東京パラリンピックでの活躍が期待される日本人選手を紹介する。なお、個人的な主観で選んでいることをご理解いただきたい。2020年東京大会開幕まであと半年を切った。日本代表選手は続々決まりつつあり、今なお激しい代表権争いが繰り広げられている。今回は陸上他11競技の注目選手を紹介しよう。
※2020年3月25日、東京オリンピックおよびパラリンピックの1年延期が決定!
目次
1.陸上競技
男子:佐藤 友祈
女子:道下 美里
女子:高田 千明
2.アーチェリー
男子:仲 喜嗣
女子:重定 知佳
3.バドミントン
女子:山崎 悠麻
女子:豊田 まみ子
4.ボッチャ
男子:廣瀬 隆喜
女子:藤井 友里子
5.カヌー
男子:辰己 博実
女子:瀬立 モニカ
6.自転車競技
男子:藤田 征樹
女子:杉浦 佳子
7.馬術
男子:稲葉 将
女子:鎮守 美奈
8.5人制サッカー
日本代表
9.ゴールボール
男子日本代表
女子日本代表
10.柔道
男子:正木 健人
女子:広瀬 順子
11.パワーリフティング
男子:西崎 哲男
女子:山本 恵理
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パラリンピック『陸上競技』の歴代メダリスト(抜粋)は以下の通りである。
大会名 | 選手名 | 競技種別 | メダル |
2016年リオ | 道下 美里 | 女子マラソン T11/12 | 銀 |
2016年リオ | 佐藤 友祈 | 男子1500m T51/52 | 銀 |
2016年リオ | 辻 沙絵 | 女子400m T45/46/47 | 銅 |
2016年リオ | 岡村 正広 | 男子マラソン T11/12 | 銅 |
パラリンピックはオリンピックと同年に開催される身体障がい者を対象とした大会である。1960年ローマ大会後に第1回パラリンピックが実施、以降、競技の追加や見直し等を経て現在に至る。
オリンピックとの大きな違いは、障がいの種類(身体障がい、視覚障がい、知的障がいなど)によって種目ごとにクラス分けされている点であろう。各種目のルールも異るため、観戦前にチェックすることをおすすめしたい。
陸上競技はトラック、フィールド、ロード(マラソン)に分類される。なお、パラアスリートたちの使用する義手や義足の性能は年々向上しており、オリンピック/世界記録を超える種目も複数存在する。
【種目※障がいの種類によるクラス分けあり】
トラック
・100m(男子/女子)
・200m(男子/女子)
・400m(男子/女子)
・800m(男子/女子)
・1500m(男子/女子)
・5000m(男子/女子)
・4×100mメドレーリレー(混合)
フィールド
・走幅跳(男子/女子)
・こん棒投(男子/女子)
・円盤投(男子/女子)
・やり投(男子/女子)
・砲丸投(男子/女子)
ロード
・マラソン(男子/女子)
佐藤 友祈
パラ陸上日本代表は、パラリンピックや世界選手権などで数えきれないほどのメダルを獲得している。世界の強豪国と互角以上に戦える大きな要因は、選手たちの「絶え間ない努力」、そして選手を支えるスポーツ用補装具の性能向上にある。『佐藤 友祈』は2016年リオ大会で銀メダルを獲得したパラ陸上日本代表選手である。2019年の世界選手権では男子400m、1500mを制した。男子400mについては、前々回大会から3連覇中、2016年リオ大会の金メダリストを破る圧倒的な強さを見せた。
佐藤は高校卒業後に脊椎炎を患い、下肢と左腕が不自由になった。パラ陸上を始めたのは2012年以降、競技を始めてから数年で世界のトップに肩を並べ、今では押しも押されぬ日本代表のエースである。同選手の好きな言葉は「根拠のない自信」だという。好きなこと、やりたいことがあれば、失敗を恐れず、ただひたすら努力する。2019年の世界選手権を制したことで、佐藤は東京大会への出場権を得た。次の目標はパラリンピックでの金メダル獲得と出場種目全てで世界記録の更新することだ。
<まとめ>
◎2019年世界選手権王者。東京大会パラ陸上日本代表内定済みである。
◎どん底に落ちても諦めずに努力を続けた。東京大会の目標は金、世界記録の更新。
選手名 | 佐藤 友祈(さとう ともき) |
出場競技/種目 | 400m他 |
パラリンピック出場実績 | 2016年リオ/400m銀メダル 2016年リオ/1500m銀メダル |
主な戦績 | 2019年世界選手権/金メダル他 |
外部サイトへのリンク
<グロップサンセリテ パラ陸上部 公式ホームページ>
ドーン!!!
— 佐藤 友祈(Tomoki,S) (@wcr_nico) December 25, 2019
明日発売の雑誌 numberにて#稲垣吾郎 さんと対談をさせていただきました。
是非手に取ってみてください!
東京パラリンピックを盛り上げていくということで、#ドーン を使っていきましょうってことになりました😊
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道下 美里
『道下 美里』は2019年4月に開催されたロンドンマラソンを3連覇し、パラ女子マラソンの日本代表に内定した。2016年リオ大会でも同種目で銀メダルを獲得、彼女の持つ自己ベスト「2時間56分14秒」は、全盲女子選手の世界記録である。道下は中学生の頃に難病で右目を失明、社会人になってから左目の視力も失った。なお、全盲の選手は伴走者/パートナーと一緒に走る。道下の伴走を務めるのは、三井住友海上陸上部出身の「河口 恵」である。
全盲のランナーは、トレーニングを行う際も伴走者の力を借りなければならない。道下は市民ランナーの力も借りながら、1週間のトレーニングを行っているという。伴走者を日替わりで色んな方にお願いし、競技を継続しているのだ。東京大会の目標は、2016年リオ大会のリベンジと自身の持つ世界記録の更新、そして力を貸してくれる方々に恩返しすることだという。40歳を超えても全く衰えぬ精神力と胆力には恐れ入る。パラ女子マラソンで金メダルを獲得すれば、2004年アテネ大会の「畑中 和(女子車いすマラソン)」以来、16年振りの快挙だ。道下と河合の活躍に期待したい。
<まとめ>
◎2019年ロンドンマラソン視覚障害の部を3連覇。東京大会、女子パラ日本代表内定済み。
◎東京大会の目標は金メダルと自身の持つ世界記録の更新。
選手名 | 道下 美里(みちした みさと) |
出場競技/種目 | マラソン |
パラリンピック出場実績 | 2016年リオ/銀メダル |
主な戦績 | 2019年ロンドンマラソン優勝他 |
外部サイトへのリンク
<三井住友海上 公式ホームページ>
高田 千明
『高田 千明』は全盲の短距離ランナーとして2016年リオ大会(走幅跳)に出場、2019年開催の世界選手権で結果を残し、東京大会日本代表に内定した。同選手は子持ちの母親でもあり、血のにじむような努力を積み重ねてきたことは説明するまでもない。なお、夫の「高田 裕士」は、聴覚に障害を持つパラアスリートで、デフリンピック(聴覚障がい者のスポーツ競技会、4年に1度開催)400mハードルの日本代表に選ばれるほどの実力者である。
子育てと競技を両立させ、かつ世界トップレベルの実力を維持するには、恐ろしい量のエネルギーを必要とする。高田は夫婦で協力し、パラ陸上を続けてきた。陸上のトラック/フィールド競技は、アメリカ、そしてヨーロッパ勢が強い。しかし、同選手は世界選手権でのメダル獲得実績もあり、世界と互角に戦えることを証明してきた。
走幅跳で女子日本代表が金メダルを獲得したのは、1984年ニューヨーク大会の「小林 敏子」が最後である。36年振りのメダル獲得、そしてママさんランナーの大活躍に期待したい。なお、高田の目標は子供の首に金メダルをかけることである。
<まとめ>
◎高田は全盲のママさんランナー。2019年の世界選手権で結果を残し、東京大会内定済み。
◎目標は子供の首に金メダルをかけること。
選手名 | 高田 千明(たかだ ちあき) |
出場競技/種目 | 走幅跳 |
パラリンピック出場実績 | 2016年リオ/走幅跳8位 |
主な戦績 | 2017年世界選手権/銀メダル他 |
外部サイトへのリンク
<東京2020パラリンピック 公式ホームページ>
ブログを更新しました。
— 髙田 千明 Chiaki Takada 高田 千明 (@chiakingt) December 27, 2018
【OTAふれあいフェスタ2018】https://t.co/Alm7hV47JZ
出身地・東京都大田区のイベント「OTAふれあいフェスタ2018」で、タレントの照英さんとパラリンピアントークショーと、伴走体験会を行いました。#照英 #高田千明 #高田裕士 #大田区 @city_ota @hanepyon_ota @yjtakada pic.twitter.com/cHTvqcjcu5
アーチェリー(目次に戻る
パラリンピック『アーチェリー』の歴代メダリスト(抜粋)は以下の通りである。
大会名 | 選手名 | 競技種別 | メダル |
2008年北京 | 神谷 千恵子 | 女子個人コンパウンドオープン | 銀 |
2004年アテネ | 磯崎直美 | 女子個人W1/2 | 銀 |
2004年アテネ | 南 浩一 佐古田 伸治 小野寺 公正 | 男子団体オープン | 銀 |
2004年アテネ | 平澤 奈古 | 女子個人 W1/2 | 銅 |
パラアーチェリーは、一般的な「リカーブ」と、弓の先端に滑車のついた「コンパウンド」の2種目でメダルを争う。障がいの種類によっては補助器具を使用することが許可されており、パラアスリートたちの弓を引く方法は一人一人異なる。50mまたは70m先の的を正確に射抜くうえで重要なことは、精神力/メンタルのみ。同競技に出場する精鋭たちは、足、口、アゴなどを駆使し、全神経を集中して矢を放つことができるため、オリンピック選手以上の精度/成績を残すことも多い。
【種目】
・個人 W1(男子/女子)
・個人 コンパウンドオープン(男子/女子)
・個人 リカーブオープン(男子/女子)
・チーム W1(混合)
・チーム コンパウンドオープン(混合)
・チーム リカーブオープン(混合)
仲 喜嗣
日本代表はパラアーチェリーで数えきれないほどメダルを獲得しており、東京大会では1996年アトランタ大会以来の金メダルを期待されている。ここで紹介する『仲 喜嗣』は、40代からパラアーチェリーを始め、2019年の世界選手権で結果を残し、日本代表に内定した。同選手は、30代の頃に難病を発症し全身の筋力が低下、同競技を行う際は専用の治具を使い弓を引いている。しかし、アーチェリーに必要とされる「精神力」「集中力」は50代になっても全く衰えず、年を追うごとに増した。
仲は奥さんのサポートを受けながら競技を行っている。弓を引く/放つ動作は一人で行うが、横には常に妻がおり、その姿を見守っているのだ。同選手は東京大会の一カ月前に60歳(還暦)を迎える。60代のメダリストが誕生すれば日本史上初の快挙、世界でも数例しか実績のない大記録である。
パラアーチェリーは真夏に行われるため、体温調整が上手くできない仲にとっては試練の一戦になるだろう。しかし、夫婦二人で歩んできた競技人生、そしてこれまでの努力はきっと報われる。奥さんとアーチェリーを愛する60歳のパラアスリートは、ベストコンディションで東京大会に臨むべく、準備を進めている。
<まとめ>
◎還暦で迎える東京大会。60代でメダルを獲得すれば、日本史上初の快挙。
◎東京の夏は暑い。仲にとっては試練の戦いになるが、暑さを吹き飛ばす奮闘に期待。
選手名 | 仲 喜嗣(なか よしつぐ) |
出場競技/種目 | 個人W1 |
パラリンピック出場実績 | なし |
主な戦績 | 2019年世界選手権/3位 |
外部サイトへのリンク
<パラサポWEB 公式ホームページ>
重定 知佳
パラアーチェリーの競技レベル、そして選手が扱う弓(リカーブ、コンパウンドなど)、補助器具の性能は年々向上しており、世界のトップレベルになると、オリンピック選手と変わらない正確さで的を射抜く。そして、日本人選手もその流れに取り残されず、世界の頂点を虎視眈々と狙っている。『重定 知佳』は競技歴2年で国内ランキング1位に躍進、国際大会でも結果を残し、2019年の世界選手権を経て東京大会パラアーチェリー日本代表に内定した。
重定は中学時代に下肢がマヒをする難病を発症、車椅子が必要な身体になった。社会人になってから車椅子テニスに出会い、国内ランキングで上位につけるも引退。個人で行える競技を探していた時に出会ったのがパラアーチェリーだった。同競技で活躍し、東京大会への出場権も得ている「上山 友裕」の活躍に刺激を受け、僅か数年で世界のトップと渡り合えるレベルに急成長した。なお、上山とは2018年アジア選手権の「ミックス」でペアを組み、見事銀メダルを獲得。東京大会では前述の「仲 喜嗣」と同じく、1996年アトランタ大会以来の金メダルを目指す。
<まとめ>
◎競技歴2年で国内ランキング1位に躍進。東京大会日本代表内定済み。
◎パラアーチェリーの金メダル獲得は、1996アトランタ大会が最後。24年振りの偉業に期待したい。
選手名 | 重定 知佳(しげさだ ちか) |
出場競技/種目 | 個人リカーブオープン |
パラリンピック出場実績 | なし |
主な戦績 | 2018年アジア選手権/銀メダル |
外部サイトへのリンク
<パラサポWEB 公式ホームページ>
バドミントン(目次に戻る
パラ『バドミントン』の戦績(抜粋)は以下の通りである。
大会名 | 選手名 | 競技種別 | メダル |
2018年国際大会 | 山崎 悠麻 | 女子個人WH2 複合WH2 混合複WH2 | 3冠 |
2018年国際大会 | 藤原 大輔 | 男子個人SL3 | 銀 |
2018年国際大会 | 今井 大湧 | 男子個人SU5 | 金 |
2018年国際大会 | 鈴木 亜弥子 | 女子個人SU5 | 金 |
パラバドミントンは2020年東京大会から採用される新競技である。なお、競技自体は以前から行われており、近年のバドミントン人気を受け、競技人口は年々増加している。出場選手たちは障がいの種類でクラス分けされ、ルールは種目によって異なる。
障がいを持つ前からバドミントンを行っていたパラアスリートは、オリンピック選手に引けを取らない動きを披露し、メダル争いはハイレベルな争いになることが予想される。同競技で上位進出を狙うには、対戦選手の動き/配球を読む力が重要だ。体力、経験、勘、メンタルがバランスよく要求される点に注目してほしい。
【種目※障がいの種類によるクラス分けあり】
・シングルス(男子/女子)
・ダブルス(男子/女子)
山崎 悠麻
パラバドミントンは東京大会から採用される新競技である。障がいの種類によって種目が分けられており、『山崎 悠麻』は車椅子に乗った状態で競技を行う。バドミントンは動きの激しいスポーツであり、それは車椅子になっても全く変わらない。一部ルールが異なる部分はあるものの、オリンピック選手と変わらないラリーは見ごたえ十分である。なお、山崎は中学校までバドミントン部に所属し、高校時代に交通事故を経験、車椅子が必要な身体になった。
山崎は二人の息子を育てるママさんパラアスリートであり、さらに在宅勤務(NTT勤務)で仕事をこなすキャリアウーマンでもある。パラバドミントンと子育て、仕事を同時にこなす、すなわち「三足の草鞋」を履いているのだ。同選手は「母は強し」を地で行くタフな女性であり、記念すべき東京大会でのメダル獲得も期待されている。なお、パラバドミントン日本代表が内定するのは2020年2月以降、同年の国際大会等で結果を出した選手が選出される予定だ。三足の草鞋を履く屈強なメンタルと胆力で代表の座を勝ち取っり、日本に金メダルをもたらしてほしい。
<まとめ>
◎山崎はママさんパラアスリート兼キャリアウーマン。三足の草鞋を履いている。
◎同競技の強豪国は中国。記念すべき東京大会でのメダル獲得に期待。
選手名 | 山崎 悠麻(やまざき ゆま) |
出場競技/種目 | WH2(車椅子ダブルス) |
パラリンピック出場実績 | なし |
主な戦績 | 2019年アイルランド国際 シングルス/2位 ダブルス/1位 |
外部サイトへのリンク
<NTT2020HEROES 公式ホームページ>
豊田 まみ子
『豊田 まみ子』は、2013年の世界選手権で金メダル、以降の大会でも複数個のメダルを獲得しているパラバドミントンの日本代表候補である。左肘から先が生まれた時からなく、バドミントンを始めたのは小学生から。前述の世界選手権で優勝した時は、まだ高校生だった。その後も様々な大会に出場し、2015年の世界選手権では銀メダルを獲得。強敵と出会い、そして敗れることで、豊田はさらに練習を重ね成長した。
2018年9月、同選手は練習中に右太ももの筋肉を断裂、選手生命を左右する大けが(全治半年)を負った。東京大会開幕まで2年を切っており、ブランク等を考えると出場は難しいと思われた。しかし、2019年3月には国際大会に復帰、結果は伴わなかったが、復帰できたことが何より大きな収穫だった。
豊田も他のパラアスリートと同じく、逆境/壁にぶつかるほど強くなるタイプの選手である。失敗を恐れない、失敗して負傷したとしても必ず立ち上がる、絶対に諦めない選手は結果が出なくても次の戦い/大会に狙いを定めるのだ。豊田のような選手はケガすらチャンスに変えてしまう。まずは東京大会の出場権獲得、そしてその上を目指してほしい。
<まとめ>
◎2013年の世界選手権で金メダルを獲得。その後も国際大会等で結果を残した。
◎全治半年の大ケガを負ったが、2019年3月に復帰。東京大会でのメダル獲得を目指す。
選手名 | 豊田 まみ子(とよだ まみこ) |
出場競技/種目 | SU5(上肢障害) |
パラリンピック出場実績 | なし |
主な戦績 | 2013年世界選手権/金メダル |
外部サイトへのリンク
<ヨネックス 公式ホームページ>
久しぶりの決勝進出!🇩🇰
— 豊田まみ子/Mamiko Toyoda (@tmymdk) October 19, 2019
明日は楽しくっ!挑戦!!!
I'll do my best 💪💪💪 pic.twitter.com/9A0RC2BaA1
ボッチャ(目次に戻る
『ボッチャ』の戦績(抜粋)は以下の通りである。
大会名 | 選手名 | 競技種別 | メダル |
2016年リオ | 火の玉ジャパン | 団体混合 BC1-2 | 銀 |
2018世界選手権 | 火の玉ジャパン | 団体混合 BC1-2 | 銀 |
2018世界選手権 | 杉村 英孝 | 個人混合 BC2 | 銅 |
ボッチャは1対1の個人戦、ペア、団体で争われる。そのルールは、競技スペース内に投げられた白色の「ジャックボール」目掛けて交互に6球ボールを転がし、ジャックボールの周りにより多くの玉を設置/配置できた方が勝者となる。
冬季オリンピックで行われる「カーリング」によく似ているものの、目標のジャックボールは球をぶつけて動かすことができるため、対戦相手の狙いを読み、かつ正確に狙いを定めなければならない。なお、同競技のボールは皮革もしくは合皮製で、とても柔らかい。真っすぐ転がしたつもりでも、表面の細かな突起や力の入れ具合で軌道が変わるため、狙ったポイントに玉を転がすにはかなりの訓練が必要である。
【種目※障がいの種類によるクラス分けあり】
・個人(混合)
・ペア(混合)
・団体(混合)
廣瀬 隆喜
ボッチャはカーリングとルールが似ている。しかし、的となる白い「ジャックボール」は、玉をぶつけて動かすことができるため、対戦相手の狙いを読み、その上をいかなければ勝つことはできない。『廣瀬 隆喜』は2016年リオ大会に出場、団体の銀メダル獲得に大きく貢献したボッチャ日本代表のエースだ。2019年の日本選手権では、ライバル兼日本団体のチームメート「杉村 英孝」を決勝で下し見事優勝、東京大会日本代表に内定した。
ボッチャの強豪国はイギリスなどのヨーロッパ勢である。また、2016年リオ大会では「タイ」が金メダルを獲得し、強豪国の仲間入りを果たした。同競技に必勝法は存在せず、玉を正確に投げる/転がせても勝利することはできない。世界の頂点/金メダルを獲得するためには、「集中力」「冷静さ」「最後まで勝負を諦めない強い心」が必要だ。対戦相手が狙うであろうコースを塞ぎつつ、渾身の1投で勝利をたぐり寄せてほしい。狙うはボッチャ日本代表(火の玉ジャパン)初となるオリンピックの金メダル、そして個人と団体の2冠。廣瀬と火の玉ジャパンの活躍、そして観る者を熱くさせる熱戦に期待。
<まとめ>
◎2016年リオ大会団体で銀メダルを獲得。廣瀬は日本代表のエースとして活躍。
◎東京大会の目標は、個人と団体の2冠。渾身の1投で勝利をたぐり寄せる。
選手名 | 廣瀬 隆喜(ひろせ たかゆき) |
出場競技/種目 | ボッチャ個人/団体 |
パラリンピック出場実績 | 2016年リオ/銀メダル |
主な戦績 | 日本選手権優勝8回など |
外部サイトへのリンク
<パラサポWEB 公式ホームページ>
藤井 友里子
ボッチャの競技人口/選手のレベルは右肩上がりで、日本代表(火の玉ジャパン)を巡る争いは年々激しさを増している。東京大会への派遣人数は開催国枠、個人、ペア、団体を含めて10名。『藤井 友里子』2016年リオ大会団体メンバーの一人である。生後に患った脳性麻痺の影響で手足に重度の障害を抱えているものの、同競技での活躍は目を見張るものがあり、日本選手権4連覇、国際大会でも結果を残し続けている。
2019年12月の日本選手権、藤井は決勝戦で敗れ、東京大会内定は2020年に持ち越された。若手の成長株たちがメキメキと実力をつけており、実績のある選手でも勝ち続けるのは非常に難しいようだ。全体のレベルが底上げされれば、メダルを獲得する可能性は高くなるだろう。藤井のようなベテラン選手は、チームをまとめるうえで欠かせない存在である。まずは日本代表に選出されること、そして火の玉ジャパンをワンチームにし、仲間と共に頂点を目指してほしい。なお、同選手はフルタイムで働く「ママさんパラアスリート」でもある。
<まとめ>
◎ボッチャの国内競技人口は右肩上がり。日本代表争いも年々激しさを増している。
◎藤井のようなベテラン選手は、チームをまとめるうえで欠かせない存在。
選手名 | 藤井 友里子(ふじい ゆりこ) |
出場競技/種目 | ボッチャ個人/団体 |
パラリンピック出場実績 | 2012年ロンドン/7位 2016年リオ/銀メダル |
主な戦績 | 日本選手権4連覇など |
外部サイトへのリンク
<ボッチャファン 公式ホームページ>
カヌー(目次に戻る
パラ『カヌー』の戦績は以下の通りである。
大会名 | 選手名 | 競技種別 | メダル |
2019年世界選手権 | 瀬⽴ モニカ | VL1⼥⼦ | 金 |
2019年世界選手権 | ⾼久 瞳 | K-1⼥⼦ | 金 |
パラカヌーは2016年リオ大会から採用された競技である。基本的なルールはオリンピックで行われる同競技と変わらない。下肢に障がいを持つ選手でも、上半身の筋肉とバランス感覚を鍛えれば、健常者以上の成績を残すことも可能だ。
2020年東京大会では、「カヤック」と新種目「ヴァー」が実施される。ヴァーは専用の浮き具が付いたカヌ~に乗り、艇の片側にだけついたパドル(水かき)を漕いで進み着順を争うものだ。パラカヌーに必要とされるものは「体力」「バランス感覚」「チームワーク」、そして川/コースの流れを読む「経験」と「判断力」である。
【種目】
・KL1(男子/女子)
・KL2(男子/女子)
・KL3(男子/女子)
・VL2(男子/女子)
・VL3(男子)
辰己 博実
オリンピックのカヌー競技で日本代表が獲得したメダルは1個。パラリンピックでの獲得実績はまだない。海外勢の競技レベルが高く、日本は中々結果を残せずにいたのだ。しかし、国際大会等で経験を積み、世界との実力差は少しづつ縮まっている。ここで紹介する『辰己 博実』は、パラカヌー男子の日本代表候補だ。障がいを負う前はアウトドアガイドとして活動、スノーボード中に脊椎を損傷し車椅子が必要な身体になった。同選手のモットーは「やりたいことはやる!」、パラカヌーだけでなくスノーボードやサーフィンなども行うパラアスリートである。
パラカヌーの東京大会出場選手/出場権が確定するのは、2020年2月以降である。なお、「日本障害者カヌー協会」の強化指定選手に指名されている選手は辰巳を含めて3名、同選手は日本代表にも選ばれている。2020年に開催されるW杯で結果を残した上位選手が東京大会への出場権を得るため、負けられない戦いがしばらく続くようだ。
パラカヌーはオリンピックのカヌー競技とは違い、川ではなく海(直線コース)で争われる。ライディングテクニックも重要だが、「体力」「腕力」に勝る海外勢と勝負するには、「気力」と「ド根性」で立ち向かうしかない。パラカヌー初のメダル獲得を目指し、辰巳は現在も厳しいトレーニングを継続している。
<まとめ>
◎パラカヌーでメダルを獲得すれば日本史上初。世界の壁をぶち破ってほしい。
◎2020年W杯(ドイツ)で東京大会の出場選手/出場権が確定する。
選手名 | 辰己 博実(たつみ ひろみ) |
出場競技/種目 | KL3 |
パラリンピック出場実績 | なし |
主な戦績 | 2019年W杯/2位他 |
外部サイトへのリンク
<日本障害者カヌー協会 公式ホームページ>
瀬立 モニカ
『瀬立 モニカ』は日本パラカヌーの未来を担うエースである。19歳で出場した2016年リオ大会では8位入賞、2019年の世界選手権で東京大会の出場権を獲得、日本代表に内定した。同選手は高校時代に負ったケガで下肢と体幹機能に障がいが残り、車椅子が必要な身体になった。元々自分の足で歩いていた女子高生が受けた苦しみは想像に難くない。しかし、パラカヌーとの出会いが瀬立の運命を大きく変える。持ち前の明るい性格、そして努力を惜しまない性格も競技に良い影響を与えた。
競技歴3年で世界のトップと肩を並べ、その後も日本選手権や世界選手権で結果を残した。なお、2019年の世界選手権で優勝した「VL1」は東京大会の実施種目から外れているため、「KL1」で勝負を挑むことになる。瀬立と同じ障がいを持つ海外の選手たちも、皆努力を惜しまず、苦しい練習に取り組む猛者ばかりだ。また、出場選手のレベルが拮抗しているため、何が勝敗を左右するか分からない。
東京大会パラカヌーの競技会場は、都心に新設された「海の森水上競技場」、猛烈な暑さの中でのレースは、体力を激しく消耗するはずだ。瀬立には「地の利」という大きなアドバンテージがある。まずは予選突破、決勝に勝ちあがれば、メダルは目の前である。
<まとめ>
◎競技歴3年でリオ大会に出場、世界と互角に戦えることを証明した。
◎海外の選手たちは猛者ばかり。まずは予選突破、目の前の1戦に集中してほしい。
選手名 | 瀬立 モニカ(せりゅう もにか) |
出場競技/種目 | KL1、VL2 |
パラリンピック出場実績 | 2016年リオ/8位 |
主な戦績 | 2019年世界選手権/5位(KL1) 2019年世界選手権/優勝(VL1) |
外部サイトへのリンク
<瀬立モニカ オフィシャルサイト>
自転車競技(目次に戻る
パラリンピック『自転車競技』の歴代メダリスト(抜粋)は以下の通りである。
大会名 | 選手名 | 競技種別 | メダル |
2016年リオ | 藤田 征樹 | ロード男子タイムトライアルC3 | 銀 |
2016年リオ | 鹿沼 由理恵 田中 まい | ロード女子タイムトライアルB | 銀 |
2012年ロンドン | 藤田 征樹 | ロード男子タイムトライアルC3 | 銅 |
2008年北京 | 石井 雅史 | 男子1kmタイムトライアルCP4 | 金 |
パラサイクリングは、すり鉢状のコースを走り順位を競う「トラック」と、公道を走る「ロード」の二つに分類される。競技用の自転車には標準的な二輪、三輪、上腕を使って車輪を回すハンドバイクなどがあり、障がいの種類/種目によって使用できる自転車は異なる。
同競技を勝ち抜くには「体力」と「精神力」、さらに視覚障害用の二人乗り自転車(タンデムバイク)では「チームワーク」も非常に重要だ。声を掛け合いながらコースを進むことはもちろん、ペダルを濃く歩調も合わせなければ、車輪に効率よく力が加わらない。日本代表選手は、2008年北京大会以来の金メダルを狙う。
【種目※障がいの種類によるクラス分けあり】
トラック
・1kmタイムトライアル(男子)
・500mタイムトライアル(女子)
・チームスプリント(混合)
・パシュート(男子/女子)
ロード
・ロードレース(男子/女子)
・タイムトライアル(男子/女子)
・チームリレー(混合)
藤田 征樹
『藤田 征樹』は日本パラサイクリング(ロード)の大エースである。2008年北京大会では銀メダルを2つ、2012年ロンドン大会は銅メダル2つ、そして2016年リオ大会で銀メダルを獲得した。なお、両足義足の選手がパラリンピックでメダルを獲得したのは、日本史上初の快挙だった。同選手は自動車事故に巻き込まれ、両足切断の大ケガを負った。しかし、義足になって以降も、元々行っていたトライアスロンを継続、その後、自転車競技に特化して取り組むようになった。
パラサイクリングの競技人口は年々増加傾向にあり、競技レベルもそれに伴い上昇している。若く強い選手が次々に現れるため、その中で勝ち残る/生き残るのは至難の業だ。しかし、藤田は持ち前の向上心で毎年成長を重ね、国際大会でも結果を残し続けてきた。同競技でメダルを獲得するには誰にも負けない体力と気力、そして、「ライバル選手たちの動き(調子、スパートのタイミング、得意競技など)を読む力」が必要不可欠である。両足義足の選手がパラリンピック金メダルを獲得すれば、日本史上初の快挙、同じ障がいを持つ方たちの希望の星になるだろう。
<まとめ>
◎東京大会の目標は金メダル。両足義足の選手が獲得すれば、日本史上初の快挙。
◎同競技で金メダルを獲るためには、体力、気力、そしてライバルの動きを読む力が必要。
選手名 | 藤田 征樹(ふじた まさき) |
出場競技/種目 | ロードレース他 |
パラリンピック出場実績 | 2008年北京/銀メダル2つ 2012年ロンドン/銅メダル2つ 2016年リオ/銀メダル |
主な戦績 | 2009年世界選手権/金メダル |
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<パラサポWEB 公式ホームページ>
杉浦 佳子
日本の女子パラサイクリング選手は、国際大会、世界選手権等で素晴らしい結果を残している。ここで紹介する『杉浦 佳子』もその一人で、2017年と2018年の世界選手権、四肢障がいC3のクラスを連覇、2019年は準優勝という戦績を誇る。同選手は2016年に参加したロードレースの大会で落車、生死の境をさまよう大ケガを負う。一命は取り留めたものの、ケガの影響で「高次性機能障がい」と右半身に麻痺が残った。しかし、翌2017年にはパラサイクリング競技を開始し、世界選手権優勝という離れ業を成し遂げた。
2018年、杉浦は「国際自転車競技連合(UCI)」主催の年間表彰、「パラサイクリング賞」を受賞。日本人選手が同賞を受賞したのは初めてだった。杉浦は現在49歳、若い選手たちの中で結果を出し続けることが大変なのは言うまでもない。
東京パラリンピック自転車競技の出場枠は、世界ランキングポイントによって付与される数が変動する。日本は現在2枠確保しているものの、杉浦達の活躍次第でさらに枠が増える可能性もある。2020年、パラサイクリング競技歴4年の杉浦は、金メダルを目指してペダルをこぎ続ける。
<まとめ>
◎杉浦は女子パラサイクリング日本代表の筆頭候補。
◎パラサイクリングを始めた2017年に世界選手権制覇。実績/実力ともにピカ一である。
選手名 | 杉浦 佳子(すぎうら けいこ) |
出場競技/種目 | ロードレース他 |
パラリンピック出場実績 | なし |
主な戦績 | 2017年世界選手権/金メダルなど |
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<パラサポWEB 公式ホームページ>
馬術(目次に戻る
パラ『馬術』の戦績(抜粋)は以下の通りである。
大会名 | 選手名 | 競技種別 | メダル |
2018年世界選手権 | 中村 公子 | 自由演技課目 グレード5混合 | 銅 |
馬術はヨーロッパで盛んに行われている人気競技だ。その中でもイギリスが抜きんでて強く、パラリンピックでも圧倒的なメダル獲得数を誇る。同競技は障がいのランクで種目分けされており、馬をコントロールするための補助器具の使用も認められている。愛馬とのチームワークはもちろん、的確に指示を与えられなければ、メダルの獲得は難しいだろう。
なお、パラ馬術では技の正確さや美しさを競う「馬場馬術」のみが実施される。将来補助器具等の改良が進み、騎手の負担を抑える、安全を守る技術が確立されれば、「障害飛越」でメダルを争う日がくるかもしれない。
【種目】
個人
・グレード1(混合)
・グレード2(混合)
・グレード3(混合)
・グレード4(混合)
・グレード5(混合)
団体
・団体課目(混合)
自由演技
・グレード1(混合)
・グレード2(混合)
・グレード3(混合)
・グレード4(混合)
・グレード5(混合)
稲葉 将
パラ馬術の日本代表枠は4人。代表を決める最終選考会は2020年春に実施される。また、東京大会から出場要件が「選手(人)」から「選手と馬」に変更された。要件を満たした選手と馬が東京パラリンピックにエントリーされる、すなわち大会前に馬を変更することができなくなったのだ。
2019年10月に開催された東京大会の選考会、代表候補のひとりである『稲葉 将』と愛馬の「ピエノ」は見事総合優勝を果たした。
稲葉が騎乗する馬は前述のピエノと「カサノバ」の二頭、東京大会へは後者で出場する予定だという。なお、同選手は東京大会の出場権をほぼ手中に収めており、あとは2020年春の大会でカサノバと一緒に結果を残せば、一つ目の目標はクリアとなる。
パラ馬術の魅力は、人馬が一体(パートナー)となって競技に臨むところである。稲葉は先天性の病が原因で、生まれつき下肢が動かない。しかし、愛馬がそれをサポートし、パラリンピックという素晴らしい舞台に挑戦しようとしている。「二人」はお互いの力を結集し、日本パラ馬術史上初のメダル獲得を狙う。
<まとめ>
◎パラ馬術でメダルを獲得すれば日本史上初の快挙。二人の活躍に期待。
◎日本代表の最終選考会は2020年春。稲葉はカサノバに騎乗し、東京大会出場を狙う。
選手名 | 稲葉 将(いなば しょう) |
出場競技/種目 | 個人グレード3 |
パラリンピック出場実績 | なし |
主な戦績 | 2019年東京馬術大会/総合優勝他 |
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<神奈川県 公式ホームページ>
鎮守 美奈
『鎮守 美奈』は2004年アテネ大会への出場実績を持つベテランパラアスリートである。馬に乗り始めたのは高校生の頃、その後本格的にパラ馬術を始め、同大会に出場した。なお、2004年当時は大会主催者から馬が貸し出されるルールであった。鎮守は割り当てられた馬を乗りこなすことに苦労した。演技自体は決して悪くなかったものの、満足いく結果を残すことはできなかった。
鎮守は2004年アテネ大会以降パラ馬術から身を引いていたものの、2007年に競技再会を決断。この頃から健常者と障がい者の大会が同一会場で行われるようになり、パラ馬術のあり方が見直されたのも影響したという。ブランク等の影響で2008年北京、2012年ロンドン、そして2016年リオ大会への出場は逃したが、世界選手権や国内の競技会で腕を磨いた。そして2019年、東京大会の選考会、鎮守は愛馬の「ジアーナ」と共に素晴らしい演技を披露、グレード1で優勝を果たした。パラ馬術日本代表が選出されるのは2020年春。鎮守とジアーナは東京大会への出場権を獲得し、世界最高の舞台に立つ。
<まとめ>
◎2004年アテネ大会では苦い経験をしたものの、不屈の精神で克服。
◎まずは東京大会の出場権獲得が目標。ジアーナと共に世界最高の舞台を目指す。
選手名 | 鎮守 美奈(ちんじゅ みな) |
出場競技/種目 | 個人グレード1 |
パラリンピック出場実績 | 2004年アテネ/12位 |
主な戦績 | 全日本パラ馬場馬術競技大会優勝など |
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<パラサポWEB 公式ホームページ>
5人制サッカー(目次に戻る
パラ『5人制サッカー』の世界ランキング(2020年1月時点)は以下の通りである。
ランキング | 国 |
1位 | アルゼンチン |
2位 | ブラジル |
3位 | 中国 |
4位 | トルコ |
5位 | スペイン |
13位 | 日本 |
5人制サッカー、通称「ブラインドサッカー」は、視力に障がいを持つパラアスリートが行うサッカーである。また、弱視の選手が有利になることを防ぐため、アイマスクの着用が義務付けられており、視覚を完全に遮断した状態でプレーしなければならない。
選手たちが頼りにするのは、専用のボール(中に小さな鉛玉が入っており、転がると音がする)から発せられる音とチームメートの声。そして、選手に声掛けを行える「ガイド(ボールやゴールまでの距離、角度などを伝達する)」の声/指示のみである。聴覚に全神経を集せるため、観客はゴールが決まった時以外、声援を送ってはならない。
【種目】
・5人制サッカー(男子)
日本代表
5人制サッカー(ブラインドサッカー)は、ゴールキーパーを除くフィールドプレイヤー全員がアイマスクをつけてプレーする。選手たちは、専用のボールが転がる音、仲間や監督の声などの声を頼りにフィールドを駆け回る。同競技がパラリンピックに採用されたのは2004年アテネ大会から。1996年アトランタ大会から実施されていた7人制サッカーは、東京大会の実施競技から除外された。
『日本代表』は開催国枠での東京大会出場が既に決まっている。なお、2012年ロンドン大会、そして2016年リオ大会では、出場権を獲得することはできなかった。世界のレベルは非常に高く、強豪国は南米とヨーロッパ勢、最近では中国も台頭している。さらに、近年の世界的なサッカー人気の影響で選手個人のレベルも大きく上がっており、特にブラジル代表は素晴らしいスキルを持っている選手が多い。現在、同競技を4連覇中のサッカー大国は、東京大会でも金メダルの最有力候補に挙げられている。
日本代表としては、まず目の前の1戦に集中、予選での勝利をひとつずつ積み重ねてほしい。東京大会に出場する国は、世界ランキングの上位勢が大半を占める。2019年12月に行われたモロッコ(世界ランキング8位)との親善試合は、1対5の完敗だった。5人制サッカーのポイントは「足元の技術」「チームワーク」「音への反応」の三つ。バランスが大切であり、ひとつでも欠けていれば勝利は難しい。日本代表の奮闘に期待しよう。
<まとめ>
◎世界ランキング上位勢の壁は厚く、高い。まずは目の前の1戦に集中。
◎5人制サッカーの競技レベルは年々上がっている。東京大会の金メダル最有力候補はブラジル代表。
チーム名 | 日本代表 |
出場競技/種目 | 5人制サッカー |
パラリンピック出場実績 | なし |
主な戦績 | 2014年世界選手権/6位 |
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<ブラインドサッカー日本代表 公式ホームページ>
ゴールボール(目次に戻る
パラリンピック『ゴールボール』の歴代メダリスト(抜粋)は以下の通りである。
大会名 | 選手名 | 競技種別 | メダル |
2012年ロンドン | 女子日本代表 | ゴールボール | 金 |
2004年北京 | 女子日本代表 | ゴールボール | 銅 |
ゴールボールは3対3で行われるチーム競技だ。幅9mのゴールに特製のボールを投げ得点を争う。攻守は交代制、ボールをシュートした時点で切り替わる。なお、同競技は視覚障がい者を対象としており、フィールド内にいる選手は目隠し(アイシェード)の着用が必須。
攻撃側は鈴の入ったボール(直径25cm、弾みにくい)を仲間と自陣内でつなぎ、決められたエリア内でボールを投げ相手ゴールを狙う。なお、ボールを弾ませるポイント/位置なども厳格にルール化されており、ただゴールを狙うだけの単純な競技ではない。
守備側の3名は決められた位置で待機、相手の動きとボールの音に全神経を集中させ、放たれたシュートは全身を使って阻止する。同競技を観戦する際も、ゴールが入った時以外、声援を送ってはならない。
【種目】
・ゴールボール(男子/女子)
男子日本代表
ゴールボールの『男子日本代表』は、開催国枠での東京大会出場を決めている。パラリンピックに出場するのは初、2018年の世界選手権に出場するもメダル獲得はならなかった。しかし、世界との差は確実に縮まっており、世界ランク1位のブラジル戦は5対9、強豪国のイラン戦でも8対11の接戦を演じた。
男子の試合は、直径25cmのボールが凄まじい勢いで宙を舞う。それだけ点が入りやすく、一歩間違えると大量点を奪われる可能性が高いのだ。相手の動きに耳をすませ、3人が息を合わせてゴールを守らなければ、いくら点を取り返しても勝利することは難しい。
男子日本代表にはさらなる「守備力」の向上が求められる。強豪国が相手でも点を取れることは世界選手権で証明された。ただし、攻撃のスキルにも磨きをかける必要は当然ある。「攻撃は最大の防御」の言葉通り、攻める気持ちを強く持って戦わなければ、勝利をつかむことはできないだろう。代表に選出された選手たちは、現在も厳しい練習、そして実戦経験を積んでいる。まずは失点を抑えること、そして目の前の1戦に集中し、勝利を手にしてほしい。
<まとめ>
◎日本代表(男子)は開催国枠でのパラリンピック初出場が決まっている。
◎相手の攻撃を防ぐためには、守備力の向上が必要不可欠。
チーム名 | 日本代表(男子) |
出場競技/種目 | ゴールボール男子 |
パラリンピック出場実績 | なし |
主な戦績 | 2019年アジア選手権/3位など |
外部サイトへのリンク
<一般社団法人 日本ゴールボール協会 公式ホームページ>
女子日本代表
ゴールボール『女子日本代表』は、2004年アテネ大会で男女を通じて同競技初となる銅メダルを獲得、2012年ロンドン大会では悲願の金メダルを獲得した。なお、2016年リオ大会では、新たに導入された弾みやすいボールの扱いに苦しみ、準々決勝で敗退。その悔しさを胸に、東京パラリンピックでは2大会振りのメダルを狙う。
女子選手は、ボールをサイドもしくはアンダーで投げることがほとんどである。日本代表は相手のシュートが放たれた瞬間、3人が横一列に寝る/並ぶ防御スタイルを確立し、失点を防いでいた。しかし、弾みやすいボールが導入されたことで、横に寝た選手の上を飛び越えて失点することが増えたため、現在さらなる守備力の向上に努めている。
ゴールボールは攻守の入れ替わりが激しい。ボール/シュートを止められれば、相手の攻撃ターン(時間制限あり)が始まるのだ。日本代表は守備力をさらに高め、失点ゼロを目標に掲げている。
2019年に行われたアジア選手権の決勝、日本代表は強敵中国との戦いを2対1で制した。攻撃力の強化ももちろん必要だが、点を取られなければ負けること決してない。誰にも破られることのない「鉄壁の守り」を確立し、東京大会での金メダルを狙う。
<まとめ>
◎2012年ロンドン大会で金メダルを獲得。東京パラリンピックでは2大会ぶりのメダルを狙う。
◎女子日本代表の武器は鉄壁の守り。2019年アジア選手権では強敵中国を撃破した。
チーム名 | 日本代表(女子) |
出場競技/種目 | ゴールボール女子 |
パラリンピック出場実績 | 2004年アテネ/銅メダル 2012年ロンドン/金メダル |
主な戦績 | 2019年アジア選手権/優勝など |
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<パラサポWEB 公式ホームページ>
柔道(目次に戻る
パラリンピック『柔道』の歴代メダリスト(抜粋)は以下の通りである。
大会名 | 選手名 | 競技種別 | メダル |
2016年リオ | 廣瀬 誠 | 男子60kg級 | 銀 |
2016年リオ | 正木 健人 | 男子100kg超級 | 銅 |
2016年リオ | 藤本 聰 | 男子66kg級 | 銅 |
2016年リオ | 廣瀬 順子 | 女子57kg級 | 銅 |
パラ柔道は、オリンピックと同じように体重別でメダルを争う。なお、障がいの種類による種目分けはないため、全盲の選手が不利にならないように「組手争い」は行われない。
対戦はお互いが相手の襟と袖を所定の位置で掴んだ状態、すなわち「組んだ状態」から始まる。それ以外のルールはオリンピックと同じだが、「はじめ」の合図と同時に投げ技が決まることも多い。激しくスピーディな試合展開に期待しよう。なお、主審の合図前に身体を動かす、組手を有利に進めようとすると「指導」を受ける。制限時間内に勝負がつかなければ、技と指導のポイントで勝敗が決まるため、小さな反則が命取りになるだろう。
【種目】
男子
・60kg級
・66kg級
・73kg級
・81kg級
・90kg級
・100kg級
・100kg超級
女子
・48kg級
・52kg級
・57kg級
・63kg級
・70kg級
・70kg超級
正木 健人
柔道がパラリンピックの競技に採用されたのは、男子が1988年ソウル大会、女子が2004年アテネ大会からである。日本勢はこれまで複数個のメダルを獲得しており、東京大会では2012年ロンドン大会以来の金メダルを期待されている。
ここで紹介する『正木 健人』は男子100kg超級の日本代表候補だ。2012年ロンドン大会では金メダル、2016年リオ大会は銅メダル、そして国際大会等でもメダルを獲得している。なお、100kg超級の日本代表候補は同選手のみ、東京大会選考基準の大会で結果を残せば、代表入りは当確だろう。
正木は先天性の弱視で、目の前にいる人の輪郭がボンヤリ見える程度の視力しかない。中学時代に柔道と出会い、恵まれた体格とパワーを活かしたパワフルは組手で結果を残した。高校、大学も柔道部に所属、そして大学卒業後に出場した初めての国際大会(2011年世界選手権)をオール1本勝ちで制し、パラ柔道のエースと呼ばれるようになった。
正木の東京大会での目標は「己に勝つこと」、そして「お世話になった人たちに恩返しすること」である。感謝の気持ちを忘れない柔道家は、2大会振りの金メダルを狙う。
<まとめ>
◎2012年ロンドン大会で金メダル、2016年リオ大会でも銅メダルを獲得した。
◎東京大会の目標は「己に勝つこと」、そして、「お世話になった人たちに恩返しすること」。
チーム名 | 正木 健人(まさき けんと) |
出場競技/種目 | 男子100kg超級 |
パラリンピック出場実績 | 2012年ロンドン/金メダル 2016年リオ/銅メダル |
主な戦績 | 2011年世界選手権/金メダル |
外部サイトへのリンク
<パラサポWEB 公式ホームページ>
広瀬 順子
『広瀬 順子』は女子パラ柔道日本代表候補選手のひとり。2016年リオ大会、57kg級で銅メダルを獲得した。パラリンピックの女子柔道で日本選手がメダルを獲得したのは同選手が初である。なお、夫の「広瀬 悠」も、男子パラ柔道の日本代表として2016年リオ大会90kg級に出場した。
広瀬は大学まで柔道部に所属し、インターハイ等でも結果を残した選手だったが、大学1年の時に「膠原病(こうげんびょう)」を発症、視界が狭くなったことで競技生活から身を引いた。しかし、視覚障がい者のスポーツを観戦しパラ柔道への復帰を決意、現在に至る。
パラ柔道の日本代表(男女)は2020年2月以降に決定する予定である。世界選手権等の結果/獲得ポイント最上位者(各階級ごと)が選ばれることが決まっており、広瀬は2019年12月に開催された選考基準大会のひとつ「全日本選手権」57kg級で優勝、東京パラリンピックの代表入りはほぼ確実になった。
広瀬の目標は「夫婦でメダル」を獲得することである。女子パラ柔道界初の金メダル、さらに同一大会(パラリンピック)で夫婦が同時にメダルを獲得すれば日本史上初、オリンピックでも数回しか達成されていない快挙だ。
<まとめ>
◎2016年リオ大会57kg級で銅メダルを獲得。2018年の世界選手権も制している。
◎2019年12月の全日本選手権を制し、東京パラリンピックの代表入りはほぼ確実。
チーム名 | 広瀬 順子(ひろせ じゅんこ) |
出場競技/種目 | 女子57kg級 |
パラリンピック出場実績 | 2016年リオ/銅メダル |
主な戦績 | 2018年世界選手権/金メダル |
外部サイトへのリンク
<日本視覚障害者柔道連盟 公式ホームページ>
パワーリフティング(目次に戻る
『パワーリフティング』の戦績(抜粋)は以下の通りである。
大会名 | 選手名 | 競技種別 | メダル |
2018年世界選手権 | 大堂 秀樹 | 男子88kg級 | 銅 |
2019年世界選手権 | 大堂 秀樹 | 男子88kg級 | 金 |
2019年世界選手権 | 山本 恵理 | 女子55kg級 | 金 |
2019年世界選手権 | 中辻 克仁 | 男子107kg超級 | 銀 |
パワーリフティング(ベンチプレス)は、下肢に障がいを持つ選手を対象とした競技である。同競技は胸筋を鍛えるトレーニング種目として世界中のジムで行われており、競技選手は100か国以上にまで広がっているという。
パラリンピックで行われるパワーリフティングは上半身の力だけで行わねばならず、「腕力/筋力」だけでなく、一瞬のうちに力を爆発させる「集中力」を要求される。選手によっては体重の3倍を超えるバーベルを持ち上げてしまい、世界記録は健常者のトップレベルに引けを取らない。なお、障がいの種類による種目分けはなく、メダルは体重別で争われる。
【種目】
男子
・49kg級
・54kg級
・59kg級
・65kg級
・72kg級
・80kg級
・88kg級
・97kg級
・107kg級
・107kg超級
女子
・41kg級
・45kg級
・50kg級
・55kg級
・61kg級
・67kg級
・73kg級
・79kg級
・86kg級
・86kg超級
西崎 哲男
パワーリフティング日本代表のレベルは年々向上している。ここで紹介する『西崎 哲男』も、東京大会への出場権をライバルたちと争っているパラアスリートのひとりだ。なお、パラリンピックの同競技でメダルを獲得すれば、1968年テルアビブ大会以来、52年振りの快挙となる。
パワーリフティングに開催国枠はなく、「国際パラリンピック委員会(IPC)」の定める大会に出場、ポイントを獲得し、階級別世界ランキングの8位以内に入った選手がパラリンピックの出場権を得られる。ただし、同階級に同じ国の選手が複数人出ることはできないため、まずは国内のライバルを抑え、かつ世界ランキングの上位を目指さねばならないのだ。
西崎は2016年リオ大会に出場、国際/国内の大会でポイントを重ね、男子49kg級の世界ランキング8位以内を目指している。リオ大会は男子54kg級での出場だったが、代表権を得やすい最軽量級に狙いをしぼった方が良いと考えたのだろう。2019年9月に開催されたW杯(東京パラリンピックのテスト大会)では銅メダルを獲得し、代表入りに一歩近づいた。
同競技は体格/骨格に勝る海外勢が強い。しかし、軽階級ではアジア勢も素晴らしい成績を残しており、特に中国、韓国勢の台頭には目を見張るものがある。西崎も今の調子で結果を残せば、世界ランキング8位以内は十分射程圏内だ。筋肉モリモリの42歳は己の限界に挑戦する。
<まとめ>
◎パラ―リフティングに開催国枠はない。世界ランキング8位以内に入り、かつ国内での争いに打ち勝てば、東京大会への扉は開かれる。
◎軽量級はアジア勢が世界と互角に渡り合っている。
チーム名 | 西崎 哲男(にしざき てつお) |
出場競技/種目 | 男子49kg級 |
パラリンピック出場実績 | 2016年リオ |
主な戦績 | 2019年W杯/銅メダルなど |
外部サイトへのリンク
<乃村工藝社 公式ホームページ>
山本 恵理
最後に紹介するのは、パワーリフティング女子55kg級での東京大会出場を目指す『山本 恵理』である。小柄な身体/見た目からは想像できないパワーでバーベルを持ち上げ、世界選手権での上位入賞多数。2019年9月に開催されたW杯(東京パラリンピックのテスト大会)では日本新記録を樹立し、見事金メダルを獲得した。
「西崎 哲男」の項で述べた通り、東京大会の代表権を得るには、階級別世界ランキング8位以内に入らねばならない。山本の出場する女子55kg級は南米や欧州勢の強敵が多く、特にメキシコ代表「アマリア・ペレス(女子55kg級の世界記録保持者)」の実力は突出している。まずは、同階級での世界ランキング8位以内を目指し、かつ、自身の持つ日本記録(63kg)を更新。選考基準を満たす大会で結果を残せば、道は開けるはずだ。
山本は先天性の病で下肢に障がいを抱えている。しかし、小さい頃から様々なスポーツに挑戦し、同競技に挑戦したのは何と2016年、競技歴3年で世界と渡り合えるまでに成長した「伸びしろ」は凄いの一言である。限界を決めずにチャレンジし続ける胆力で、東京大会への扉を開いてほしい。
<まとめ>
◎まずは世界ランキング8位以内が目標。日本記録を更新し続ければ、チャンスは十分ある。
◎山本がパワーリフティングを始めたのは2016年。さらなる伸びしろに期待。
チーム名 | 山本 恵理(やまもと えり) |
出場競技/種目 | 女子55kg級 |
パラリンピック出場実績 | なし |
主な戦績 | 2019年全日本選手権/55kg級優勝など |
外部サイトへのリンク
<NPO法人 日本パラ・パワーリフティング連盟 公式ホームページ>
まとめ
今回は東京パラリンピックでの活躍が期待される日本人選手たちを紹介した。なお、私の個人的な主観で選んでいることをご理解いただきたい。
日本代表に内定した選手、現在代表を争っている選手たちは、皆同じ目標に向けて厳しいトレーニングを行っている。前回のリオパラリンピック、日本代表は金メダルをひとつも獲得できなかった。東京大会は自国開催の誇りとプライドをかけた戦いになるだろう。最後までお読みいただきありがとうございました。