◎パキスタンでは冒とく罪で逮捕された容疑者が暴徒にさらわれ、処刑される事件が多発している。
パキスタン政府は26日、冒とく罪で逮捕状が出ていた南部シンド州の男性医師を警察官が射殺した事件について、その責任は州警察にあると非難した。
この男性医師は先週、イスラム教の予言者ムハンマドを侮辱するコメントをSNSに投稿したと告発され、指名手配された。
男性医師を射殺した警察官は18日夜、シンド州ウメルコット市内をパトロールしていた際、オートバイに乗った2人組に停車を求めたが、2人組はこれに応じず、パトカーに向け発砲したため、応戦したと上司に報告。
さらに、2人のうち1人はバイクで逃亡、後ろに乗っていた男が死亡し、この男が冒とく罪で逮捕状が出ていた男性医師であったと報告していた。
しかし、政府が調査した結果、警察官が上司にウソの報告をしていたことが明らかになった。
それによると、男性医師はバイクに乗ってなどおらず、警察に自首した直後、この警察官に射殺されたという。
警察官が主張したバイクに乗った2人組との銃撃戦もなかった。
遺族の弁護士によると、男性医師は無実を証明する機会が与えられたため、警察に自首したという。
弁護士は26日の記者会見で、「善良な医師は警察官が仕組んだ工作により、自首した直後に射殺された」と非難した。
政府もこれが事実であることを認め、関係閣僚に事件の経緯を究明するよう命じたと明らかにした。
男性医師の遺体は家族に引き渡されたものの、数時間後、自宅に暴徒が押し入り、遺体を奪い、路上でガソリンをかけて焼いた。
イスラム国家でムハンマドや聖典コーランを冒とくすることは死罪に当たる。パキスタンの刑法も冒とく罪の最高刑を死刑としているが、実際に冒とく罪で死刑が執行されたことはない。
パキスタンでは冒とく罪で逮捕された容疑者が暴徒にさらわれ、処刑される事件が多発している。
地元メディアによると、男性医師の家族は警察が殺害を主導したとして、刑事告発する予定だという。