『kenta475699』です。
九州地方に伝わる希少な伝統工芸品を紹介します。個人の主観で選んでいることをご理解下さい。
目次
・観光と伝統工芸品の関係
・希少価値の高い伝統工芸品
〇九州地方の伝統工芸品
1.シーサー(沖縄県)
2.薩摩切子(鹿児島県)
3.川尻刃物(熊本県)
4.宮崎手漉和紙(宮崎県)
5.姫だるま(大分県)
6.伊万里・有田焼(佐賀県)
7.長崎べっ甲(長崎県)
8.博多人形(福岡県)
9.琉球ガラス(沖縄県)
10.屋久杉工芸品(鹿児島県)
11.おばけの金太(熊本県)
12.かるい(宮崎県)
13.日田下駄(大分県)
14.肥前びーどろ(佐賀県)
15.五島さんご(長崎県)
16.博多織染織品(福岡県)
17.肥後こま(熊本県)
18.別府竹細工(大分県)
19.五島ばらもん凧(長崎県)
20.本場大島紬(鹿児島県)
まとめ
観光と伝統工芸品の関係
九州地方の伝統工芸品は、古くからその地域に伝わる独自の技術や文化と密接に関係している。国が指定したものと、県が独自に指定したものがあり、どちらもお金には代えられない素晴らしい価値を秘めたものばかりだ。
観光と伝統工芸品は切っても切れない関係にある。その地域にしかない品を多くの方に知ってもらうことで、観光地としての魅力が高まる。また、観光地としての魅力をが高まれば、より多くの人に伝統工芸品を知ってもらえる。片方が知名度を上げれば、もう片方も相乗効果の恩恵を受けることが出来る。まさに”Win-Win”の関係を構築していると言えよう。
観光地の土産物屋に行けば、高い確率で伝統工芸品に出会える。大昔に作られた希少価値の高い品を手に入れることは難しいが、製造技術が伝承、確立され安定して生産されているものは、数千円で購入出来たりする。値は品によって様々で、工芸品コレクターたちは日本各地を回り珍しい品を集めているという。人の目につきやすい伝統工芸品ほど知名度を上げるチャンスは高い。
”伝統工芸品は大儲けする為に伝承されたのではない”と否定的なことを言う者もいるが、地方経済の困窮ぶりを考えると、素晴らしい収入源だと思う。観光客の増加も見込めるため、売れるに越したことはないだろう。今回は九州地方に伝わる希少な伝統工芸品を20品紹介する。
希少価値の高い伝統工芸品
伝統工芸品の中にもグレードがあり、大量生産可のものはお手頃な値段で販売されている。しかし、製造技術は伝承されていても、”工程が全て作業”、”材料が手に入りにくい”品であれば、生半可な覚悟では購入出来ない。”人間国宝”が作ったものになると、一般人は購入出来ず、美術館や博物館などで飾られていることもある。
伝統工芸品は値段の高い安いで価値が決まる訳ではない。しかし、製造元は少しでも利益を上げたいと考えるだろう。素晴らしい品でも、全く儲けが出なければ、技術を継承することは難しい。そもそも利益が上がらなければ、製造を継続すること自体不可能である。素晴らしいポテンシャルを秘めた伝統工芸品でも、現代の観光客誘致・販売競争に敗れれば、数十年後には消滅しているかもしれない。
地方自治体は地元の伝統工芸品を売り出すべく、日々努力を重ねている。新聞やメディア、SNSなどを駆使し、あらゆる手段を使って全国に情報を発信。一人でも多くの観光客を誘致しようと必死だ。しかし現実は厳しく、地元以外ではほとんど知られていない伝統工芸品が数多く存在する。素晴らしい品であっても、知名度が低いことで苦労を強いられているのが実情だ。今回紹介する20品は、知名度の低いものも多く含まれている。興味を持った品があれば、九州地方へ旅行や仕事で訪れた際にぜひチェックしてほしい。
九州地方の伝統工芸品
シーサー(沖縄県)(目次に戻る
”琉球王国時代”から伝わる「シーサー」。沖縄県を訪れれば、あちこちで”獅子(ライオン)型”の置物を見ることが出来る。守り神として知られ、一般家庭はもちろん、スーパー、コンビニ、飲食店、空港、商店街など、あらゆるところに堂々と鎮座している。なお、シーサーと言えば”陶器”を思い浮かべる方がほとんどだろう。
伝統工芸品に認定されているシーサーは、陶器だけにはとどまらず、あらゆる分野に進出している。観光客が気軽に購入出来る”キーホルダー”、部屋に飾れる置物、お菓子、カレンダーやイラストでも販売されている。民家の屋根や玄関に飾られている陶器にこだわらず、あらゆる分野を開拓した素晴らしい伝統工芸品と言えるだろう。
国宝や世界文化遺産、重要文化財に飾られているシーサーは、お金には代えられない価値がある。しかし、陶器製にこだわっていれば、ここまで全国に展開される商品にはなり得なかったはずだ。地方自治体と民間企業がシーサーの知名度向上に努めた結果、沖縄県は日本でもトップクラスの観光地となった。年間数百万人が常夏の島を訪れ、お土産にシーサーの関連商品を購入する。伝統工芸品と観光が完璧にミックスされれば、素晴らしい相乗効果をもたらすことが分かるだろう。
シーサーは日本各地に広まった。某大手企業の営業所では、玄関に”無事カエル”と並んで堂々と鎮座している。沖縄出身の方が経営に携わっているのかと思ったが、”厄除け効果”を期待して所長が勝手に置いたらしい。”陶器製はハードルが高い”という方は、部屋に飾れるサイズの可愛いシーザーも販売されている。綺麗なガラス製品もあり、厄除け兼インテリアとしておすすめしたい。
国宝クラスの品からキーホルダーと、あらゆる分野で成功したシーサーは、伝統工芸品のあるべき姿を世に知らしめてくれた。素晴らしい技術や技法を伝承しつつ、現代社会で生き抜く術を他の地方自治体に教えてくれたのだ。
知名度 ★★★★★★★★★★ 10
成功度 ★★★★★★★★★★ 10
外部サイトへのリンク
<沖縄県 シーサー 公式ホームぺージ>
薩摩切子(鹿児島県)(目次に戻る
キラキラの美しいガラス細工として知られる「薩摩切子(きりこ)」。鹿児島県を訪れた方は、空港や駅の土産物屋で一度は目にしたことがあるはず。万華鏡の”幾何学模様”をイメージさせるデザインは、”一つとして同じ製品がない”とも言われている。なお、県の伝統工芸品にも認定されており、紆余曲折を経て現在に伝えられたことでも知られている。
薩摩切子の製造方法は、薩摩藩の大名”島津斉彬”が海外から持ちこまれたものを参考に確立したと言われている。細かい製造工程は割愛するが、数千度まで熱したガラスと特殊な製法が組み合わさって誕生し、今でも多くの人々を魅了している。しかし、幕末の世に起こった動乱(明治維新、西南戦争等)の影響を受け、製造方法は後継者に伝えられることなく途絶えてしまった。
1985年、薩摩切子の製造を復活させるべく、研究者や技術者たちはガラス細工職人たちに協力を仰いだ。結果、100年以上前に途絶えた技術は復活し、現在に至っている。鹿児島県は復活した薩摩切子の美しさを紹介し、民間企業も一斉に動き出した。商品は全て手作りで大量生産出来ないが、美しい幾何学模様に魅了されたコレクターや観光客を楽しませている。
明治時代以前に作られた薩摩切子は、数千万円で売買されることもある。美術館などで飾られている物は希少な品ばかりで、一般人が手を出すのは中々難しい。しかし、土産物屋で売られている”お猪口”や”ロックグラス”であれば、10,000円前後で購入することも可能だ。安い買い物ではないが、アンティーク品として部屋に飾ることも出来るし、もちろん日用品として使ってもいい。インターネット通販等でも販売されているので、幾何学模様に魅了される方、美しいガラス製品が好きな方はぜひチェックしよう。
※アウトレット品として売られている薩摩切子は、何かしらの問題点を抱えている。小さなヒビや欠け、輸入品なども紛れている可能性があるので、購入する時は注意が必要だ。
知名度 ★★★★★☆☆☆☆☆ 5
成功度 ★★★★★☆☆☆☆☆ 5
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<島津薩摩切子 公式ホームぺージ>
川尻刃物(熊本県)(目次に戻る
刃物を伝統工芸品に認定している地方自治体は非常に多い。熊本県も同じで、今回紹介する「川尻刃物」以外にも数種類の工房が認定されている。日常生活に欠かせない包丁は、今や量販店でも購入出来るほど身近な商品になった。また、鋼だけでなく様々な材質で作られており、”ダイヤモンド製”を初めて見た時はドキドキしたことを今でも覚えている。なお、頽ダイヤで作られているため、数千円で購入可能だ。
川尻刃物の包丁は、地金に鋼を挟み込み”鍛える”昔ながらの製法で作られている。映画等で鍛冶屋が剣をカンカン叩いているシーンをイメージしよう。金槌を使って超高温に熱せられた鋼を打ち続け、14段階に及ぶ工程を通過しなければならない。恐ろしく手間のかかる作業は、今でも全て手作業で行われているのだ。その切れ味は凄まじく、量販店で売られている包丁とは訳が違う。機械で大量生産されたものと、職人が丹精込めたものでは雲泥の差があり、プロの料理人から主婦まで幅広い層に支持されている。
刃物職人の手から生み出される包丁は、海外でも高い評価を受けている。機械には決して出せない切れ味を知り、わざわざ現地まで足を運ぶ料理人もいると聞く。料理人の命(包丁)を生み出す川尻刃物の職人たちは、プロ仕様から一般家庭向けまで、様々な品を鍛え販売している。なお、直接現地を訪れて”刃物を研いでもらう”ことも出来るから驚きだ。職人が研いだ包丁は”なまくら”から”業物”に進化すると評判である。
地方自治体は、刃物本体だけでなく”それを鍛える工程”も伝統工芸品として認定しているのかもしれない。職人の数は年々減っており、川尻に41あった工房も今では残すところ数軒にまで減少している。途絶えた技術を復活させることは、継承者を育成するよりはるかに難しいだろう。川尻刃物と同じように伝統工芸品として認定されている品を見つけたら、積極的に購入したほしい。
明治時代に”廃刀令”が出され、日本人が接する刃物は包丁やカッターだけになった。その中で伝統工芸品に選ばれた川尻刃物は、古き良き時代の技術を継承する素晴らしい職人たちによって支えられている。今使っている包丁がなまくらだという方、刃物に興味のある方は、ぜひ川尻刃物の切れ味を試してほしい。なお、料理以外で使用すると銃刀法違反の恐れもあるため注意しよう。
知名度 ★★★★☆☆☆☆☆☆ 4
成功度 ★★★☆☆☆☆☆☆☆ 3
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<くまもと工芸会館 公式ホームぺージ>
宮崎手漉和紙(宮崎県)(目次に戻る
手漉(てすき)で作られた和紙には、機械で製造された西洋紙にない独特な味わいがある。ざらざらした紙質と手触りが一部の愛好者に支持され、はがきや封筒、切手などに形を変えている。しかし、大量生産出来ず、価格も若干割高になるため、機械式を採用する製紙会社に押され、消滅の危機を迎えていた。伝統工芸品に認定されている「宮崎手漉和紙」も、僅か1軒が製造手法を継承するまでに追い詰められてしまった。
宮崎手漉和紙の原料になる楮紙(こうぞがみ)は、澄んだ水の流れがなければ作れない。都会の川や水道水を使っても、手作り和紙が生み出す独特な紙質、手触りは再現出来ないという。水に”さらす”工程は和紙作りには欠かせない重要なファクターであり、清らかな水を運ぶ清流が必要不可欠なのだ。そのため、宮崎手漉和紙も限られた地域でしか作れず、貴重な和紙は絶滅寸前の状態に追い詰められた。なお、この製造手法を使える方は高齢のご夫婦とその子供のみ。後継者は確保出来ているが、厳しい状況にあることは変わりない。
1000年以上前から伝えられる宮崎手漉和紙とその製造手法は、お金には代えることの出来ない大切な伝統工芸品と言える。美しい自然の力と職人の手が無ければ製造出来ず、文化面と歴史面の両方で高い評価を受けるのは当然に思える。機械式の西洋紙は日常生活に欠かせないものになったが、それが原因で手漉の手法が失われることはあまりに惜しい。独特な紙質と手触り、そして桁違いの歴史を誇る宮崎手漉和紙に興味のある方は、手作り和紙の素晴らしさをぜひ体感してほしい。
日常生活、企業活動に欠かせない紙。”ペーパーレス”時代に突入しつつあるものの、まだまだその需要が衰える兆しはない。大きな時代の流れに押され、手漉和紙は消えつつある。しかし、伝統工芸品として多くの方に認知されれば、新たな後継者や店舗が誕生するかもしれない。失われつつある製造手法が継承され続けることを切に願っている。
日本中にある和紙工房は苦しい経営環境に置かれている。1000年以上の歴史を持つ伝統工芸品が継承される為に、我々消費者も”紙のあるべき姿”を見直さなければならない。大切な友人にあてる手紙、年賀状を手漉和紙に変えてみよう。和紙工房を助けるだけでなく、受取人に和紙の素晴らしさを教えることが出来るはずだ。
知名度 ★★★☆☆☆☆☆☆☆ 3
成功度 ★★★☆☆☆☆☆☆☆ 3
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<宮崎県日向市 公式ホームぺージ>
姫だるま(大分県)(目次に戻る
商売繁盛を願う”縁起物”として知られる”ダルマ”。商店街の店舗に入れば、必ずと言っていいほど置かれている。あとは選挙に立候補した方の事務所にも必ずダルマが置かれる。当選した暁には、候補者が満面の笑顔で空いている片目を塗りつぶす。複合商業施設や大型ショッピングモールのテナントでも姿を見たことがある。そんな縁起物とは少し違う役目を果たしているのが「姫ダルマ」だ。
大分県の伝統工芸品に認定されている姫ダルマは、家内安全と夫婦円満を願って作られる。縁起物であることに変わりはないが、あくまで自宅に飾るものと考えられているようだ。なお、姫ダルマは愛媛県だけのものと勘違いしている人が多い。ちなみに発祥地は大分県という方もいれば、愛媛県という方もいる。消えつつある伝統工芸品の技術が伝承されればどちらでもいい、と勝手に思ってしまうが、当事者たちには大切な問題なのだろう・・・
姫ダルマは”木製の型枠”を使って製造される。まず、新聞紙を何重にも重ね合わせ、”土台(本体)”を作る。新聞記事には目もくれず型枠からそれを取り出せば、準備完了だ。あとはその周りに和紙を幾重にも貼り重ね、しっかり乾燥させる。何も描かれていない真っ白な土台に”絵付け”すれば姫ダルマの完成である。”ほっこりした表情”を描ける職人は限られており、上達するには練習あるのみ。なお、大分県にある”後藤姫だるま工房”は、県内に残された唯一の姫ダルマ製造所として知られている。
姫ダルマの持つ家内安全、夫婦円満効果は1年と言われている。そのため、新年に買い換えるのが一般的だ。お守りや破魔矢をイメージするといいだろう。なお、”古い姫ダルマの処理方法に困る”という話を聞いたことがある。燃えるゴミに出すことも一応可能だが、1年お世話になったことを考えると、大半の方は躊躇するのではないだろうか。私は近所の神社でお焚(た)き上げ供養している。
姫ダルマに関連するグッズは通販等でも販売されている。キーホルダーや小物、シール等であれば、家内安全と夫婦円満を願いつつ、気軽に手を出せるだろう。また、後藤姫だるま工房でもグッズ等が販売されている。大分県の有名観光地”別府&湯布院温泉”を訪れた際は、ぜひ立ち寄ってほしい。
知名度 ★★★★★☆☆☆☆☆ 5
成功度 ★★★☆☆☆☆☆☆☆ 3
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<大分観光情報 たびらい 公式ホームぺージ>
伊万里・有田焼(佐賀県)(目次に戻る
約400年前、陶器の原料になる”陶石”が発見、日本で初めての陶磁器が作られた。そして現代、佐賀県のNo1伝統工芸品「伊万里・有田焼」は、日本初の陶磁器として知られ、全国の磁器愛好家から支持されている。”日本三大陶磁器”にも選ばれており、海外からも高い評価を受けるようになった。なお、価格は磁器の種類によって大きく異なる。コーヒーカップでも5,000円ほどするが、手が出ないという価格ではないだろう。
伊万里・有田焼を作る陶芸家には”人間国宝”の称号を与えられた者たちがいる。彼らの作った芸術品を一度だけ目にしたが、触れるような代物ではなかった。傷でもつけた日には、家族揃って路上生活を送る羽目になりかねない。しかし、空港や駅の土産物屋に流通している品であれば、ある程度気軽に購入できるはずだ。
長い歴史を持つ伊万里・有田焼は、江戸時代から現代まで脈々と伝承されてきた。割れにくいことも特徴で、普段使いの食器として古くから庶民の間で重宝されていたようだ。また、デザインも洗練されており、使用者の視覚も楽しませてくれる。工房の数が限られており大量生産は出来ないが、量販店で販売されている陶器とは全く違う使用感を与えてくれるだろう。贈り物として選ばれることも多く、天皇陛下、内閣総理大臣が他国の要人の為に伊万里・有田焼を選んだこともある。
佐賀県を代表する伝統工芸品は、これからも日本を代表する陶磁器として世界中に流通されるだろう。日常生活をグレードアップさせたい方は、コーヒーカップやご飯茶碗を伊万里・有田焼に変えてみましょう。倦怠期に陥っていた妻の料理が、数倍美味しく感じられるかもしれません。また、お世話になった方への贈り物として選べば、間違いなく喜んでもらえるはずだ。400年の歴史を持つ伊万里・有田焼に興味を持った人は、窯元を訪ねてみてもいい。
究極の陶磁器は洗練されたデザインと美しいフォルムで、観光客を魅了し続ける。佐賀県を訪れた際は、ぜひお土産として購入することをおすすめしたい。また通販等でも販売されているので、窯元を調べながらウィンドウショッピングするのも楽しいだろう。
知名度 ★★★★★★★★★☆ 9
成功度 ★★★★★★★★★☆ 9
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<佐賀県 伊万里・有田焼 公式ホームぺージ>
長崎べっ甲(長崎県)(目次に戻る
2017年。「長崎べっ甲」は国の伝統工芸品に認定された。江戸時代に中国から伝えられたと言われ、黒とオレンジの混ざった美しい”べっ甲細工”は、長崎県民の生活に溶け込んでいる。しかし、伝統工芸品に認定されるまでの道のりは決して平たんではなく、様々な困難を乗り越えてたどり着いたことを理解してほしい。
長崎べっ甲の材料は”タイマイ”というウミガメの甲羅である。加工工程は多岐にわたり、職人が手間ひまかけてようやく完成する。特に高温の鉄板でプレスする工程は、熟練の技が必要とされている。べっ甲細工は発祥地の中国を中心に流行した。しかし、材料のタイマイが乱獲された結果、絶滅が危惧されるようになり、ワシントン条約で捕獲が禁止される。日本は甲板(甲羅)を輸入していたが、それも1993年に禁止された。
現在も長崎べっ甲は製造・販売されている。”輸入が禁止されたのでは?”と疑問に思うだろう。今作られているべっ甲細工は、1993年以前に輸入された甲板を使って製造しているのだ。タイマイを捕獲すれば国際法違反で厳しい制裁金が課されてしまうが、手元にある材料を使うのであれば問題ない。しかし、甲板の残量には限りがある。全国で活動しているべっ甲細工職人と販売元は、苦しい状況に追いやられていた。
人間が何も考えずにタイマイを乱獲した結果、長崎べっ甲細工は存続出来るか否かの瀬戸際に立たされている。将来、絶滅危惧種の指定が解除されるかは分からない。しかし、伝統工芸品を継承するには甲板が欠かせない。タイマイと長崎べっ甲の両方を守るべく、長崎県と職人たちはべっ甲細工の営業・販売活動を行った。その結果、国の伝統工芸品に認定されたが、自然と伝統工芸品、両方を守る方法はまだ見つかっていない。
前述の通り、絶滅危惧種の指定が解除され、日本への輸入が解禁されるかは誰にも分からない。しかし、べっ甲職人たちは限られた材料を一切無駄にせず、地道に伝統工芸品の継承と販売を継続している。素晴らしい技術と品が100年後の日本でも継承されていることを心から願う。
知名度 ★★★★★★★★☆☆ 8
成功度 ★★★★★★★☆☆☆ 7
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<日本伝統文化振興機構 公式ホームぺージ>
博多人形(福岡県)(目次に戻る
400年以上の歴史を持つ「博多人形」。独特のデザインと暖かみのある色使いは、見る者を優しい気持ちにさせる。主にインテリア品として親しまれており、日本を代表する人形ブランドになった。なお、人形部門で全国初の伝統工芸品認定も受けている。
博多人形は粘土で作られているため、一般的な”おもちゃの人形”とは扱い方が全く異なる。高温に弱い為、室内で保管することはもちろん、直射日光も避けなければならない。また、極度に乾燥した場所を避け、触る時は柔らかい布や手袋を使用し、直接触れないほうがよい。表面の埃や汚れを落としたいときは、乾燥した柔らかいブラシや筆を使おう。手入れをしっかり行えば、何十年も美しいデザインを維持することが出来るはずだ。
博多人形は、福岡県を代表する伝統工芸品になった。値段はピンキリだが、数千円で買えるものがほとんどである。中高年層から圧倒的な支持を受け一定の需要があることから、県内には多くの人形工房がある。また、”人間国宝”に認定されている方が製作した品も流通しており、もしかすると意外なところで素晴らしい博多人形に出会えるかもしれない。
お土産としても人気があり、子供の好むデザイン(キティちゃん等の人気キャラクター)も発売されている。透明のケースに入れて保存すれば、お手入れの手間を省き、可愛い状態を維持することも出来るだろう。個人的におすすめしたいのは”ひな人形”で、男性でも見ていて飽きないほどだ。女性にプレゼントすれば間違いなくハートを射止めることが出来る(気がする)。
400年以上の歴史を持つ博多人形は、今でも変わらず人々を魅了し続けている。独特なデザインと暖かみのある色使いに興味を持たれた方は、福岡県内で行われているイベント等にも参加してほしい。展示会や製作工程の見学、絵付け体験などが出来る工房もあるので、購入と合わせて楽しもう。
知名度 ★★★★★★★★★☆ 9
成功度 ★★★★★★★★☆☆ 8
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<福岡人形商工業協同組合 公式ホームぺージ>
琉球ガラス(沖縄県)(目次に戻る
超人気観光地として支持される沖縄県には、有名なスポットや人気料理等がある。美しい海、首里城、ゴーヤチャンプルー、引退した超人気歌姫・・・毎年多くの観光客を受け入れてはいるが、沖縄県の伝統工芸品を知っている方は意外と少ないはずだ。ここで紹介する「琉球ガラス(沖縄ガラスともいう)」は、美しい沖縄の海をそのままガラス細工にしたような素晴らしさを誇っている。
県内のお土産物店には、必ずと言っていいほど琉球ガラス商品が置かれている。値段も手頃で種類も豊富。ロックグラスは2,000円ほどで購入出来る。様々な色の商品があり、個人的には表面に”凹凸”のあるブルーのグラスをおすすめしたい。県民の生活に深く根付いている琉球ガラスは、沖縄県の伝統工芸品に認定された。
琉球ガラスは17世紀の”琉球王朝時代”に伝来したと言われている。なお、製造方法は一般的なガラス製品と同じだ。原料の配分を調整し色を決め、1000℃を超える高温で一晩熱する。アツアツのガラスに空気を吹き込み成形すれば完成である。製作工程を見学、体験出来る工房もあり、自分だけの”マイグラス”を作れば一生の思い出になるだろう。
長い歴史を持つ琉球ガラスは、様々な形に姿を変え、多くの方に親しまれている。なお、2,000円以下の商品だけでなく、数十万円する花器などの高級品も存在する。ネックレスやイヤリングなども販売されており、家族や恋人へのプレゼントとしてもおすすめしたい。落とせば割れてしまうため、取り扱いには注意しなければいけないが、大切に扱わなければ”はかなく壊れてしまう”点も、琉球ガラスの魅力かもしれない。なお、割れやすいわけではないのであしからず・・・
最後に、沖縄県糸満(いとまん)市にある”琉球ガラス村”を少しだけ紹介したい。県内最大のガラス工房では、製作工程の見学、体験、ここでしか手に入らないオリジナル商品も揃っている。妻と旅行で訪れた際、ネックレスをプレゼントして喜ばれたことは今でも鮮明に覚えている。沖縄県を訪れた際は、海でのレジャーだけでなく、ぜひ伝統工芸品の素晴らしさも体感してほしい。
知名度 ★★★★★★☆☆☆☆ 6
成功度 ★★★★★★★★☆☆ 8
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<琉球ガラス村 公式ホームぺージ>
屋久杉工芸品(鹿児島県)(目次に戻る
世界自然遺産に登録されている”屋久島”といえば、多くの方が”縄文杉(屋久杉)”を思い浮かべるはずだ。太古の森深くにある樹齢4000年以上の超巨木には、日本のロマンがぎっしり詰まっている。鹿児島県が伝統工芸品に認定した「屋久杉工芸品」は、屋久島で間引きされた杉が使われている。
”貴重な樹木を切ってもいいのか?”と思うだろうが、所定の手続きを正しく行っていれば問題ない。太古の森とはいえ、人間がある程度手入れを行っていることも知っておこう。樹木を間引きすれば、森全体が健康な状態を維持出来る。屋久杉工芸品は、森全体を守るべく犠牲になった杉を使って製作されることになった。
屋久杉工芸品の歴史は浅く、第二次世界大戦終結後に誕生した。椅子や机などの家具として利用され始め、今では置物やボールペン、マグカップなども作られている。世界自然遺産登録後も商品の供給は継続され、知名度は大きく向上した。なお、屋久杉は標準的な杉よりも数十倍太く、搬出や加工は困難を極める。また、商品として加工するためには芯まで乾かす必要があり、その期間は最低3年、長いものは15年以上かかる。
屋久杉工芸品を販売する店舗は日本中に進出し、鹿児島県以外でも素晴らしい商品が供給されるようになった。伐採可能な本数に限りがあり、一般的な家具に比べると手に入りにくく値段は割高になるが、品質は日本最高品質を誇っている。工房の職人に話を聞くと、”世界自然遺産の名を汚す商品は作れない”と力強く語ってくれた。
観光地として有名な屋久島だが、素晴らしい伝統工芸品があることも知っていただきたい。なお、屋久杉製の工芸品は通販等でも購入出来る。個人的にはマグカップをおすすめしたい。電子レンジは使えないが、木のぬくもりを感じながら飲むコーヒーは格別である。専門店では大型家具や仏壇等も販売されているので、興味のある方はチェックしよう。
知名度 ★★★★★★★★★☆ 9
成功度 ★★★★★☆☆☆☆☆ 5
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<屋久杉館 乾 公式ホームぺージ>
おばけの金太(熊本県)(目次に戻る
「おばけの金太」は、熊本県の伝統工芸品として古くから県民の生活に溶け込んでいた。しかし、子供たちからは恐れられ、大人でも夜中にそれを見ると叫び声を上げずにはいられない。400年の歴史を持つおばけの金太は、天下人”豊臣秀吉”の元で奉公した”加藤清正”の部下がモデルと言われている。”おどけの金太”と呼ばれる足軽は、人を驚かせる(楽しませる)名人だった。
まさか金太も、自分が”からくり人形”になって現代まで語り継がれるとは夢にも思わなかっただろう。”酒を愛しいつも顔が真っ赤だった”、”宴会が始まると必ず中心にいる”などの逸話を持つ男は、おばけの金太に生まれ変わって現代人を驚かせている。なお、その風貌は決して可愛いとは言えず、初めて見た方は”さらし首”をイメージするかもしれない。しかし、付属の紐を引っ張ると”目玉がひっくり返る”、”アカンベエする”などのアクションを見せてくれるから、とても面白い。
”さらし首にあかんべえさせたらアカン”と言いたくなるが、からくり人形なので堪えてほしい。製作工程は全て手作業で行われ、最大の特徴である”からくり付け”は熟練の技を必要とする。また、伝統工芸品に認定されたことで、様々なオモシログッズも発売されている。熊本県を代表する”ゆるキャラ”ともコラボしており、”お化けのくまモン”は子供にもおすすめしたい商品のひとつだ。
19世紀中頃に誕生したお化けの金太は、当時の子供たちを楽しませる娯楽商品だったのかもしれない。現代でいうと、プレイステーション4や仮面ライダー変身ベルトと同じ立ち位置になるだろう。その大きさは片手に乗るものから超特大サイズと様々で、値段も大きく異なる。興味のある方は通販等でも販売されているのでチェックしてみよう。
おばけの金太は、戦国武将の足軽をきっかけに誕生した”一味違う”伝統工芸品としてこれからも人々を楽しませ続ける。熊本県を訪れた際には”阿蘇カルデラ”やくまモンだけでなく、さらし首と揶揄されてきたお化けの金太にぜひ会って欲しい。お土産に購入すれば、素晴らしいネタを提供出来るだろう。また特大サイズも30万円弱で購入出来るので覚えておこう。
知名度 ★★☆☆☆☆☆☆☆☆ 2
成功度 ★★★☆☆☆☆☆☆☆ 3
外部サイトへのリンク
<もっと、もーっと!くまもっと 公式ホームぺージ>
かるい(宮崎県)(目次に戻る
南国リゾート宮崎県には、数千年の歴史を持つ(諸説なり)伝統工芸品がある。「かるい」と呼ばれる”竹製のカゴ”は、”ヤマタノオロチ”や”天照大神”の時代から脈々と受け継がれてきた。なお、竹がいつ地球上に誕生したかは現代科学でも解明されていない。”かるい”は、人類が生まれて間もない頃から”原人(先住民)”たちの生活を助けていたのだろう・・・
ロマンの詰まった”かるい”は、割かれた竹の幹を編み合わせて作られる。肩掛け紐を取り付ければ、味のある”リュック”に様変わりするから驚きだ。果樹園で働く方が、その中に収穫した果実を入れるところを見たことがある。恐ろしい繁殖力を誇る竹を利用し生活必需品のカゴを使った原人たちは、素晴らしい知能を誇っていたと認めざるを得ない。強度にも優れ、雨風にも強く、現代社会でも十分利用価値はあると言えるだろう。
”かるい”が欲しいという方は、自分で編むか宮崎県を訪ねよう。なお、通販等では手に入らず、農協に行けばもしかすると販売されているかもしれない。高千穂地方で愛用されている”かるい”は、正面から見ると四角形、側面から見ると三角形の独特な形状をしている。現地では装飾品や小物入れサイズの品も販売されているため、観光スポットとして知られる”高千穂牧場”を訪れた時は、ぜひ土産物店にも立ち寄ってほしい。
”かるい”の編み方は、宮崎県にある工房等で受け継がれているが、その数は確実に減少している。太古の昔から受け継がれた技術と工芸品が我々の世代で途絶えるのはあまりに勿体ない。リュックやカバンが当たり前の世の中になったが、”かるい”の出番が無くなった訳ではないと確信している。リンゴ、ミカン、その他の果物農家にはまだまだ需要があり、これからも継続して使われること願ってやまない。
ヤマタノオロチや天照大神と聞き熱いものを感じた方は、ぜひ”かるい”の素晴らしさを吹聴してほしい。また自分で竹を伐採し、手作りの”かるい作り”にも挑戦しよう。編み方は下記のリンクを参考にすれば何とかなるはずだ。ただし、人の土地に無断で入り伐採すると、不法侵入、無断伐採で逮捕される。作業する時は地権者に許可を貰うことをお忘れなく。
知名度 ★☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 1
成功度 ★☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 1
外部サイトへのリンク
<竹の編み方 竹虎 公式ホームぺージ>
日田下駄(大分県)(目次に戻る
”カランコロン”と足元から乾いた音を立てる下駄。田舎町では今でも普通に見かけるが、東京や大阪などの都会では見たことがない。なお”葛飾区亀有”あたりでは警察官が普通に履いているらしい。しかし、遭遇出来るかは不明である。大分県の伝統工芸品「日田(ひた)下駄」は、古き良き時代を思い出す素晴らしい一品と言えるだろう。
現代人は当たり前のように靴を履いているが、一昔前は下駄が正装だった。誰もが素足で履き、”水虫”などの足の病気も存在しなかったのだ。着物との組み合わせは至極であり、天然記念物になりつつある”浪平スタイル”が当たり前の時代・・・生活様式の変化により日田下駄を製作する職人たちは苦戦を強いられていた。しかし、決して需要が無いわけではなく、時代の潮流に合わせてスタイルを変化させることにも成功している。
日田下駄は、”BEAMS”などのブランド商品とコラボした”ニュージェネレーション下駄”を発表した。靴やサンダルに正面から戦いを挑み、今でも努力を続けている。夏祭り等のイベントだけでなく、普段使い出来る可愛いデザインの商品も発売されており、女性を中心に”静かなブーム”を巻き起こしつつある。下駄の素晴らしい点は、いつでも快適な足元でいられることだろう。パンプスやハイヒールばかり履いている女性は、ぜひ日田下駄の履き心地を体感してほしい。
足の病気に苦しむ日本人は年々増えている。通気性最悪の革靴を履いている”サラリーマン”たちは、妻、会社、子供の養育費、そして水虫との戦いで疲弊しきっているのだ。心当たりのある方、休みの日ぐらいは通気性のよい下駄を履こう。カランコロンと足元を鳴らしながら歩けば、すれ違う人たちの注目を集めることも出来る。ムレムレの靴を履いている人たちから羨望の眼差しを向けられるだろう。
日田下駄は通販等でも購入できる。職人たちが一足ずつ丹精込めて作った商品は、頑強でなかなか壊れないと評価も高い。値段は決して安くないが、快適な足元を実現させる方、家族や水虫のことで悩んでいる方、ぜひ素晴らしい履き心地を体感してほしい。なお、車の運転や運動には不向きであることもお忘れなく。
知名度 ★★★★★☆☆☆☆☆ 5
成功度 ★★★★★★★☆☆☆ 7
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<日田地域産業振興センター 公式ホームぺージ>
肥前びーどろ(佐賀県)(目次に戻る
肥前藩(佐賀藩)と聞き、大半の方は”大隈重信”をイメージしたはず。第8代内閣総理大臣を務めた宰相は、九州地方を代表する偉人の一人である。そんな肥前藩から誕生した伝統工芸品(重要無形文化財)「肥前びーどろ」は、100年以上の歴史を持つガラス細工として知られている。”きめの細かい肌触り”が特徴で、型を一切使わない”ジャッパン吹き”という技法を採用している。
肥前ビードロは、日常使い出来るガラス製品として佐賀県民の生活に溶け込んだ。量販店で売られている食器に比べると多少値は張るが、美しいデザインは自宅での食事を数段グレードアップしてくれる。なお、私はペアのワイングラス(6,000円ぐらいと記憶している)を購入し、今でも大切に使っている。デザインが恐ろしく可愛いので、お土産等にもおすすめしたい。
肥前びーとろの製造工程は非常にシンプル(簡単ではない)だ。熱したガラスに息を吹き込み形を整えるだけである。しかし、一般的に使われる”吹き竿”は使用せず、特注の”ガラス製吹き竿”を使う。これにより、熱してから成形されるまでの間、本体は空気以外のものと一切触れることがない。結果、”きめの細かい肌触り”を持つ製品が完成する。
職人技とガラス本体への配慮がミックスされ、美しい肥前ビードロは誕生した。佐賀県には今でも10社近くの会社(工房)があり、県民や観光客を満足させるガラス製品が供給されている。また新商品の開発にも余念がなく、興味のある方はオンラインストアをぜひチェックしてほしい。前述の通り、私がおすすめしたいのはワイングラスである。形、デザインとも申し分なく、来客者に使ってもらえば間違いなく羨ましがられるだろう。
シンプルな食器やコップも悪くはないが、誕生日、クリスマス、正月などのイベント時に肥前びーどろを使えば、家族はもちろん、恋人にも喜んでもらえるだろう。数千円払うだけで食事のグレードを数段上げれるのだ。倦怠期に陥った妻との関係を取り戻したい方は、二人分のワイングラスと間もなく解禁される”ボジョレー・ヌーヴォー”を準備しよう。
知名度 ★★★★☆☆☆☆☆☆ 4
成功度 ★★★★★☆☆☆☆☆ 5
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<佐賀県重要無形文化財 肥前びーどろ 公式ホームぺージ>
五島さんご(長崎県)(目次に戻る
長崎県の西100kmの位置にある五島列島。そこは100以上の島が連なり、世界文化遺産に認定された”隠れキリシタン関連施設”も数多く存在する。現地を訪れた際には、そこでしか手に入らない伝統工芸品をぜひ購入してほしい。「五島さんご」は、海底深くで取れる珊瑚を加工し作られる。通販等では手に入らず、五島市にある2つの店舗(工房)でのみ購入可能だ。
珊瑚を加工、彫を入れ成形する工程を”五島彫り”という。熟練の技術が必要で、腕のない者が触ると希少な珊瑚を台無しにする恐れがある。五島市の”田中さんご店”を訪れた際、珍しさのあまりネックレスや指輪をまとめて購入したのは良い思い出だ。現地でのみ手に入る点もマニア心をくすぐる。しかし、何より素晴らしいのは、完全手作業で作られているため、”同じ製品は地球にひとつもない”という点だ。
五島市で捕れる珊瑚の量は年々減っている。希少生物であり、自主的に採取制限を設けているようだが、海洋汚染や地球温暖化等も影響しているようだ。”捕れなくなったら輸入すればいい”と思うだろう。しかし、独特な赤身を帯びた”五島珊瑚”は、東シナ海の”男女群島”近海でしか捕れない。もし絶滅するようなことになれば、五島彫りの技術と文化は消滅するかもしれない。なお、絶滅危惧種に指定された時点で捕獲出来なくなるので、その時は何かしらの対策が必要だ。
海の恵みを活かした五島さんごは、今後希少価値の高い伝統工芸品になる可能性がある。商品になる珊瑚本体が捕れなくなった時点で、生産を継続することは困難だろう。将来プレミアがつくかは分からないが、興味のある方や少しでも五島市の力になりたい方は、現地を訪れてほしい。なお、旅館などの施設は充実しており、今流行りの”民泊型宿泊所”も利用出来る。世界文化遺産を見学し、五島さんごの商品を購入すれば、島民の皆さんも喜んでくれるだろう。
知名度 ★★★★☆☆☆☆☆☆ 4
成功度 ★★☆☆☆☆☆☆☆☆ 2
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<長崎県の伝統工芸品 五島さんご 公式ホームぺージ>
博多織染織品(福岡県)(目次に戻る
福岡県の伝統工芸品に認定されている「博多織(染織品)」。頑強に織り込まれた絹糸は、織物とは思ええない強さを誇る。また、美しいデザインは老若男女に愛され、様々な形に姿を変えて日常生活に溶け込んでいる。その名を全国に知らしめた”着物の帯”は、”一度締めれば決して緩まない”、”帯の中の帯”、”究極の締め具合”等の圧倒的な支持、称賛を受けた。
博多織の製作工程は多岐にわたる。設計、作図、絹糸の準備、製織と文字にすれば簡単そうに思えるが、ひとつの生地が完成するまでの期間は早くて数カ月、デザイン等によっては半年から1年かかるという。福岡県内には博多織の工場(工房)が複数箇所あり、緻密な作業を行う専門の職人たちが恐ろしい時間をかけて生地を供給し続けている。もちろん全て手作業であり、機械を使った工程はほとんどない。
800年近い歴史を持つ博多織は、日本が世界に誇る伝統工芸品に成長した。何より素晴らしいのは、着物の需要が減少する中でも結果を出し続け、現代人の生活にあった製品も開発している点だ。ネクタイ、ハンカチ、カバン、財布などの小物類にまで博多織は使われるようになった。着物と帯だけにこだわっていれば、ブランドがここまで成長することはなかったはずだ。
博多織の勢いはとどまることを知らず、何と職人養成学校(専門学校)まで作ってしまう。人間国宝に認定された”プロ中のプロ”が教鞭を執っており、毎年多くの門下生を送り出しているという。他の伝統工芸品もぜひ見習ってほしいが、ここまで素晴らしい結果を残すには、命を捨てる覚悟と根性が必要だろう。世界に認められた後も努力を惜しまない博多織職人の未来は明るい。
九州を代表する伝統工芸品に興味を持たれた方は、小物類から購入することをおすすめしたい。サラリーマン戦士の必需品、定期券入れや名刺入れなども販売されている。変わり種としては”タンブラー”などいかがだろうか。側面に博多織をあしらうだけで一気におしゃれ度が倍増する。”俺、仕事出来るぜ”、”俺、クールだろ?”とアピールしたい方はぜひ。
知名度 ★★★★★★★★★☆ 9
成功度 ★★★★★★★★★★ 10
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<福岡の伝統的工芸品 HAKATAORI 公式ホームぺージ>
肥後こま(熊本県)(目次に戻る
”独楽(こま)”の歴史は古く、平安朝時代に唐から持ち込まれたと言われている。1000年以上の歴史をもつ素晴らしい玩具だが、今ではその姿を見ることはほとんどなくなった。子供がこまを回し遊んでいたのは遠い昔のことである。文化自体が消え去った訳ではないが、スマートフォンやゲームの勢いには敵わないだろう。しかし、頭の良いこまは、伝統工芸品に形を変えて受け継がれることに成功した。
熊本県で作られている「肥後こま」は、昔から変わらぬデザインとフォルムを脈々と後世に伝えている。しかし、古き良き時代の玩具を作るだけでは、AI社会になりつつある現代日本で生き抜くことは出来ない。伝統工芸品に認定されてはいるが、ただ手をこまねいているだけでは、子供の支持は得られないのだ。肥後こまは、スマートフォンやゲームに戦いを挑まなかった。
もちろん玩具としての役割を捨てた訳ではない。しかし、凝り固まった考えは身を亡ぼす。こま職人たちは英断を下した。”美しいフォルム”とデザインを活かし、”縁起物”として売り出せば良いのではないか・・・肥後こまは、お祝い場ので提供されることが多くなった。正月、ハロウィン、七五三、クリスマスなどの行事に進出し、熊本県民に親しまれている。ニスを塗られ”テカテカ”に光り輝く姿は、芸術品と言っても過言ではない。
肥後こまは、コヤス(エゴノキ)などの堅くて丈夫な樹木で作られている。最近はもっぱら観賞用として皆に支持されているが、いつ”回れこま”と地面に放り出されるか分からない為だ。柔らかい材質であれば、すぐ”芯”がダメになってしまうだろう。製作工程は”削り、調整、整形”に分かれている。木材の切り分けは機械を使っているが、それ以外は全て職人が手作業で行う。真っすぐクルクルと回るには、完璧な”左右対称(シンメトリー)”に仕上げなければならず、恐ろしく緻密な作業が必要とされる。
肥後こまは縁起物、”鑑賞品”としての地位を確立しつつも、回ることを忘れてはいない。いざという時には”バトル”に赴く覚悟も出来ているのだ。久しぶりにこまを回したくなった方、七五三用のプレゼントを考えている方は、ぜひ肥後こまを思い出してほしい。なお、観賞用の”BIGサイズ”は、部屋のインテリアとしてもおすすめだ。
知名度 ★★★☆☆☆☆☆☆☆ 3
成功度 ★★★☆☆☆☆☆☆☆ 3
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<肥後こま工房 トップクラフト 公式ホームぺージ>
別府竹細工(大分県)(目次に戻る
日本一の”マダケ(真竹)”生産量を誇る大分県。大半の人は竹を”恐ろしい繁殖力を誇る危険植物”と認識しているはずだ。その起源は現代科学でも解明出来ず、”核戦争で人類が滅んでも竹は滅ばない”と恐れられている。田舎に住む方たちは、竹の凄まじい繁殖力に苦しめられてきた。”切っては生え切っては生え”の繰り返しに私自身もウンザリしている。
国の伝統工芸品に認定されている「別府竹細工」は、主にマダケで作られている。宿敵が素晴らしい品に形を変え、今でも日用品として重宝されているから驚きである。さらに海外でも高い評価を受け、ニューヨークやパリで展示会まで開かれたしまった。別府竹細工は日本を飛び越え、世界の頂点に君臨する”巨大都市”で受け入れられたのだ。”ニューヨーカーはマダケの恐ろしさを知らない”と考えたあなた。まさにその通りである。
アメリカでは観葉植物として竹が人気を博している。庭に植えれば自宅が美しい景色に様変わりと考えたのだろう。自然が増えるのは素晴らしいことだと思う。しかし、奴らの繁殖力は尋常ではない。一度植えれば、根絶するのはほぼ不可能。恐ろしい勢いで領土を広げ、気がつくと隣の家に侵食していたりする。訴訟問題に発展したケースもあるが、今でも竹ブームは一向に止む兆しがない。
別府竹細工は、世界に認められた人気ブランドにのし上がった。日本人としてこれほど嬉しいことはない。無限に生えてくるマダケを使い利益を得る。材料には間違いなく事欠かないため、人の手さえあれば、製品はいくらでも供給出来るだろう。周囲に目を向けてみよう。マダケはカゴ、カバン、ペン刺しなどに形を変え、あなたの生活にも溶け込んでいるはずだ。凄まじい繁殖力は別府竹細工製品にもしっかり受け継がれている。
自然の恵みを利益に変える別府竹細工がニューヨーカーや”パリコレ”の最新トレンドになる日が来るかもしれない。なお、庭にマダケを植えようと考えている方は、自重することをおすすめしたい。奴らが”10cm厚のコンクリート”突き破って地面に顔を出した時は、畏怖の念を覚えた。自宅が”マダケパーク化”する前に、一度立ち止まって森羅万象の声に耳を傾けてみよう。
知名度 ★★★★★★★☆☆☆☆ 7
成功度 ★★★★★★★★★★★ 11
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<別府市竹細工伝統産業会館 公式ホームぺージ>
五島ばらもん凧(長崎県)(目次に戻る
禍々しい鬼の絵が描かれた「五島ばらもん凧」は、長崎県の伝統工芸品に認定される玩具だ。写真では伝わりにくいが、その大きさは1mを優に超え、2m以上の物もある。男の子の初節句で空に上げれば、たくましい成長と立身出世が約束されるという。なお、”ばらもん”の語源は五島の方言”ばらか(元気がいい、活発)”から派生したとされる。
”隠れキリシタンの関連施設”で有名になった五島市は、人口40,000人弱の小さな街である。世界文化遺産が誕生したことで、観光客は一気に増え、五島ばらもん凧の知名度も上がった。島特有の文化だったものは九州地方にもジワジワと広まり、正月になると他県の公園や河川敷でも姿を見るようになった。奇抜なデザインとカラフルな色合いが好評で、凧揚げ大会に出場すれば他を寄せ付けぬ圧倒的なオーラを放つという。
五島ばらもん凧は、専門の職人が全て手作業で製作している。骨材には頑強な竹を採用し、それを組み合わせれば本体パーツが完成する。空を飛ぶ凧に求められる資質は”軽さと強さ”だ。重ければ身体が宙に浮かばず、弱ければ風の力で木っ端みじんに粉砕されてしまう。両方をバランスよく満たさなければ空を飛ぶことは出来ないのだ。五島ばらもん凧は身体が大きいため、重くなりやすい。さらに受風面積も大きくなり、強度が低ければ空を飛ぶことはままならない。
職人たちは長年の経験と勘で五島ばらもん凧を作り続けてきた。巨体が空を飛ぶ様子はまさに圧巻の一言である。地上からもその姿はよく見えるため、子供たちも大喜びするはずだ。なお、上空でコントロールするのはかなり難しい。子供が凧上げしたいと言ったら、必ず大人が二人以上同行しよう。挑戦したいという方は、標準的な凧でしっかり練習することをおすすめしたい。また、50~60cmサイズの小型ばらもん凧も販売されていることも覚えておこう。
長い歴史を持つ五島ばらもん凧は、玩具として子供だけでなく大人にも愛されている。飛ばすだけでなく、部屋のインテリアとして飾ることも出来るだろう。近年では、五島市のゆるキャラ”バラモンちゃん”も人気を博している。世界文化遺産”隠れキリシタンの関連施設”を訪れた際は、ぜひ五島ばらもん凧の工房を訪ねてほしい。運が良ければバラモンちゃんにも出会えるだろう。
知名度 ★★★★★★★☆☆☆ 7
成功度 ★★☆☆☆☆☆☆☆☆ 2
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<五島民芸 ばらもん 公式ホームぺージ>
本場大島紬(鹿児島県)(目次に戻る
国の伝統工芸品に認定されている「(本場)大島紬」。着物文化が薄れてきた昨今でも、その知名度は抜群だ。他の織物にはない”安心感・安定感のある色使いと味わい”で、多くの人に愛されてきた。しかし、圧倒的なポテンシャルを秘めていても、着物の需要減を食い止めることは出来ていない。大島紬を製作する工房は年々減少し、後継者は育たず、さらに販売量も減るという”負のスパイラル”に陥っていた。
一昔前は”浪平スタイル”のおじさんをよく見かけた。家にいる時や散歩などの小さな用事であれば、着物を着て行動する人のことだ。流石に遠出する時は洋服を着るが、動きやすい着物は日常生活に欠かせないものだった。しかし、今着物を着る機会はほとんどない。女性であれば成人式や結婚式、男性はほぼゼロだろう。自宅ではジャージ、仕事以外で外出する時は、ジーパンとジャケットなどのアウターを組み合わせる。日本人と着物の関係は、倦怠期の夫婦によく似ている。
”セックスレス状態”に陥った日本人と着物は、離婚するか、それとも”もう一度チャレンジするか”の瀬戸際に立たされていた。別れればスッキリすることはお互い理解している。しかし、”本当の良さ”を知っているだけに踏ん切りがつかないのだ。ちなみに、私は倦怠期の妻との”再戦”を果たし、自宅にいる時は大島紬の着物を”装着”している。新世界に進みたいと考えたこともあるが、妻と着物を選んだことに後悔はしていない。
私は、”大島紬、ガチでヤバい”と声を大にして言いたい。決して安い買い物ではないが、絹100%の着心地とそれが放つ王者の風格、圧倒的な覇気は他の着物の比ではない。100以上の細かい工程を経て作られる芸術品は、間違いなくあなたの人生をより一層輝かせてくれる。手入れは面倒だが、”浪平スタイル良いね”と思われた方は、ぜひ日常生活に着物を取り入れて欲しい。
苦しい経営を余儀なくされている大島紬は、着物以外の製品も販売している。ネクタイや財布であれば、生活の中に取り入れやすいだろう。ハンカチ等の女性向け商品は特に充実している。AIやナノテク、量子テクノロジーの時代になっても、古き良き時代を伝える伝統工芸品は継承されてほしい。大島紬に興味を持たれた方は、オンラインストアをチェックしよう。倦怠期の妻との関係も一緒に修復出来るかもしれないぞ。
知名度 ★★★★★★★★★★ 10
成功度 ★★★★★☆☆☆☆☆ 5
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<奄美の里サウスヴィラガーデン 公式ホームぺージ>
まとめ
今回は九州地方の伝統工芸品を紹介した。なお、あくまで個人的な主観で選んでいることをご理解頂きたい。
日本には1000を超える伝統工芸品が存在する。しかし全国的に見れば、”存在すら知らなかった”というものがほとんどだろう。知名度が低く後継者の育成に失敗すれば、伝統工芸品に認定されていても消滅は免れない。今回紹介した20品が100年後、1000年後まで語り継がれることを願っている。また少しでも興味を持たれた方は、ぜひ商品を購入しSNSなどを使って情報を発信してほしい。ひとつの意見がキッカケで人気が爆発する可能性もある。私も倦怠期の妻と伝統工芸品探しの旅を継続しようと思う。最後までお読みいただきありがとうございました。