◎ハイチの治安は2021年7月のモイーズ大統領暗殺と同年8月に西部で発生したM7.2の大地震で崩壊し、破壊と暴力が蔓延している。
2024年3月3日/ハイチ、首都ポルトープランス、襲撃を受けた刑務所近く(Getty Images)

国家存亡の機にある中米ハイチで暫定評議会を設置する取り組みが進んでいる。14カ国と1地域が加盟するカリブ共同体(CARICOM)が14日、明らかにした。

アンリ(Ariel Henry)首相は11日遅くに辞意を表明。暫定評議会に権力を移譲すると発表した。

CARICOMは評議会の設置と総選挙に向けた取り組みを支援する予定だ。

CARICOM首脳会議に出席したスリナムのラムディン(Albert Ramdin)外相はAP通信の取材に対し、「ハイチは自分たちの運命に責任を持ち、ボールを拾って走り出すことができる」と語った。

現地メディアによると、ハイチの政治家や有力者たちは暫定評議会の運用方法などについて議論したものの、意見をまとめることはできず、一部の野党が参加を拒否したという。

CARICOMの指導者たちは今週、ブリンケン(Antony Blinken)米国務長官などと非公開で会談し、暫定評議会の設置を発表。その直後、アンリ氏が辞意を表明した。

評議会は暫定首相と委員を選出する責任を負うとともに、10年近く行われていない総選挙を実施するための取り組みも主導する。

ラムディン氏は「評議会の設置で流れが変わることを期待している」と述べた。それによると、CARICOMの関係者は13日夜に緊急会合を開き、野党議員らが参加した協議の内容を確認したという。

APは情報筋の話しとして、「アンリ氏を支持する勢力は評議会の設置に難色を示しているようだ」と伝えている。

さらに、反政府指導者フィリップ(Guy Philippe)氏と同盟を結ぶ有力議員も評議会に参加しないと表明している。

フィリップ氏はアリスティド(Jean-Bertrand Aristide)前大統領を追放した2004年の反乱の中心人物であり、マネーロンダリング(資金洗浄)などに関与した罪で逮捕・起訴され、米国で9年間服役。昨年末出所し、ハイチに帰国した。

最大の問題はポルトープランスの大部分を支配するギャング「G9&Family」である。その指導者である元警察官の通称「バーベキュー(Jimmy "Barbecue" Cherizier)」はアンリ政権寄りの政治家が関与する組織を一切認めないと言明している。

ハイチの治安は2021年7月のモイーズ(Jovenel Moise)大統領暗殺と同年8月に西部で発生したM7.2の大地震で崩壊し、破壊と暴力が蔓延している。

ポルトープランスでは1年ほど前からG9&Familyを含む複数のギャングが地域の支配権をめぐって血みどろの抗争を繰り広げている。

ポルトープランスの80%がギャングの支配下に置かれ、市内の学校、企業、公共機関はほぼ全て閉鎖。2つの主要刑務所もギャングの攻撃で崩壊し、4000人以上の受刑者が脱獄した。

アンリ氏は国際空港が閉鎖された影響で未だに帰国できずにいる。

アンリ氏は先週末、国連PKOを率いるケニアのルト(William Ruto)大統領と会談。警察官約1000人をハイチに派遣する協定に署名した。

しかし、ケニアの高等裁判所は先月末、「安保理の決定に基づきハイチにケニアの警察官を派遣することは違憲である」と裁定。この裁判は現在、最高裁で争われている。

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