◎多くの専門家が、西側諸国の支援を失ったアフガニスタンは飢餓と経済崩壊に突入する可能性が高いと指摘している。
2021年9月12日/アフガニスタン、首都カブールの銀行前( Bernat Armangue/AP通信)

国連の人道支援責任者は13日、武装勢力タリバンの支配下に置かれたアフガニスタンに対する緊急援助を約束した。

アフガニスタンに関する最初のハイレベル会合を主催した国連は声明で、「西側政府と人道機関などは、年末までに6億600万ドル(約670億円)の援助をアフガニスタンに提供すると約束した」と述べた。

旧政権からアフガニスタンを奪取したタリバンは深刻な現金不足に直面すると予想されている。国際通貨基金(IMF)と世界銀行はアフガニスタンへの融資を停止し、中央銀行の準備金の大半はアメリカに凍結された。

国連の人道支援責任者を務めるマーティン・グリフィス氏は会合後の記者会見で、「関係国と機関はアフガニスタンに12億ドル(約1,300億円)以上の緊急援助を提供すると約束した」と発表した。

またグリフィス氏はツイッターに、「アフガニスタンが必要としている人道支援を速やかに精査しなければならない」と投稿し、現金不足と昨年から続く深刻な干ばつによる食糧不足に強い懸念を表明した。

国連難民高等弁務官事務所も、一連の戦争中に多くのアフガニスタン人が隣国のパキスタンとイランに避難したが、今回さらに多く避難民が出ると予想されており、進行中の食糧不足は大規模な飢餓を引き起こす可能性があると警告した。

グリフィス氏は声明の中で、食糧、医療、保護はアフガニスタン人の命綱になると述べ、関係国と機関に会合で約束した緊急援助を速やかに提供するよう呼びかけた。

多くの専門家が、西側諸国の支援を失ったアフガニスタンは飢餓と経済崩壊に突入する可能性が高いと指摘している。

国連のアントニオ・グテーレス事務総長は会合の冒頭、「アフガニスタン人はライフラインを必要としている」と強調した。「数十年にわたる戦争、苦しみ、不安の後、アフガンの人々は過去最悪の危機に直面しています。この会合はアフガンの人々に何を与えるかを議論するために開催したのではありません。私たちは戦争で全てを失った人々に生活を返さなければなりません」

グテーレス事務総長は、国民の3人に1人が次の食事を得られるか分からず、貧困率は日を追うごとに悪化し、基本的な公共サービスは崩壊に近づいていると警告した。

世界食糧計画(WFP)によると、アフガニスタンでは現金が圧倒的に不足しており、小麦粉を含む主要食糧の輸入に深刻な影響が出ているという。その結果、地域の物資は不足し、食料価格だけでなく燃料価格の上昇にもつながった。中央銀行の準備金凍結と国家の麻痺は国民から現金を奪っている。

関係国は他の国連主導の緊急ドナー会議に続き、多くの資金をアフガニスタンに投入すると表明した。ドイツのハイコ・マース外相はアフガニスタンと近隣諸国に5億ユーロ(約650億円)を援助すると述べたが、計画の詳細は明らかにしなかった。デンマークは追加で3,800万ドル、ノルウェーは1,150万ドル、日本は今年中に総額2億ドル(約220億円)を援助すると約束した。

ただし関係国は、援助はタリバンの支配方法に影響を受ける可能性があると示唆した。

アメリカのリンダ・トーマス・グリーンフィールド大使は、国連とパートナー組織に新たに6,400万ドルを提供すると述べた。これにより、アメリカのアフガニスタンに対する今年度の援助総額は約3億3,000万ドルになった。

国際社会は、タリバンが1996年から2001年の旧政権時代のイスラム法に基づく過激な支配に戻るかどうかを注意深く見守っている。

旧タリバン政権は女性と女児の教育を禁じ、公の生活から除外し、男性の同伴なしで外出した者をムチで打った。

タリバンは8月15日の政権奪取直後、西側諸国に協力した元敵対者に恩赦を与え、女性の権利を保障すると約束した。しかし、国民の大半はこの約束に懐疑的な目を向けている。

タリバンは女性の権利を保障すると約束したにもかかわらず新政権から女性を排除し、女性の権利を訴える抗議デモに銃を向け、ジャーナリストを殴打した。

国連人権高等弁務官のミシェル・バチェレ氏の事務所は13日の声明で、「タリバンが人権を擁護しなければ、アフガニスタンの危機は次の段階に入る」と警告した。

バチェレ氏の事務所によると、タリバンは元アフガニスタン治安部隊に対する報復殺人を実行し、前政権の職員およびその家族を恣意的に拘束し、死に追いやったという報告を複数受け取ったという。

2021年9月8日/アフガニスタン、首都カブール、女性抗議者に銃を向けるタリバンの戦闘員(ロイター通信)
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