◎ベイルート港の倉庫に不適切に保管されていた硝酸アンモニウムは昨年8月4日に爆発した。
10月11日、レバノンを支配するイスラム過激派組織ヒズボラの指導者は、昨年8月に首都ベイルートで発生した爆発事故の調査を主導する裁判官を「公正な人物」に変更するよう裁判所に要求した。
爆発事故を調査する政府の委員会は、2月にタレク・ビータール判事を首席調査官に任命した。前任のファディ・ソーワン判事はベイルート港の爆発物放置に関与したとされる政府高官や関係者を起訴すると約束していたが、ヒズボラの圧力に屈し、解任された。
ビータール判事はヒズボラの指導者であるハッサン・ナスララ氏から政治的な理由で偏った調査を行っていると繰り返し非難されてきた。
しかし、ビータール判事は圧力に屈することなく調査を進め、現政府の高官らの逮捕状を発行した。
ナスララ氏は11日の声明で、ビータール判事が下したほぼ全ての決定を非難し、レバノン国内で進行中の危機を克服するためには、立法、行政、司法の団結が欠かせないと主張した。
地元メディアによると、ビータール判事はヒズボラとつながりのある政府高官を標的にしたため、より厳しい圧力にさらされる可能性が高いという。
ナスララ氏は記者団に対し、「判事は政治的な理由で高官を狙っており、正義とレバノンの法律を無視している」と語った。「問題を解決しなければなりません。政府の管理下に置かれている委員会は今すぐ行動を改めてください。改善が見られなければ、私たちは干渉しなければなりません...」
ナスララ氏は「政治の影響を受けない公正な裁判官を求めている」と述べ、司法にビータール判事の権限を剥奪するよう圧力をかけた。「政治的な理由で行動する判事の決定は大きな、大きな、大きな、大きな、大きな間違いです...」
現地メディアによると、ビータール判事はナスララ氏の圧力に対するコメントをまだ発表していないという。
ベイルート港の倉庫に不適切に保管されていた硝酸アンモニウムは昨年8月4日に爆発し、消防士や子供を含む少なくとも214人が死亡、6,000人以上が負傷し、約30万人が住居を失った。
独立系メディアと権利団体の調査により、政府の高官や安全保障当局者は港に危険物が不適切に保管されていることを認識していたが、予防策を講じることなく、問題を放置し続けたことが明らかになった。
ナスララ氏は、「ビータール判事のように政治の影響を受ける司法当局者は正義と真実に到達できない」と述べ、犠牲者の遺族に公正な調査を行うと約束した。
ヒズボラ寄りの政治家もビータール判事の調査は政治の影響を強く受けていると非難した。
しかし、国民の大多数は政府、議会、そしてレバノンを支配するヒズボラの怠慢が爆発物の不適切な保管と事故につながったと信じている。
レバノンの政治と経済は、2019年に勃発した壊滅的な金融危機以来機能不全に陥っている。ヒズボラと政府の怠慢が引き起こしたハイパーインフレは国民の預金を紙屑に変え、中東のパリと呼ばれたベイルートは爆発事故で荒れ地になった。