◎チアパス州の複数の地域では世界最大の麻薬組織「シナロア・カルテル」や同国№2の「ハリスコ新世代」などが支配権を争っている。
グアテマラ政府は24日、メキシコ南部チアパス州の麻薬カルテルが支配する地域の住民約600人が国境を越えてグアテマラに避難したと明らかにした。
グアテマラのアレバロ(Bernardo Arévalo)大統領は声明で、「カルテル紛争に巻き込まれたメキシコ人を保護するため、関係自治体と連絡を取り合っている」と述べた。
AP通信はメキシコ政府高官の話しとして、「カルテル紛争とそれに伴う食料不足により、チアパス州の子供、女性、高齢者など、少なくとも580人がグアテマラに避難した」と伝えている。
チアパス州の治安当局は新たなカルテルもしくはギャング間抗争が発生したという情報はなく、調査を進めていると報告。メキシコ外務省と国境警備隊もコメントを出していない。
チアパス州の複数の地域では世界最大の麻薬組織「シナロア・カルテル(Sinaloa Cartel)」や同国№2の「ハリスコ新世代(Jalisco New Generation)」などが支配権を争っている。
地元メディアによると、この両カルテルによる領土争いは全土に広がり、グアテマラ国境付近がその震源地になっているという。
両カルテルは麻薬、移民、銃の密輸ルートをめぐって争っているものとみられる。
チアパス州のある町では先月、武装した男たちが複数の民家に火を放ち、約5000人が避難を余儀なくされた。
中央政府は昨年9月、カルテルがグアテマラ国境に近いいくつかの町で電力を遮断したと報告。カルテルは送電線を修理するために現地入りした電力会社の職員を脅し、この地域から撤退するよう命じたとされる。政府はこの地域に陸軍を派遣している。
グアテマラの国境警備隊によると、チアパス州の住民たちは23日から国境の様々な場所に到着し始めたという。その一部は自力で国境を越え、グアテマラ当局に保護された。
グアテマラ政府は23日、糖尿病を患っていた91歳の女性が避難中に亡くなったと明らかにした。
メキシコはシリアやアフガンなどの紛争地を除いて、世界で最も危険な国のひとつであり、麻薬戦争の犠牲者は35万~40万人、それに巻き込まれて行方不明になった人は10万人以上と推定されている。