、逮捕したと発表。

ABCバッファローニュース（WKBW）によると、負傷した被害者の容態は安定しており、病院に搬送されたという。

その後、運転手は警察官によって逮捕された。なお、運転手が意図的に抗議者を狙ったかどうかは分かっていない。

ジョージア州アトランタでは平和的な抗議活動が行われた。

活動は数時間におよび、群衆は議事堂前に移動。待ち構えてジョージア州立警察の部隊とにらみ合いになった。

ABCアトランタによると、部隊は抗議者たちに向けて催涙ガス弾を発射し、強制的に散開させたという。なお、平和的な抗議活動であったにも関わらず、数名が逮捕された。

ABCデンバー（KMGH）によると、コロラド州デンバーでは抗議者の列に車が突っ込み、負傷者が出たという。

州当局は運転手を拘束、負傷者した女性は軽傷とのことで、病院に搬送された。

イリノイ州シカゴでは数百名がサウスサイドから警察本部まで行進した。

抗議活動に参加した聖サビナ協会のマイケル・プフレガー神父はABCシカゴニュースの取材に対し、「今日の決定は到底受け入れられない。検事総長はテイラー氏の名前をまともに口にすることができなかった」と述べた。

同じく抗議活動に参加したテヨナ・ロフトン氏は、「誰かの命を奪った以上、それが誰であろうと責任を問われなければならない。テイラー氏に対する正義は執行されなかった」と述べた。

ABCシカゴニュースによると、通りで炎が発生したものの、延焼することはなかったという。

ポートランド、ロサンゼルス、ナッシュビル、フィラデルフィアなどでも抗議活動が行われた。

事件から半年後の決定

テイラー氏射殺事件から約半年後。

元ルイビル警察のハンキソンは、事件現場横のアパート住人（男性、妊婦、子供の計3名）を危険にさらした罪で起訴された。なお、ハンキソンはケンタッキー州ルイビル市での事件後、解雇されている。

地元メディアが確認したハンキソン宛の解雇通知書によると、「テイラー氏の部屋で銃弾計10発を盲目的に発砲、警察署のルールに違反した」と書かれていたという。

テイラー氏は元ボーイフレンドの麻薬取引の関係で高圧的な家宅捜索を受け、計6発被弾。うち1発が致命傷となり、死亡した。

ケンタッキー州ACLUの弁護士を務めるヘザー・ガトナレタ氏はABCニュースの取材に対し、以下のように述べた。

ヘザー・ガトナレタ弁護士：
「人々は警察官が殺人罪で起訴されると信じていた」

「今回の起訴内容だと、何の罪も犯していないテイラー氏が突然6発もの銃弾を浴び死亡しているにも関わらず、ハンキソンは近隣住人”だけ”を危険にさらした、ということになる。この凶行がなぜ罪に問われないのか？」

ケンタッキー州のキャメロン検事総長によると、ハンキソンの放った銃弾、計10発はテイラー氏に当たっていなかったという。なお、現場で銃撃戦に参加した2名の現職警官は起訴されていない。

ダニエル・キャメロン検事総長：
「テイラー氏のボーイフレンド、ケネス・ウォーカー氏は、警察官に発砲した。よって、警察側の発砲には正当防衛が適用される」

「大陪審の調査資料は機密情報にあたるため、現地および銃撃戦時の詳細は分からない」とガトナレタ弁護士は述べた。

ハンキソンは今回の起訴、計3件全てで有罪判決を受けた場合、3～15年の禁固刑に処される。

J.デイビッド・ローゼンバーグ法律大学のブランシュ・ボン・クック氏はABCニュースの取材に対し、「検事総長と大陪審は殺人罪として起訴できる十分な証拠を見つけられず、テイラー氏の死を訴える相手はいなくなった」と語った。

連邦捜査局（FBI）は現在、テイラー氏の公民権が侵害されたかどうかを調査している。しかし、これらの種類の請求に対する証明基準を満たすことは難しい、とクック准教授は述べた。

先週、ルイビル市はテイラー氏射殺事件の非を認め､1,200万ドルの和解金を支払っている。

【関連トピック】
・ケンタッキー州当局、殺人罪での起訴を見送ると発表

ルイビル、2人の警察官が何者かに銃撃を受け、負傷