海外メディアと抗議者への圧力
8月29日、ベラルーシ当局は主要海外メディアのジャーナリストに与えていた取材認定を取り消した。
ベラルーシ当局および治安部隊は、「ヨーロッパ最後の独裁者」ことアレクサンドル・ルカシェンコ大統領の辞任を求める抗議者たちに不当な圧力をかけている。
今回、この事実を報道している海外の報道機関のジャーナリストに与えられている取材認定が取り消された。
ベラルーシ外務省は、ロイター、AP、AFP、BBC、ドイツとフランスの公共放送局ARDおよびRFI、米国政府が資金を提供するラジオフリーヨーロッパなど、ほとんどの主要国際報道機関で働いているジャーナリストの認定を取り消した。
一部の報道機関のジャーナリストは、「過激主義の防止」を任務とする委員会から認定取り消し通知(電話)を受けたと述べた。
APジャーナリスト2名とARDの2名(4名ともロシア人)は、8月29日に国外追放された。さらに同社のベラルーシ人プロデューサーが当局に起訴され、31日に法廷審問にかけられる予定である。なお、ARDのチームは宿泊していたホテルで私服警官に拘束された。
ベラルーシ当局は抗議活動が始まる以前から外国人ジャーナリストの入国をあからさまに妨害し、取材認定を数週間遅らせることも珍しくなかった。また、秘かに忍び込もうとしていた数十人のジャーナリストが逮捕、強制送還されたこともある。
認定を剥奪されたジャーナリストの多くが、フルタイムで働く現地記者たちである。この決定により、現地で取材を行うことは当然できなくなり、違反すれば罰金もしくは懲役刑を科させる可能性がある。
ベラルーシのジャーナリスト協会によると、少なくとも17人のジャーナリストの取材認定が取り消されたという。
BBC、APおよびARDは、今回の不当措置に対する非難声明を発表した。
BBCは「ベラルーシ当局による不当なジャーナリズニへの抑圧を非難する。当局にこの決定の取り消しと、ジャーナリストへの不当な圧力を撤回するよう要請する」とコメントした。
ドイツのハイコ・マース外相は記者団に対し、「報道の自由に対する攻撃は、ルカシェンコ大統領の不正に対する抗議活動への取り締まり強化に見える」と語った。
この2日間で、フル武装した治安部隊が抗議活動の取り締まりを再開し、200人以上の抗議者が拘束された。また、27日には40人以上のジャーナリストが抗議活動を取材していたという理由で捕縛、数時間拘束されている。
今週、当局は2人の主要な野党党首を10日間投獄。2人の活動に関わった者を召喚、尋問した。なお、2015年にノーベル文学賞を受賞したスベトラーナ・アレクシエビッチ氏も尋問を受けた。
抗議者たちにかけられている圧力は取り締まりだけではない。
抗議者たちがルカシェンコ大統領を暴力的に排除しようと試みた場合は、ロシアの治安部隊が投入される見込みである。プーチン大統領はその可能性について言及し、「暴力的な排除は許さない」と抗議者、EU、そしてNATOに強烈な圧力をかけた。
少なくとも現時点では「クレムリンはルカシェンコ大統領および政権へのクーデターを許さない」。
【関連トピック】
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首都ミンスクでの集会
報道の自由
首都ミンスクの米国大使館はベラルーシ当局に対し、ジャーナリストへの不当な圧力および暴力をやめるよう要求した。
さらに米国大使館は声明の中で、不当に拘束されたジャーナリストの即時釈放と行方不明者の調査および情報開示を求めた。
米国大使館:
「私たちは民主的で豊かな未来を願うベラルーシ国民の立場に立ち、民主的改革の実施および人権と基本的自由を尊重するよう、ベラルーシ政府に要請する」
「ベラルーシの主権と領土の完全性を達成するためには、自分たちで民主的に指導者を選ばなければならない。他国の介入および不当な圧力は不要である」
8月29日、プーチン大統領はルカシェンコ大統領への「別の支援」を表明した。
ロシア国営テレビのインタビューによると、プーチン大統領は「8月9日に行われた大統領選挙の正当性を認め、投票結果に異議を唱えるヨーロッパ諸国の決定に反対する」と語った。
さらに、ヨーロッパ安全保障協力機構(OSCE)の国際選挙監視員は、「今回の大統領選挙を監視できたのに、しなかった」と主張。
プーチン大統領は記者に対し、「国際選挙監視員は今回の選挙の正当性を認識していた。私は不正はなかったと確信している」と付け加えた。
実態は違う。ルカシェンコ政権によるOSCEへのモニタリング調査依頼は、遅すぎた。結果、不正な投票談合、常軌を逸した詐欺行為が発生し、出口調査の結果とは全く異なる選挙結果が発表されたのである。
メディアへの取り締まりは、30日に首都ミンスクと他の都市で予定されている大規模な抗議活動前に実行された。
先週、先々週の日曜日に行われた抗議活動の参加者は10万人超、今週も同規模になると思われる。
抗議活動は日曜日の大規模な活動で一気に盛り上げり、政権を揺さぶってきた。当局は人の集まりやすい日曜日に活動を強める勢力ヘの取り締まりを強化する狙いがあると思われる。
平日の抗議活動も数千人規模で連日行われている。首都ミンスクの独立広場に集まった人々は、道路沿いに並び旧国旗を振りながら平和的に活動している。
また、数百名規模の団体がヤンカクパラ国立公園アカデミックシアターの外に集まり、平和的な抗議活動を行っている。
23日には約2,000人の女性抗議者が集まり、首都ミンスクの中心部を練り歩いた。参加者の女性はABCの取材に対し、「ベラルーシは私たちの国である。ルカシェンコの不正と詐欺を受け入れることはできない。私たちは選挙結果を覆すことができると信じている」と述べた。
女性抗議者の一団は、広い花と旧国旗を背負い、平和的に行進していた。これに対しフル武装した治安部隊は、女性たちの進路を数回ブロック、攻撃を開始した。
ソーシャルメディアに投降された動画では、ジャーナリストへの攻撃に女性陣が猛抗議し、不当な攻撃と暴力を止めるよう促していた。
抗議活動の初期段階で数千名の女性が拘留された。しかし、彼女たちはソーシャルメディアを駆使し、治安部隊の暴挙を写真や動画で拡散させ、ほとんど抵抗しなかった。結果、治安部隊は「逮捕しにくい」と判断し、対象を男性に変更したのである。
女性たちは「平和的に抗議活動を行っている」という象徴、蜂起の顔になった。
大統領選挙でルカシェンコ大統領と対峙した野党の主要リーダー、スヴャトラーナ・ツィハノウスカヤ氏を含む3人の女性指導者が蜂起の先頭に立ち、奮闘している。
29日の抗議活動では、3人の女性指導者のひとり、マリア・コレスニコワ氏が登場し、抗議者たちから大歓声を受けた。
ルカシェンコ大統領は野党との交渉を拒否し、騒乱の終結を国民に約束した。
先週の日曜日、ルカシェンコ大統領は治安部隊の前でアサルトライフルを振り回し、「抗議者たちはNATOの代わりに働き、クーデターを起こそうとしている」と非難した。
抗議活動