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コラム:衆議院選2026、各党のエネルギー政策

2026年2月8日投開票の衆議院選挙では、原発政策が各党の立場を象徴する重要な争点の一つとなっている。
高市総理(ロイター通信)
現状(2026年2月時点)

2026年2月8日の衆議院選挙は、与党・自由民主党(自民)と日本維新の会(維新)連立が政権の信を問う構図で行われる。選挙公示後、立憲民主党と公明党が合流し「中道改革連合(中道)」を結成したことで、従来の与野党の対立構造に大きな変化が生じている。選挙戦では経済政策、消費税・物価対策と並んで、エネルギー政策・原発のあり方が重要なテーマとなっている。特に東日本大震災後の原発事故の教訓と、電力需給の不安定さ、GN、脱炭素政策という三重の課題が複合して影響している。

世界的に気候変動が深刻化する中、日本政府は脱炭素と電力安定供給を両立するためのエネルギー基本計画を更新し、原子力の役割をどう位置づけるかが政策の中心争点になっている。また、福島第一原発事故から15年以上を経て再稼働や安全性、地元合意のあり方が焦点になっている。こうした状況を受け、各政党は原発に対して異なる立場を示している。


各党の原発政策(総論)

衆院選2026の各政党は公約・マニフェストで原発政策を明確に掲げているが、政策方向は党によって大きく異なる。「原発推進(再稼働・新増設含む)」、「条件付き再稼働容認・将来的依存度低減」、「原発即時廃止・ゼロ」という三つの主な立場に整理できる。

  1. 原発推進・最大限活用:自由民主党、日本維新の会、国民民主党の立場。原発の早期再稼働・次世代原子炉の研究推進を訴え、エネルギー安定供給の機能として原子力を重視する。

  2. 条件付き再稼働容認・将来的依存度低減志向:中道改革連合(立憲+公明)。安全性や避難計画、地元合意を前提に再稼働を容認しつつ、将来的に原発依存度を減らす方向を標榜。

  3. 即時廃止・脱原発:日本共産党、れいわ新選組など。原発ゼロを基本政策とし、再稼働や新増設を全て否定する。

これらの政策は、電力需給・経済安全保障、脱炭素化の視点と絡み合うため、単なる安全性の是非を超えた幅広い政策競争になっている。


エネルギー安全保障

日本は天然資源の乏しさからエネルギーの安定供給を戦後一貫して重要視してきた。化石燃料依存が高かったが、脱炭素化政策の進展とともに原子力が一時的に再評価されている。電力需給の観点からは、再生可能エネルギーの導入や省エネと同時に、原発の再稼働は一定の安定供給に寄与すると位置づけられている。

自由民主党や維新、日本維新の会に属する候補者は、原発の再稼働・次世代炉の活用をエネルギー安全保障の柱とする方針を掲げている。これらの政党は、特にピーク需要への対応や電気料金安定化のため原発の活用を主張する。国民民主党も原発を「電力供給基盤における重要な選択肢」として原発最大活用を標榜し、安全審査の合理化を提言している。

一方、中道改革連合は再稼働を含めるが、安全性確保と実効性ある避難計画、地域の合意を強調し、無条件の推進には慎重な立場を取る。これにより地域の理解と安全性の確保を両立する方針を示す。

対照的に、日本共産党やれいわ新選組は原発即時廃止・再稼働および新増設の禁止を掲げ、エネルギー安全保障を再生可能エネルギー主体で確保することを訴えている。彼らは原発リスクが高いと主張し、化石燃料からの脱却を含む再生可能エネルギーへの全面転換を訴える。


脱炭素

脱炭素政策は世界的な流れであり、日本でも2050年カーボンニュートラル目標を掲げる中、エネルギー政策が再評価されている。原子力発電はCO₂排出が少ないという性質上、脱炭素政策をどう位置づけるかが各党の論点となっている。

自由民主党や維新は、原子力を脱炭素化の現実的な選択肢として位置づける。これは、再生可能エネルギーの導入拡大と並行して原発の役割を維持するという「現実的両立」戦略であるといえる。一部メディアの分析によると、与党は火力発電や原子力の併用を重視する姿勢を示している。

中道改革連合は脱炭素を重視しつつ、原発の安全性と地域理解を条件に再稼働容認を組み合わせるため、脱炭素と安全確保のバランスを強調する。

一方、共産党やれいわ新選組は、原発は潜在的な事故リスクや廃棄物問題の観点から脱炭素政策の枠内でも排除すべき対象としている。彼らは再生可能エネルギー・省エネ政策を強化し、原発に頼らない「グリーンエネルギー主導」の脱炭素戦略を訴える。


主要各党の原発政策

以下、主要政党ごとに衆院選公約やマニフェストに基づく原発政策を整理する。

自由民主党:最大限活用

自由民主党は原発の再稼働を推進し、次世代原子力技術の開発・活用を進める方針を掲げる。具体的には、既存原発の安全性確認・再稼働の推進、次世代型革新炉の研究・建設、核燃料サイクル政策の継続などを含む。また、再エネの導入拡大とともに安定的かつ競争力のあるエネルギー供給の確保を目標としている。これはエネルギー安全保障と経済競争力の観点から現実的選択肢と位置づけられる政策である。


中道改革連合(立憲民主党+公明党):着実な依存度低減

中道改革連合は、従来の立憲民主党が掲げてきた「原発ゼロ」志向から方針転換し、条件付きで原発再稼働を容認する政策を採用している。公約では、安全性が確実に確認され、実効性ある避難計画と地元の合意が得られた場合に再稼働を進めるとしている。将来的に原発への依存度を低減させる方向性を打ち出し、再生可能エネルギーの最大限活用も併せて訴えている。


日本維新の会:積極活用・市場化

日本維新の会は原発の早期再稼働・効率的審査推進、新増設や次世代革新炉の活用を積極的に主張する。党公約は再稼働とともに、規制審査の効率化や新技術開発の促進を掲げるなど、原発を市場メカニズムに組み込みつつ安全性と効率性を重視している。


国民民主党:安定供給重視

国民民主党は原発を電力供給の重要な選択肢として位置づけ、再稼働を進めるとともに審査の合理化を打ち出している。次世代原子炉の開発や自衛隊による原子力施設の保護強化なども示唆され、安定供給重視の現実的選択として原発を位置づけている。


日本共産党:即時廃止

日本共産党は、全ての原発の再稼働・新増設を認めず、即時廃止を目指すことを公約の中心に据えている。原発ゼロ基本法制定や核燃料サイクルからの撤退、廃炉ロードマップの再検討、事故後始末費用の汚染者負担原則などを訴えており、脱原発と再生可能エネルギーへの全面転換を主張している。


れいわ新選組:即時廃止

れいわ新選組も原発即時廃止を掲げており、原発関連施設の使用禁止・国家による買い上げと廃炉推進を主張する。廃炉ニューディール政策を通じて被災者の支援や再生可能エネルギーへの転換を訴え、原発リスクの即時除去を提案している。


衆院選の主な論点

衆院選における原発政策は以下の主要論点に集約される。

次世代革新炉の新増設

原発推進派の政党は次世代革新炉(SMR等)の導入を政策として掲げている。これは安全性・効率性の向上を期待したエネルギー戦略の一環である。一方、廃止派はこれを新たなリスクとコストと見なし、否定的である。


再エネ賦課金の見直し

再生可能エネルギー普及のための賦課金制度は、原発推進派・脱原発派双方で評価が分かれる。ある政党は再エネ賦課金見直しを主張するが(例:参政党の訴えではFIT制度と賦課金の廃止が掲げられている)、他党は脱炭素のため再エネ支援継続を重視する。


核のごみ問題

原発政策では、核廃棄物の最終処分(高レベル放射性廃棄物処分)が重要な技術的・社会的課題である。推進派の党は処分場選定や技術開発を進める方針を示す一方、反対派は処分問題の不透明性と安全性を理由に原発廃止を主張する。


今後の展望

2026年衆院選後の政権構図によって、原発政策の方向性は大きく変わる可能性がある。与党が多数を維持する場合、原発活用・次世代炉研究などが進む可能性がある。中道勢力が議席を伸ばした場合、安全条件付き再稼働・脱炭素との調和が重視される展開が予想される。野党勢力(共産・れいわ等)が議席を伸ばした場合、脱原発・再エネシフトの議論が高まる可能性がある。


まとめ

2026年2月8日投開票の衆議院選挙では、原発政策が各党の立場を象徴する重要な争点の一つとなっている。与党および中道勢力は再稼働を含む現実的な電力政策を掲げ、エネルギー安定供給を重視するのに対し、共産党やれいわ新選組は原発廃止による安全・脱炭素を強調している。原発政策は日本のエネルギー安全保障、経済競争力、脱炭素目標という三つの大きなテーマを巡る政治的選択の核心である。


参考・引用リスト

  • Japan’s snap election: Who’s running, what they stand for (The Independent).

  • 衆院選公示を前に党首討論会 各党“重要政策”は?(ANNニュース)

  • 立憲と公明が新党「中道改革連合」を結成(KSB ANN)

  • 「原発・エネルギー政策」主要各党の公約(テレビ朝日系まとめ)

  • 各党の原発・エネルギー公約の比較(ABEMA TIMES)

  • 各党選挙公約のエネルギー・気候変動政策分析(気候ネットワーク)

  • 中道結成で原発政策の変化を分析(毎日新聞 PREMIER)


追記:日本のエネルギー安全保障の現状

エネルギー自給率の構造的低さ

日本のエネルギー安全保障を考える上で最も基本的な指標はエネルギー自給率である。日本の一次エネルギー自給率は主要先進国の中で極めて低く、長年にわたり10%前後で推移してきた。東日本大震災以前は原子力発電が「準国産エネルギー」として位置づけられ、これを含めたエネルギー自給率は20%前後まで引き上げられていたが、原発停止後は再び大きく低下した。

この低自給率は、日本がエネルギー資源をほぼ海外に依存しているという構造的問題を示している。石油、石炭、天然ガスの大半を輸入に頼り、その多くが中東やオーストラリア、ロシアなど地政学リスクを抱える地域に集中している。このため、日本のエネルギー供給は国際情勢、為替、輸送路の安全性に強く左右される。

国際情勢とエネルギーリスク

近年の国際情勢は、日本のエネルギー安全保障の脆弱性を浮き彫りにしている。ウクライナ戦争以降、天然ガス市場は世界的に不安定化し、LNG価格の高騰が電力料金や産業コストに直接的な影響を与えた。日本は長期契約によって一定の安定性を確保しているものの、スポット市場の価格変動や需給逼迫の影響を完全に回避することはできない。

また、台湾海峡や中東情勢の緊張は、シーレーン(海上輸送路)の安全確保という観点からも重大なリスクである。日本のエネルギー輸入の多くはマラッカ海峡など特定の航路に依存しており、これらが遮断される事態は国家経済に致命的な影響を与えかねない。

エネルギー安全保障の再定義

こうした背景から、日本のエネルギー安全保障は単なる「資源確保」から、「多様化」「国内供給力の確保」「価格安定性」「脱炭素との両立」を含む包括的概念へと再定義されている。原子力、再生可能エネルギー、火力発電のバランスをどう取るかが、エネルギー安全保障政策の中核となっている。


日本が火力発電依存から脱却できない理由

電力系統の特性と即応性

日本が火力発電依存から脱却できない最大の理由の一つは、火力発電が持つ「調整力」と「即応性」にある。火力発電は出力調整が比較的容易であり、需要変動に迅速に対応できる。この特性は、需要と供給を常に一致させなければならない電力システムにおいて極めて重要である。

再生可能エネルギー、特に太陽光や風力は出力が天候に左右されるため、安定供給の観点から火力発電によるバックアップが不可欠となる。大規模蓄電技術が十分に普及していない現状では、火力発電が「最後の調整弁」として機能している。

原発停止による代替電源としての火力

福島第一原発事故後、多くの原子炉が停止し、その穴を埋める形で火力発電が急増した。特にLNG火力は、CO₂排出量が石炭より少なく、比較的建設期間も短いため、短中期的な代替電源として選択された。

結果として、日本の発電構成における火力の比率は一時的に9割近くに達し、現在でも依然として主力電源であり続けている。この構造は、一度形成されると設備投資や契約の関係から短期間で大きく変えることが難しい。

再生可能エネルギー拡大の制約

再生可能エネルギーは着実に導入が進んでいるものの、以下のような制約が存在する。

第一に、立地制約である。日本は国土が狭く、山がちで平地が少ないため、大規模な太陽光や風力発電の適地が限られる。洋上風力は有望とされるが、建設コストや環境影響、漁業との調整など多くの課題が残る。

第二に、系統制約である。電力系統の容量不足や地域間連系線の弱さにより、発電した電力を十分に送電できないケースが生じている。これが再エネ出力抑制の原因となり、再エネ拡大の足かせとなっている。

第三に、コストと国民負担の問題である。FIT制度による再エネ賦課金は、電気料金上昇を通じて家計や企業に影響を与えており、無制限の拡大には社会的な限界がある。


脱原発の実現可能性

技術的観点からの検討

脱原発の実現可能性を評価するには、まず技術的条件を検討する必要がある。現時点では、再生可能エネルギーと蓄電技術のみで日本全体の電力需要を安定的に賄うことは困難である。蓄電池技術は進展しているが、季節間変動を吸収できる規模やコストにはまだ課題が残る。

水素やアンモニアなどの新エネルギーも注目されているが、商業規模での利用拡大には時間がかかる。したがって、短中期的には原発や火力を完全に排除した電力システムの構築は現実的とは言い難い。

経済的・社会的コスト

脱原発を急進的に進めた場合、電力コストの上昇や供給不安が生じる可能性がある。特に製造業やエネルギー多消費産業への影響は大きく、国際競争力の低下を招く懸念がある。

また、原発関連地域では雇用や財政への影響も無視できない。廃炉や地域再生政策を同時に進める必要があり、単純な政策転換では対応できない社会的コストが存在する。

政治的・制度的条件

脱原発の実現には、国民的合意と長期的な政策の一貫性が不可欠である。日本では政権交代や世論の変化によりエネルギー政策が揺れ動いてきた経緯があり、これが投資の不確実性を高めてきた。

脱原発を実現する場合でも、「いつまでに」「何を代替とするのか」「コストと負担を誰が引き受けるのか」を明確にした段階的ロードマップが求められる。即時廃止は象徴的メッセージとしては分かりやすいが、現実の政策としては慎重な検討が必要となる。

条件付き脱原発という選択肢

現実的な選択肢としては、原発依存度を段階的に低減しつつ、再生可能エネルギー、蓄電、需要側管理、省エネを総動員する「条件付き脱原発」が考えられる。このアプローチでは、原発を過渡的な電源と位置づけ、代替技術が十分に成熟した段階で役割を縮小していく。


追記まとめ

日本のエネルギー安全保障は、低い自給率と輸入依存という構造的制約の下にあり、火力発電依存からの脱却は容易ではない。火力は調整力と即応性の面で不可欠な役割を果たしており、再生可能エネルギー拡大の過程でも当面は重要な位置を占め続ける。

脱原発は理念として一定の支持を得ているが、技術的・経済的・社会的条件を踏まえると、短期的な全面実現は困難である。現実的には、原発の安全性を最大限確保しつつ、依存度を段階的に下げる中長期戦略が、エネルギー安全保障と脱炭素を両立させる上で最も実行可能性が高い選択肢である。

この点において、2026年衆院選の原発政策論争は、単なる賛否の対立ではなく、日本がどのようなエネルギー国家像を描くのかという根源的な選択を問うものだと言える。

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