◎一部の専門家は、今回の食糧不足は25年前に発生した大飢饉ほど深刻ではないと予想している。
韓国のメディアによると、厳しい経済制裁下に置かれている北朝鮮の食糧不足は予想以上に深刻だという。
韓国に拠点を置く市民団体「北朝鮮民主化ネットワーク」が発行するデイリーNKのイ・サンヨン編集長は、「各地で飢餓による死亡が断続的に報告されている」と述べた。
イ氏によると、食糧不足は予想以上に深刻で、農村地域の貧しい住民は厳しい状況に置かれているという。
一部の専門家は、「北朝鮮は厳しい経済制裁、コロナウイルスの感染拡大とそれに伴う国境封鎖、昨年の台風災害以降続く慢性的な農作物の生育障害などの影響で追い詰められている」と指摘している。
北朝鮮は昨年1月、最大の貿易相手国である中国からのコロナの侵入を防ぐために国境を封鎖した。イ氏によると、封鎖以来、北朝鮮の情報を得ることはさらに難しくなったという。
当局は国外への情報発信を禁じており、違反した者は厳しい罰を受けることになる。しかし、イ氏によると、危険を冒してでも脱北した家族に手紙や音声メッセージを送りたいと望む人はたくさんいるという。
一部の専門家は、今回の食糧不足は25年前に発生した大飢饉ほど深刻ではないと予想している。
1994年から1998年頃に発生した大飢饉による餓死者および栄養不足に関連する病で死亡した市民は200万~350万人と伝えられているが、正確な死亡者数は明らかにされていない。
国連は今年、北朝鮮の食糧不足は悪化しており、少なくとも市民約2,500万人分の食糧2~3カ月分が不足していると警告した。
イ氏によると、当局は軍の兵士を含む数万人を農村部に派遣し、主食である米とトウモロコシの栽培と収穫を行うよう命じたという。また、当局は地域内で収穫した食糧を厳重に管理し、盗難や不正行為は厳罰に処すと警告したという。
韓国の国家情報院は先週、「金正恩は公聴会の中で、薄氷の上を歩いているように感じると関係者に語った」と報告した。
金正恩 党総書記は食糧不足にもかかわらずミサイル開発と発射テストを推進し、米国、韓国、日本を含む西側諸国への威嚇を繰り返している。韓国農村経済研究所のチョ・ヨンホ博士によると、北朝鮮は軍事技術とミサイルの開発にはある程度成功したが、農業分野への投資を怠った結果、農作物の栽培と収穫に必要な技術は大きく後れを取ったという。
先進国の農家は田植え、稲刈り、農作物の管理に数百万から数千万円する機械を導入するが、北朝鮮の農家の大半はこれらをほぼ手作業で行っていると伝えられている。
さらに、北朝鮮は食糧を確保するうえで欠かせない自然の恵みでも不利な状況に置かれている。
北朝鮮は米国の諜報機関がまとめた地球温暖化の影響を最も受けやすい11カ国のひとつに含まれており、米とトウモロコシの栽培はさらに難しくなると懸念されている。
核拡散防止研究所のキャサリン・ディル氏は以前、「北朝鮮の穀倉地帯である西海岸地域は台風、大雨、気温の変動の影響を受けやすくなり、農作物の管理はより一層難しくなる可能性が高い」と述べていた。
国際連合環境計画は2012年の報告書の中で、北朝鮮の年間平均気温は1918年から2000年の間に1.9℃上昇したと報告した。さらに、緑の気候基金が2019年に発行した報告書によると、北朝鮮の年間平均気温は2050年代までに産業革命以前の平均から2.8~4.7℃上昇する可能性があるという。
韓国のハン・ジョンエ環境相は今週、グラスゴーCOP26に出席した北朝鮮のチェ・イル駐英大使らと気候変動に関する取り組みについて協議を進めたい意向を示したが、会談は実現しなかった。