30日、イランの治安当局者はイスラエルが電子機器を使用して核科学者のモーセン・ファクリザデ氏を殺害したと非難した。
イラン最高国家安全評議会の書記を務めるアリ・シャムハーニー氏は暗殺されたファクリザデ氏の葬儀で、「イランは核の仕事をより早く、より力をもって続行する」と誓った。
過去に数人のイランの核科学者を暗殺したと疑われているイスラエルは、沈黙を守っている。
2000年代初頭、ファクリザデ氏はイランの核開発計画で重要な役割を果たした人物と言われており、当局者は活動を「完全に平和的なもの」と主張している。
しかし、一連の計画と開発は核兵器を製造するためのものと見なされ、西側の制裁対象になった。
イスラエルはイランが核兵器の開発を維持していると主張し、テヘランで弾道ミサイルプログラムと他の技術の研究が続いていると指摘している。
暗殺現場:ダマヴァンド郡アブサード
暗殺について
シャムハーニー書記の発言は、27日に発生したファクリザデ氏暗殺の情報とはかけ離れたものだった。
当局は当初、ファクリザデ氏の乗った車両が武装テロリストの襲撃を受けたと発表した。
攻撃中に自動車爆弾(ピックアップトラック)が爆発したという情報も伝えられている。
イラン国防省は、襲撃後、ファクリザデ氏のボディガードと武装テロリストの銃撃戦になったと述べた。
しかし、イランの地元メディアは科学者が「遠隔操作の機関銃」または「衛星によって制御された兵器」で殺害されたと報じた。
報道後、シャムハーニー書記は、「特別な方法」を使用した遠隔操作兵器が使用されたと述べた。
アリ・シャムハーニー書記:
「暗殺は電子機器を使用した非常に複雑な任務だった。現場には誰もいなかった」
「イランの諜報機関とセキュリティサービスはファクリザデ氏の暗殺計画を事前に把握し、攻撃がどこで発生すかも予測していた」
「実行犯はイランの野党グループ、モジャーヘディーネ・ハルグとイスラエル」
元駐日イスラエル大使のエリ・コーヘン氏は30日のラジオインタビューの中で、「暗殺の実行犯は分からない」と述べた。
ニューヨーク・タイムズ紙は、イランの核活動の追跡に関与したイスラエル高官のコメントを報じた。それによると高官は、「ファフリザデ氏によって推進されたイランの核兵器への願望は、世界とイスラエルに脅威をもたらした」と述べたという。
またフォーブス紙の報告によると、遠隔操作の機関銃やその他の兵器は、現在中東全域で広く使用されているとのこと。
葬儀
ファクリザデ氏の葬儀は首都テヘランの国防省で行われ、遺体は首都北部の墓地に移された。
国営テレビによると、葬儀にはフムード・アラビ諜報大臣、革命防衛隊の司令官フセイン・サラミ少将、アミル・ハタミ国防相、アヤトラ・エブラヒーム・ライシ司法長官などの政府高官が出席したという。
ハタミ国防相は演説で、「ファクリザデ氏の暗殺に復讐する」というイランの決意を繰り返した。
アミル・ハタミ国防相:
「敵は分かっている。イランの人々は犯罪、テロ、愚かな行為に決して黙っていない」
「ファクリザデ氏の道を継続するために、防衛革新研究機構(SPND)の予算を2倍に増やす。核の仕事はより早く、より力を持って続行されるだろう」
メディアの反応
(イラン)
・イランの核開発計画に対する緊張を高めようとするイスラエルの試み。
・下手に反応すればさらなる危機を招くと述べ、「罠にかかってはいけない」と報じた。
(イスラエル)
・テロはイラン核合意に復帰すると公言しているジョー・バイデン米次期大統領へのけん制。
・報復を受ける可能性についても言及している。
(サウジアラビア)
・イランの核開発計画に反対している立場から、暗殺を強調して報道。
・イラン革命防衛隊の能力をあざける。
・バイデン次期大統領のイラン核合意復帰に影響を与えるかもしれないと報道。
モーセン・ファクリザデ氏について
・イランで最も有名な核科学者。
・エリートイスラム革命防衛隊の上級将校。
・イランの核開発計画において、非常に重要な役割を果たしていると言われてきた。
・2018年にイスラエルが入手した機密文書によると、核兵器の製造プログラムを主導していたという。
・ニューヨーク・タイムズ紙は、マンハッタン計画を指揮したロバート・オッペンハイマー氏とファクリザデ氏を比較している。
・かつてイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はファクリザデ氏について言及し、「その名を覚えておくように」と述べている。
・1989年に設立された核爆弾を製造する秘密プログラム、「プロジェクト・アマド」を率いていたと言われている。