全仏オープンは帰ってくる
9月7日、フランステニス連盟(FFT)は、9月27日に開幕する全仏オープンの観客入場を許可すると発表した。
同国内ではコロナウイルス新規感染者が急増しており、関係者は医師および医療関係者への負担増、第二波、そして新たなパンデミック発生を懸念している。
100年近い歴史を持つグランドスラムのひとつは4か月以上延期され、9月27日からパリ西部のスタッド・ローラン・ギャロスで開幕する。
FFTはコロナショック後初となる同大会の新たな運営方法を発表した。
FFTの会長、バーナード・ジュディチェリ氏はオンライン会見の中で記者団に対し、「ローラン・ギャロスは、国際大会再開後初となる観客を入れてのトーナメントになる。テニスは本来の姿を取り戻し、人々に希望を与えるだろう」と語った。
セリーナ・ウィリアムズ氏とマリア・サッカリ氏は、観客なしで行われている全米オープンの試合後、感染者が増加傾向にあるフランスで「ファンに門戸を開いても大丈夫か」と懸念を表明した。
しかし、グランドスラム制覇を狙うプレーヤーたちはFFTの提案に従わねばならない。FFTは出場選手たちを2つホテルに軟禁し、PCR検査を徹底すると発表した。
セリーナ・ウィリアムズ氏:
「ファンの有無に関わらず、我々は普段通りプレイするだけ。しかし、大会が本来の形で運営されることは大変興味深い。皆それを望んでいる」
ウィリアムズ氏はファンの参加を望みつつ、「感染予防対策などの詳細」を知りたいと述べた。
マリア・サッカリ氏:
「観客がいることは素晴らしいことだ。しかし、私たちは無観客でもベストを尽くす。FFTの発表は衝撃的だった」
現在、パリなどの地域で適用されているガイドライン(5,000人以下のイベントを許可)に従い、FFTは入場者数に制限を設けると発表した。
当初、FFTは1日あたり約20,000人(全会場の容量の50%~60%に相当)の観客を入れたいと考えていた。
しかし、ガイドラインは遵守せねばならない。結果、3つの主要会場を「3つのゾーン」と考え、それぞれの入場者数を5,000人以下に抑えることが決まった。
会場でのマスク着用は必須。さらに、出場選手は必ずPCR検査を受ける必要がある。
トーナメントディレクターのガイ・フォーゲット氏は以下のように述べた。
ガイ・フォーゲット氏:
「全選手はパリに到着後、即、PCR検査を受ける。陰性であれば、ホテルにチェックイン。陽性であれば医療機関へ移送、大会に出場することはできない」
「陰性だった選手は72時間後に再検査を受ける。そこで陰性が確認されれば、初めて大会への出場を正式に許可される。その後、勝ち残っている選手に限り、5日ごとにPCR検査を実施する。なお、大会期間中、選手たちは定められたホテルに滞在しなければならない」
FFTは、コロナショックの影響で財政的に大きな影響を受けたプレーヤーへの連帯の証として、初期の敗者により多くの賞金を与えると発表した。
FFT:
「初戦敗退の賞金は、昨年から30%増加し60,000ユーロ(約750万円)。また、コロナウイルスの感染が確認され、初戦を戦えなかった選手には10,000ユーロ(約125万円)が支払われる」
ジョンズ・ホプキンズ大学のまとめによると、フランスの累計感染者数は約32.9万人。これまでに30,000人以上が死亡した。なお、1日あたりの新規感染者数は、9月4日に過去最高を更新する8.975人を記録した。
ノバク・ジョコビッチ
世界ナンバーワンプレーヤーの「ノバク・ジョコビッチ氏」は、グランドスラムのひとつ、全米オープンでの試合中にライン審判をスマッシュし、失格を言い渡された。
ジョコビッチ氏はSNSで今回の騒動を謝罪。ライン審判への暴力行為について、「今、私は本当に悲しく、空っぽになった」と投稿した。
パブロ・カレーニョ・ブスタ氏との試合中、トップシードのジョコビッチ氏はアーサー・アッシュ・スタジアムのバックボードに向かってスマッシュした。
そのボールはライン審判の喉元付近を直撃、その場に崩れ落ち、あえいだ。この時、攻撃を受けた女性はコート外に移送され、救護を受けるべきだった。
これまでに全米オープンを3度制したジョコビッチ氏は、この日の試合に不満を感じていた。
ライン審判へのスマッシュ攻撃後、ジョコビッチ氏は審判長のオーレリー・トゥルテ氏、審判のソレン・フリーメル氏、グランドスラム・スーパーバイザーのアンドレアス・エグリ氏から10分におよぶ法廷尋問を受けたのち、失格を言い渡された。
米国テニス協会(USTA)はABCの取材に対し、スマッシュ攻撃を受けたライン審判はUSTAプレーヤーメディカルサービスディレクターのブライアン・ダニエルズ氏によって救護、現在観察下にあると述べた。
ディズニー・メディア・ネットワーク(ESPN)によると、ライン審判は喉に打撲傷を負ったものの、当局のホテルで快適に休んでいるという。
Top-seeded Novak Djokovic was defaulted from his fourth-round match at the #USOpen after he accidentally hit a line judge with a tennis ball Sunday. pic.twitter.com/TTstxZB2Jw
— ESPN (@espn) September 6, 2020
USTAは、今回の不祥事およびジョコビッチ氏への判決について声明を発表した。
「グランドスラムルールブックに従い、意図的にコート内で危険・無謀なボールを打つ、または結果を無視してボールを打つというジョコビッチ氏の行動を審議した結果、彼は2020年全米オープンから去ることになった」
ジョコビッチ氏は今回の不祥事について、ソーシャルメディアで謝罪した。
ノバク・ジョコビッチ氏:
「今、私を取り巻く全ての状況が悲しく、空っぽになってしまった。ライン審判が軽傷で済んだことに安堵している。私が彼女を負傷させたことは事実であり、非常に申し訳なく思っている」
「失格措置は当然だと思う。私はこの大きな過ちを反省し、失望に立ち返り、人間として成長する教訓に変えねばならない。USTAと私をサポートしてくれたあらゆる人々に謝罪する。家族、ファン、そして私のチームはいつも一緒にいてくれた。本当にすみません」
USTAは、ジョコビッチ氏が同大会で獲得した全てのランキングポイントおよび、獲得した賞金を失い、罰金が科されると発表。さらに、事件に関連する新たな罰金(訴訟など)を科される可能性があると付け加えた。
試合後、対戦相手のパブロ・カレーニョ・ブスタ氏は記者団に対し、「私は事件を見ていなかった」と語った。
パブロ・カレーニョ・ブスタ氏:
「私は休憩中で、コーチを探していた。私がコートに戻った時、ライン審判は倒れていた」
「突然試合が打ち切られ、誰もがショックを受けていた。しかし、ルールは遵守せねばならない。審判は正しい判断をした」
審判のフリーメル氏は、スマッシュ攻撃の瞬間を見ていなかったと語り、審判長とスーパーバイザー、そしてジョコビッチ氏に話を聞いたところ、違法行為であることは明らかだったと述べた。
審判長のオーレリー・トゥルテ氏:
「ライン審判を負傷させたことは事実。彼はルールを無視し、危険なボールを彼女に打ち込んだ」
「ジョコビッチ氏はフラストレーションがたまっていたと認めたが、意図的な攻撃ではないと主張した」
フリーメル氏は、ジョコビッチ氏が10,000ドルの罰金に直面していること、そして、罰金に関して彼の意図が考慮されたと語り、「意図的にライン審判を攻撃したのであれば、ペナルティはさらに厳しかっただろう」と付け加えた。
なお、ジョコビッチ氏は記者会見を行わずにUSTAビリー・ジーン・キング・ナショナル・テニス・センターを離れたため、追加の罰金を科される可能性がある。
グランドスラムを17回制したジョン・マッケンロー氏は、「ジョコビッチはルーキーのミスを犯した。打ち込む先の状況に注意を払わず、何も考えていなかった」と述べた。
セルビア出身のジョコビッチ氏は、世界ナンバーワンプレーヤーとして無観客でもベストを尽くすと誓い、素晴らしい試合を行ってきた。
今年の全米オープンでは、2014年以来となるシングルス優勝を目指していた。今回の失格により、継続中だった連勝記録(26連勝)は雲散霧消した。
ジョコビッチ氏のスマッシュ攻撃