政府は何もしてくれない

8月4日にベイルート港湾エリアで発生した大規模な爆発に伴い、これまでに少なくとも158人が死亡した。

政府の対応に不安を持つ抗議者たちの怒りが街を包み込んでいる。

レバノン政府は怒れる抗議者たちに催涙ガス弾を撃ち込み、これに対抗する男たちが投石で反撃した。

抗議活動は数千人規模に達し、暴力が横行。警察当局は街の安全を確保するために催涙ガス弾を使ったと大慌てで発表、人々の怒りに油を注いだ。

センター街の殉教者広場からは銃声が聞こえたものの、負傷者の有無については不明。

ハッサン・ディアブ首相は国民に向けたテレビ演説を放映、壊滅的危機からの脱却策として、早期選挙を求めると発表した。

ディアブ首相は、「レバノン政府の腐敗、汚職、犯罪行為を改善し国家を立て直すためには、早期選挙を行うしかない」と述べ、8月10日の閣議で議論されることが決まった。

レバノン国民は、「2,750トンの硝酸アンモニウムがなぜ突然爆発したのか?」「なぜ爆発を防ぐことができなかったのか?」「政府は港湾労働者に責任を押し付けている」ことに対し怒っている。

倉庫に保管されていた爆発物の原料は、6年前に外国船舶から差し押さえられたものである。港湾当局は爆発物が危険であることを認識し、早期の撤去を政府および司法に求めたが、却下されていた

レバノン政府は爆発に至った経緯を調査し、関係者をひとり残らず捕縛すると発表した。

港湾エリアで起きた大爆発は都市の入り口を荒廃させ、多くの国民が無能で腐敗しきった政府と保身しか考えていない政治家への不信を深めている。

2019年10月、経済危機と通貨・貨幣システムの崩壊により、反政府抗議活動が勃発した。

5,000人~7,000人ほどの抗議者たちは、壊滅的な被害を受けた港湾エリアの一角から殉教者広場に向けて行進した。

レバノン警察との小競り合いはデモ開始直後に始まった。一部の怒れる抗議者たちが石や棒を投げつけると、警察は催涙ガス弾で応戦。議会周辺にはバリケードが設置され、銃を持った兵士や警察関係者が最悪の事態を想定し、待機していた。

その後、反政府スローガンを唱え、ミシェル・アウン大統領の肖像画を燃やし尽くす過激なグループが外務省に突撃、占拠した。グループのリーダーは全ての省庁を占拠すべきと主張した。

外務省内に入った約100人のデモ参加者たちは、大爆発で自宅を失ったため入場したと主張。他の省庁も占拠し、ひとりでも多くの国民に休める場所を提供すべきだと述べた。

外務省を占拠した参加者のひとりはBBCの取材に対し、「国民には大義がある。レバノン警察は門の外で我々の様子を伺っている。彼らは私たちを止めることができなかった」と語った。

レバノン警察はロイター通信に対し、センター街付近で実弾が使用されたことを認めた。なお、誰が発砲したかは分かっていない。

地元メディアは、デモ中に110人が負傷し、30人ほどが赤十字病院に運ばれたと発表した。

デモ活動の中心地になった殉教者広場では、政府および腐敗しきった政治家への怒りと不満をぶつける演説が行われた。

最新の調査によると、今回の大爆発で死亡が確認された者は158人、負傷者は約6,000人。ビル、建物、車両、飲食店、住居、ありとあらゆるものが破壊され、約30万人がホームレスになった

抗議者と警察が衝突

ベイルート:怒れる抗議者たち

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支援

世界各国のリーダーたちは、フランスのエマニュエル・マクロン大統領が主催する緊急支援サミット(8月9日)に参加する予定である。

大爆発の余波が残る現地を視察したマクロン大統領の周囲には、外部からの介入を歓迎する人々が殺到した。

レバノン政府および政治家たちは爆発現場に一切足を運んでおらず、「海外の指導者が先に現地視察・調査を行う」という奇妙な現象が発生した。

フランスは、国債債務不履行に陥ったレバノンと緊密な経済関係を結んでいる。しかし、救済策を講じる国際金融機関との改革プログラムに合意することはできていなかった。

アメリアのトランプ大統領も緊急支援サミットに参加することを表明している。

8月7日、国連機関はレバノンでの人道危機について警告。港湾エリアが破壊されたことによる食糧不足、コロナウイルス感染予防を継続できない可能性について言及した。

世界各国が既に援助を提供しており、アメリカは1,500万ドル(約16億円)相当の食料および医薬品を送ると発表した。また、イギリス政府は500万ポンド(約7億円)の緊急パッケージをリリースし、レバノンに海軍船を送った。

ダウニング街の広報担当によると、ボリス・ジョンソン首相は8月8日にミシェル・アウン大統領と電話会談し、哀悼の意を伝えたという。

シリア大使館は、大爆発により43人のシリア人が死亡したと発表。一部は港湾労働者だった。

レバノンは、紛争の続くシリアから100万人以上のシリア人移民を受け入れている。

アウン大統領とハッサン・ディアブ首相は、農業用肥料として広く利用されている硝酸アンモニウム2,750トンが港湾エリアの倉庫に安全対策なしで保管されていたことを認めている

爆発物を安全対策なしで街の中心近くに保管する、という決定を下した政府に対し、国民は不信感を抱いた。

アウン大統領は調査の透明性を何より重視すると発表。しかし、国連の調査要求は却下した

現時点で港湾関係者21名が逮捕されている。なお、その中にはレバノン税関当局局長を務めるバドリ・ダーハー氏も含まれている。

政府および腐敗しきった政治家たちは、事態の終息を目指し、スケープゴートを探している

元イギリス軍の爆発処理専門家は、今回の大爆発をTNT火薬1~2キロトンと推定した。

なお、広島に投下された原子爆弾の威力は12~15キロトン、ベイルートを破壊した一撃はそれの10分の1に達したと見積もられている。

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