◎この抗争は今月9日頃から始まった。
2024年9月17日/メキシコ、シナロア州クリアカン近郊、遺体を運ぶ警察官(AP通信)

メキシコのオブラドール(Andrés Manuel López Obrador)大統領は19日、北西部シナロア州クリアカンで世界最大の麻薬組織シナロア・カルテルによる派閥間抗争が激化していることについて、「米国のせいである」と非難した。

この抗争は今月9日頃から始まった。

政府はこの地域に数千人の治安要員を派遣。この抗争に巻き込まれ、陸軍兵士2人が死亡した。

警察によると、この1週間で少なくとも30人が死亡。遺体の多くは市内の道路などに放置されていた。

シナロア州では7月下旬に米国でシナロア・カルテルの幹部2人が逮捕されたことを受け、派閥間の争いが激化。このうち1人は麻薬王「エル・チャポ」ことグスマン(Joaquin Guzman)受刑者の息子である。

地元メディアによると、シナロア・カルテル内では現在、グスマンの息子に忠誠を誓う勢力と、同じく7月に逮捕された幹部に忠誠を誓う勢力による権力争いが起きているという。

派閥は互いに交戦し、治安部隊とも衝突した。

19日午後、空軍のヘリコプターがクリアカン市内をパトロール。地上を巡回する陸軍兵士、州兵、警察官をサポートした。

クリアカンではカルテル戦闘員が道路脇にIED(即席爆発装置)や地雷を設置し、郊外の集落には塹壕が掘られ、機関銃を搭載した自家製装甲車や爆弾を投下するドローンも登場している。

この抗争により、クリアカンはマヒ状態に陥っている。市内の学校はすべて閉鎖、企業も営業を自粛し、銃撃戦に巻き込まれることを恐れ、多くの市民が街を離れた。バスやタクシーもほとんど運行していない。

市外への避難を計画している女性はAP通信の取材に対し、「外は危険すぎるため、買い物に行くこともできない」と嘆いた。

オブラドール氏は定例会見で米国を非難。「シナロアの幹部が逮捕された結果、治安が悪化した」と主張した。

またオブラドール氏は「米当局が勝手に違法な作戦を決行した。あれば完全に違法だ。違法なんです。司法省の捜査官は幹部を待ち構え、捕獲した」と述べた。

米司法省は幹部2人を逮捕した経緯を明らかにしていないが、メキシコ当局と連携して捜査に当たったとしている。

メキシコはシリアやアフガンなどの紛争地を除いて、世界で最も危険な国のひとつであり、麻薬戦争の犠牲者は35万~40万人、それに巻き込まれて行方不明になった人は10万人以上と推定されている。

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