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コラム:アメリカ建国250年、2010年代~現在

2010年代から2020年代にかけての米国は、分断とポピュリズム、社会運動の活発化、民主主義制度への挑戦と再編、技術革新と経済格差という多重の変動を経験した。
2021年1月6日/ワシントンD.C.議会議事堂、暴徒の襲撃に備え議員たち(Getty Images/AFP通信/PAメディア)

2026年初頭の米国社会は、高い政治的分断と社会運動の活発化が特徴となっている。ドナルド・トランプ(共和党)は2025年1月20日に再度大統領に就任し、その政策と統治スタイルは国内外で物議を醸している。複数の調査によると、2025年には1万件を超える抗議行動が記録され、農村部や保守地域でも草の根的な動員が見られるなど、社会的対立が広範に展開している。これらの動きは人種・ジェンダー・移民政策・技術規制など多様な争点を含み、米国政治史における異例の活発な市民行動として評価されている。

同時に、政治的な「真実」や情報の取り扱いをめぐる対立も深刻であり、政府高官による誤情報の発信が批判されるなど、民主的な情報基盤の脆弱性が浮き彫りになっている。こうした現状は、2010年代から続くポピュリズムと分断の累積的な影響として理解される。


2010年代:分断の芽生えとポピュリズムの台頭

2010年代に入り、米国は2008年金融危機後の回復期にあったものの、経済成長の恩恵は地域・階層によって大きな差が生じた。労働市場では中間所得層が停滞し、グローバル化と技術革新が進む一方で、既存の雇用構造が大きく変容した。その結果、「取り残され感」を抱く層が増大し、既存政治への不信感が強まった。

学術的には、こうした経済的・社会的変動は「理念/制度ギャップ」として捉えられ、望ましいとされる政治理念と実際の政治制度の機能との間の乖離が政治的不満を増幅させたという議論がある。また、共同体志向の低下と個人主義の台頭が社会的な分断を強化したとの分析も提示されている。


ポピュリズムの台頭

経済的不均衡と社会的不満は、ポピュリズム政治の台頭を促した。特に共和党陣営では、既存のエスタブリッシュメントに対する反発が強まり、後述するドナルド・トランプの政治スタイルが支持を拡大した。これには、自由貿易協定への不満、移民政策への異論、伝統的価値観への回帰といった複合的な要因があった。

ポピュリスト的な言説は、既存の政治秩序への挑戦として両党内部で見られたが、特に右派的な運動が顕在化し、後の政治対立の基盤を形成した。


オバマ政権(後半)

バラク・オバマ政権の後半(2013–2016)は、経済回復政策と社会保障制度改革が中心となった。特に医療保険制度改革(Affordable Care Act)は、アクセスの拡大と保険制度の安定化を目指したものである。教育ローンや再生可能エネルギー投資の政策も、後の経済構造に影響を与えた。

一方、分断の強まりを抑えるには至らず、経済的回復の果実が均等に行き渡らなかったとの批判も根強い。


トランプ政権の誕生(2017–2021)

2016年大統領選挙でのトランプ勝利は、ポピュリズムが米国政治に浸透した象徴的な出来事であった。トランプは移民規制、貿易交渉の再構築、規制緩和を掲げて支持を集めた。

政権は既存の政治慣行に挑戦し、連邦機関・司法・立法との摩擦を生み出した。この時期、民主主義の制度的な基盤への疑念と不信感が顕著になった。特に選挙プロセスへの不信は後述する重大な政治危機へとつながった。


社会運動の活発化

2010年代後半から2020年代にかけて、草の根レベルの社会運動が拡大した。経済的不平等、人種差別、ジェンダー暴力、環境問題など、さまざまな課題に対する市民の関与が強まった。この背景にはソーシャルメディアの普及と情報の即時性があり、運動の組織化と拡散が加速した。


人種差別抗議運動「Black Lives Matter (BLM)」

Black Lives Matter(BLM)は、2013年の発祥以来、人種差別と警察暴力に抗議する主要な社会運動となった。特に2020年5月にジョージ・フロイドの殺害を契機とした抗議行動は米国史上最大規模の人種正義運動となり、社会的議論を喚起した。

運動は多様なコミュニティに広がったが、支持者と反対者の間で激しい政治的対立を生み、全米規模の文化的葛藤を引き起こした。近年の調査では、BLMへの支持率は当初より低下しており、政策変化への楽観的期待も後退しているとのデータが示されている。


性暴力告発の「#MeToo」運動

#MeToo運動は、2017年頃に映画産業を中心に広まった性暴力告発運動であり、職場における権力乱用と性暴力への社会的な認識を大きく変えた。ハッシュタグを用いた告発と連帯の波は、法的・企業内の対応改善を促したが、同時にジェンダー・人種の交差性に関する議論も提起した(運動における表象の偏重や包摂性に関する批判など)。


2020年代:危機の連鎖と変革

パンデミックと社会動乱

2020年初頭にコロナパンデミックが発生し、米国は世界で最多の感染者と死者を抱える国となった。パンデミックは健康危機としてだけでなく、経済と社会の構造を揺るがす出来事であり、不平等と制度的脆弱性を露呈した。連邦・州政府による対応は分断され、社会的緊張を増幅させた。

パンデミック中に発生したBLM抗議や政治的集会は、健康リスクと社会的抗議が同時進行する独特の状況を形成した(集団抗議がパンデミックの流行に与えた影響を検討した研究なども複数存在する)。


民主主義の揺らぎ

2020年大統領選挙後、選挙不正の根拠なき主張をめぐる抗議と法的闘争が繰り広げられ、最終的に議会での認証作業が行われる中で議事堂襲撃事件(2021年1月6日)が発生した。これは連邦議会の機能を一時停止させ、民主主義制度への重大な挑戦と見なされた。

民主主義の脆弱性は、選挙制度への不信と政治的暴力の容認傾向として分析され、政治学者によって「民主的後退(democratic backsliding)」の兆候として指摘されている。


バイデン政権とインフレ

2021年1月にジョー・バイデン(民主党)が大統領に就任し、コロナ対策や経済刺激策(American Rescue Plan等)、社会保障の拡充を進めた。これらの政策は短期的な景気回復を促した一方で、インフレ上昇との関連が議論された。インフレ率の変動は政策効果の評価に複雑性をもたらした。


2026年現在の状況:第2次トランプ政権

2024年の大統領選挙でトランプが勝利し、第2次政権を開始した(2025年1月)。就任後の政策は強硬な移民政策、規制緩和、国際協力からの距離といった方向性を打ち出し、支持基盤からの支持を受ける一方で反対勢力との対立を強めている。共和党と民主党の分断は立法の停滞と社会的不安を助長している。

また、専門家は民主主義に対する制度的な圧力と情報環境の劣化を指摘しており、国内外で米国政治の安定性に対する懸念が広がっている。


経済と技術:生成AIへの大規模投資

2020年代半ばにかけて、米国は生成AI(人工知能)を含む先端技術への投資を拡大し、産業競争力の強化を図った。これらの技術投資は生産性向上に寄与する一方で、労働市場の再編や所得格差の拡大を助長するとの懸念もある。

経済の二極化

所得格差と地域格差は依然として米国経済の構造的課題であり、富裕層と中間・低所得層の格差は政治的不満と結びついている。また、財政赤字と債務水準の上昇は中長期的な経済持続性への懸念を喚起している。


混迷極める国際情勢

米国の国際的リーダーシップは、内政問題と相互に影響しながら変動している。伝統的な同盟関係の再評価や多極化する国際秩序のもと、米国の外交政策は不確実性を増している。


まとめ

2010年代から2020年代にかけての米国は、分断とポピュリズム、社会運動の活発化、民主主義制度への挑戦と再編、技術革新と経済格差という多重の変動を経験した。これらの潮流は相互に作用し、現在の政治・社会構造を形成している。今後の米国は、これらの課題にどう対処するかが、国内外との関係を含めた重要な歴史的課題となる。


参考・引用リスト

  • “Very historic time’: US protests have jumped since Trump’s first term,” The Guardian (2026).

  • “FACT FOCUS: Trump highlights familiar false claims…” Associated Press (2026).

  • “Trump made 10 key pledges a year ago…” The Guardian (2026).

  • “US adults’ belief in impact of BLM protests consistently decreased…” The Guardian (2025).

  • “‘In one year, Trump has imposed a culture of impunity’,” Le Monde (2026).

  • アメリカにみる社会科学の実践―2020年代の経済・財政 (財務省資料).

  • アメリカ政治の長期サイクルからトランプ政権を考える (日本国際問題研究所).

  • Bolsover, Gillian, Black Lives Matter discourse… (arXiv).

  • Mueller, Aaron et al., Demographic Representation and Collective Storytelling in #MeToo… (arXiv).


以下では①2021年1月6日の連邦議会襲撃事件の影響、②バイデン政権とトランプ政権の比較、③社会運動が活発化した経緯、④米国とNATOの関係の変遷、の四点を中心に整理する。


2021年1月6日連邦議会議事堂襲撃事件が米国に与えた影響

1.事件の概要と歴史的位置づけ

2021年1月6日に発生した連邦議会議事堂襲撃事件は、大統領選挙の結果認証という民主主義の核心的手続きが物理的暴力によって妨害された点で、米国史上きわめて重大な事件である。南北戦争後、連邦議会が直接的な暴力により占拠された例はほとんどなく、本事件は制度的安定を前提としてきたアメリカ民主主義の自己理解を根底から揺るがした。

この事件は単なる「暴動」ではなく、選挙制度そのものの正統性を否定する政治的動員が、暴力という形で可視化された点に本質がある。政治学的には、民主主義国家における「選挙結果の受容」という非公式規範が崩壊した瞬間として位置づけられている。


2.制度的影響

制度面では、議会警備体制の抜本的見直し、連邦捜査機関による国内過激主義対策の強化、選挙認証手続きの法的再検討が進められた。一方で、事件に対する評価をめぐって政党間の見解は大きく分かれ、責任追及の範囲や定義をめぐる対立が固定化した。

特に重要なのは、この事件が「例外的な逸脱」ではなく、今後も再発しうる構造的リスクとして認識されるようになった点である。選挙不正を信じる有権者の割合は事件後も一定水準で維持され、民主主義の正統性に対する信頼回復は限定的であった。


3.社会・文化的影響

社会的には、政治的暴力の正当化や黙認に対する忌避感と同時に、陰謀論的言説の常態化が進行した。情報環境の分断、特にソーシャルメディアを通じた「並行現実」の形成は、共通の事実認識を前提とする民主政治の困難さを浮き彫りにした。


バイデン政権とトランプ政権の比較

1.統治理念と政治スタイル

トランプ政権(第1次および第2次)は、反エスタブリッシュメント的言説と個人主導型の政治スタイルを特徴とした。政策決定過程は大統領の直感や支持者への訴求を重視し、既存官僚制や専門家との摩擦が頻発した。

一方、バイデン政権は、制度的安定と同盟重視、専門家主導の政策形成を重視した。特に「民主主義の回復」を明確な理念として掲げ、議会・官僚・同盟国との協調を志向した点が大きな違いである。


2.経済政策と社会政策

経済面では、トランプ政権が減税と規制緩和を中心とする供給側重視の政策を採用したのに対し、バイデン政権は大規模財政出動と社会投資を通じた需要刺激を重視した。この違いは、インフレ評価や財政赤字をめぐる議論において対照的な評価を生んだ。

社会政策では、トランプ政権が移民抑制や保守的価値観を強調したのに対し、バイデン政権は人種的多様性、ジェンダー平等、社会的包摂を政策目標として明示した。


3.民主主義への影響評価

民主主義の観点からは、トランプ政権期に制度的規範の軽視が顕在化し、バイデン政権はそれを修復しようとしたが、完全な回復には至らなかったと評価される。結果として、制度を巡る争点そのものが恒常的な政治対立の対象となった。


社会運動が活発化した経緯

1.構造的要因

社会運動の活発化は、単一の事件によるものではなく、①経済格差の拡大、②人種的不平等の持続、③政治制度への不信、④デジタル技術の発展、という複数要因の重なりによって説明される。

特に2010年代以降、若年層を中心に「制度内改革」への期待が低下し、街頭抗議やオンライン動員が主要な政治参加手段として定着した。


2.BLMと#MeTooの位置づけ

BLM運動は、警察暴力という具体的問題から出発しつつ、制度的人種差別全体への批判へと拡張した。一方、#MeToo運動は個人的体験の共有を通じて、権力構造の可視化と規範変容を促した。

両者に共通するのは、「沈黙してきた問題を公共圏に引きずり出した点」であり、これは社会運動の目的が政策変更だけでなく、社会的認識の変化にあることを示している。


3.反動と分極化

社会運動の拡大は同時に反動も生み、文化戦争的対立を激化させた。運動の正当性をめぐる評価が党派的に分断され、社会運動そのものが政治的アイデンティティの一部として機能するようになった。


米国とNATOの関係の変遷

1.冷戦後から2010年代まで

冷戦終結後、NATOは集団防衛同盟から危機管理・拡大抑止を含む組織へと変容した。米国はその中心的役割を維持しつつ、欧州同盟国に防衛負担の増加を求める立場を強めていった。


2.トランプ政権期の緊張

第1次トランプ政権期には、NATOに対する懐疑的姿勢が顕在化し、集団防衛義務への発言が同盟国に強い不安を与えた。これは、戦後米国外交の前提であった同盟重視路線の相対化を意味した。


3.バイデン政権による再強化

バイデン政権はNATOを「民主主義国家の結束の象徴」と位置づけ、同盟関係の再構築を進めた。ロシアの行動や国際安全保障環境の悪化を背景に、NATOの戦略的重要性は再評価された。


4.第2次トランプ政権下の不確実性

2025年以降の第2次トランプ政権では、NATOへの関与は継続されているものの、条件付き・取引的性格が強まり、同盟の安定性に対する不確実性は依然として高い。これは国際秩序全体に波及する構造的問題といえる。


総合評価

2021年1月6日の議会襲撃事件は、米国民主主義の脆弱性を可視化する決定的出来事であり、その影響は現在も政治・社会・外交に連鎖的に及んでいる。バイデン政権とトランプ政権の対照は、単なる政策差ではなく、民主主義観・統治観の根本的対立を示している。

社会運動の活発化とNATOをめぐる外交姿勢の変動は、国内の分断が国際秩序にも影響を及ぼす時代に入ったことを示しており、2010~20年代の米国史は「内政と外交の境界が溶解した時代」として位置づけることができる。


参考・引用リスト(追記分)

  • 米国連邦議会特別委員会報告書(January 6 Committee)

  • 政治学・民主主義研究に関する主要学術論文(democratic backsliding)

  • Pew Research Center 各種世論調査

  • Brookings Institution, Council on Foreign Relations の政策分析

  • NATO公式戦略文書および米国国防政策関連資料


「世界の警察官」からの後退――その意味と背景

1.「世界の警察官」という役割の成立

米国が「世界の警察官」と呼ばれる役割を担うようになったのは、第二次世界大戦後である。圧倒的な経済力と軍事力を背景に、米国は自由主義的国際秩序の維持者として、軍事介入、同盟ネットワーク、国際機関主導を通じて世界秩序を形成してきた。冷戦期にはソ連との対抗構造の中でこの役割が正当化され、冷戦終結後は「唯一の超大国」として、介入の裁量はさらに拡大した。

しかし、この役割は同時に膨大なコストを伴うものであり、2000年代以降、その正当性と持続可能性が国内で疑問視されるようになった。


2.後退の直接的要因

「世界の警察官」的役割の縮小には、複数の要因が重なっている。

第一に、長期戦争への疲労である。アフガニスタン戦争やイラク戦争は、明確な勝利や安定をもたらさないまま長期化し、多数の人的・財政的犠牲を生んだ。これにより、軍事介入が必ずしも民主化や安定につながらないという認識が一般市民にも広がった。

第二に、国内課題の深刻化である。インフラ老朽化、医療・教育費の高騰、所得格差、人種問題など、内政上の課題が山積する中で、海外介入に資源を投じることへの疑念が強まった。

第三に、多極化する国際環境である。中国、ロシア、地域大国の台頭により、米国単独で秩序を維持することが困難になり、コストとリスクが相対的に増大した。


3.役割縮小の意味

米国が「世界の警察官」としての役割を縮小したことは、単なる外交方針の転換ではなく、戦後国際秩序の前提が変化したことを象徴する出来事である。

これは、
・軍事介入の正当性が国内で共有されなくなったこと
・同盟国も含め、米国の無条件の関与を前提とできなくなったこと
・国際秩序の維持が「単一国家」では不可能になったこと
を意味する。

その結果、国際秩序はより不安定で、交渉的・取引的性格を帯びるようになった。


内向きの課題と深刻な政治的二極化に直面する米国

1.内向き化の構造

2010年代以降の米国は、明確に「内向き」の時代に入ったと評価できる。この内向き化は孤立主義への単純な回帰ではなく、国内問題が外交を規定する構造の強化として理解される。

経済格差、文化的対立、人種問題、移民問題は、もはや部分的な争点ではなく、国家のアイデンティティを巡る対立へと変質した。外交政策や同盟政策も、こうした国内対立の延長線上で評価されるようになった。


2.政治的二極化の深化

政治的二極化は、政策の違いを超えて、現実認識・価値観・民主主義観の対立にまで及んでいる。共和党と民主党の支持者は、同じ事実を異なる枠組みで解釈し、相手陣営を「政治的競争相手」ではなく「脅威」と見なす傾向を強めている。

この二極化は以下の特徴を持つ。

  • 妥協の正当性が低下し、政治的硬直が常態化

  • 選挙結果や制度への不信が拡大

  • 外交・安全保障政策が党派対立の対象化

その結果、長期的・一貫的な外交戦略の構築が困難になった。


3.外交への影響

内向き化と二極化は、米国外交に三つの制約を与えている。

第一に、持続性の欠如である。政権交代ごとに外交方針が大きく揺れ、同盟国は米国の約束を長期的に信頼しにくくなった。

第二に、価値外交の弱体化である。民主主義や人権を掲げる外交は、国内で民主主義の正当性が争われる状況下では説得力を失う。

第三に、戦略的集中の困難である。国内政治の不安定さが、外交資源の分散や場当たり的対応を招いている。


国際秩序の再編という激動の時代

1.自由主義的国際秩序の動揺

戦後の自由主義的国際秩序は、米国の関与と保証を前提として機能してきた。しかし、米国の相対的後退と内向き化は、この秩序の前提条件を崩した。

結果として、
・国際ルールの拘束力低下
・力による現状変更の増加
・国際機関の調整力低下
が同時進行している。


2.多極化とブロック化

現在の国際秩序は、単純な多極化ではなく、価値・制度・経済圏ごとのブロック化が進んでいる。米国主導の陣営、中国・ロシアを中心とする対抗陣営、そして戦略的自律を模索する中間国・地域が併存する構造が形成されつつある。

この構造では、米国の影響力は依然として大きいものの、決定的ではなくなり、調整と説得のコストが増大している。


3.米国の位置づけの変化

米国はもはや「秩序の保証人」というより、秩序再編の一当事者として行動せざるを得なくなっている。この変化は、覇権の終焉ではなく、覇権の性質の変化と捉える方が適切である。

軍事力や経済力は依然として突出しているが、それを自動的に正当化する規範的基盤が弱体化している点に、現代の特徴がある。


激動の時代の米国史的位置づけ

米国が「世界の警察官」としての役割を縮小したことは、
①国内の深刻な分断と内向き化、
②長期介入への疲労、
③国際秩序の多極化、
という三要因が交差した必然的帰結である。

2010~20年代の米国は、内政の不安定化が外交の制約条件となり、外交の揺らぎが国際秩序の不安定化を加速させる時代に入ったと総括できる。この時代は、米国史において「覇権の再定義期」と位置づけられ、今後の国際秩序の方向性を左右する転換点となる。

この文脈において、米国の課題は単に国際的影響力を維持することではなく、国内の民主主義的正統性と社会的統合をいかに再構築するかにある。その成否こそが、21世紀後半の国際秩序の性格を規定する決定的要因となる。

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