◎イランは進行中のイエメン内戦でサウジアラビア連合軍と戦っているイスラム原理主義組織フーシや、レバノンのヒズボラなどに兵器を提供している。
米国とイランは2018年に崩壊したイラン核合意の再開に向けた交渉を11月29日に再開する。
米ドナルド・トランプ前大統領は2018年に合意から撤退し、イランに厳しい経済制裁を科した。これにより、米国はイランの外国資産数十億ドルを凍結し、イランの原油、天然ガス、石油化学製品に対する投資を禁止した。しかし、イランは制裁発動後も中国に原油を輸出し続けている。
イラン核合意は3.67%以上のウラン濃縮を禁止している。しかし、イランは濃縮度を60%以上に引き上げ、高濃縮ウランの生産を推し進めている。
<ウラン(U-235)の濃縮度>
・0.7%:標準
・2~5%:原子炉燃料(軽水炉用)
・3.67%以下:イラン核合意の規定値
・20%以上:高濃縮ウラン
・90%以上:核兵器用
イラン核合意は核開発の制限と引き換えにイランに経済的なインセンティブを約束し、核兵器の開発を防ぐことを目的としている。イランは進行中のウラン濃縮は兵器ではなく民間のプロジェクトに利用するものと主張しているが、西側諸国はこの主張を却下し、イスラエルは米国にイランを激しく打ち負かすよう要請した。
しかし、イスラエルの元国防相、モシェ・ヤアロン氏は先日、「米国の核合意撤退は、この地域における主な間違いのひとつ」と指摘した。「恐らく、撤退は最悪の選択でした。今、イラン人は撤退と経済制裁を理由に核開発を強化しています」
トランプ前大統領は当時、主要な同盟国であるイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の要請などに基づき、合意から撤退したうえでイランに厳しい経済制裁を科した。イランは2015年の核合意締結後も核開発を進めていたと信じられている。
一部の専門家は、イランがウラン備蓄を放棄したとしても、核開発のノウハウを奪うことはできず、この地域におけるイランの影響力は保たれると指摘した。
イランは進行中のイエメン内戦でサウジアラビア連合軍と戦っているイスラム原理主義組織フーシや、レバノンのヒズボラなどに兵器を提供している。
交渉のカギを握る反米強硬派のエブラヒーム・ライシ大統領は交渉再開に先立ち、米国に海外資産100億ドルの凍結と経済制裁を解除するよう要求した。ライシ大統領はアヤトラ・アリ・ハメネイ最高指導者の「傀儡」であり、今年6月の就任演説で米国の制裁を解除するためにあらゆることをするとハメネイ氏に誓った。
一方、ジョー・バイデン大統領と担当チームは交渉の失敗に備え、この1カ月の間に主要な同盟国との会議を開催した。米国の担当チームは29日に再開するウィーンの交渉に仲介者を通して参加する。
米国のロブ・マレー首席交渉官は26日に放送されたインタビューの中で、「交渉が前進する兆候は見られない」と語った。バイデン大統領はイランが核開発を放棄すると約束すれば、経済制裁の緩和に向けた「交渉」に応じると述べている。
イスラエルの国家安全保障研究所の上級研究員であるヨエル・グザンスキー氏はAP通信の取材に対し、「私は安心しています」と語った。「イランは忍耐と決意を示しました。米国は忍耐を示さないでしょう。致命的なイエメン内戦を終結させたいバイデン大統領は忍耐を示さないでしょう。ありがとうございます」
イスラエルは公には認めていないが、この地域で唯一の核武装国と信じられており、イランを最大の敵と見なしている。極めて保守的なナフタリ・ベネット首相はバイデン大統領と衝突しないよう注意を払ってきた。しかし、ベネット首相はネタニヤフ前首相と同じ考えの持ち主であり、必要に応じて一方的な行動を取るよう米国に求めている。
ベネット首相は28日、「イランに対する制裁の解除と核開発の推進を承認しようとする米国の動きに混乱している」と語った。
一方、核合意の参加国である中国とロシアも、交渉失敗の可能性が高まっていることに危機感を抱いている可能性がある。両国を含む中央アジア諸国は地域のテロリストを支援するイランの核武装を恐れている。
交渉が長引くと米国は新たな制裁を発動する可能性がある。一部の専門家はイスラエルの軍事介入もあり得ると指摘した。
イランの通貨は経済制裁の影響で暴落し、インフレはさらに加速し、国民の預金は紙屑になった。