◎複数の容疑で告発されているカーン氏のドラマティックな逮捕劇は同国の緊張をエスカレートさせた。
パキスタン全土でカーン(Imran Khan)前首相の逮捕に抗議するデモが暴動に発展し、約1000人が逮捕された。
警察は10日の声明で、デモ参加者8人が死亡したと報告している。
首都イスラムバードを含む都市部には陸軍兵士が配備された。
デモ隊はイスラマバードを含む複数の都市部に集結し、その多くが軍の施設周辺で暴れたと伝えられている。内務省はSNSで偽情報が拡散する恐れがあるとして、モバイルデータ通信を制限している。
カーン氏は9日、イスラマバード高裁に出廷した直後に逮捕された。地検は3月、カーン氏を含む前政権の閣僚や関係者などをテロに関与した容疑などで告発していた。
地元メディアはカーン氏の弁護士の話を引用し、「カーン氏は汚名をそそぐと宣言し、国家警察と陸軍を罵倒した」と報じている。
複数の容疑で告発されているカーン氏のドラマティックな逮捕劇は同国の緊張をエスカレートさせた。
SNSでも賛成派と反対派が争っている。あるツイッターユーザーは、「カーンの頭を(クリケット)バットで殴れ」と投稿。反対派はシャリフ(Shahbaz Sharif)首相を罵った。
カーン氏は同国のクリケット代表を率いた名選手のひとりである。
カーン氏は有罪が確定すれば、恐らく生涯に渡って公職に就くことが難しくなる。総選挙は今年後半に予定されている。
ソーシャルメディアで拡散したドラマチックな動画には、数十人の警察官に囲まれたカーン氏がパトカーに放り込まれるところが映っていた。
地元メディアはカーン氏がイスラマバード警察の厳重な監視下に置かれたと報じている。
イスラマバード地検は10日、カーン氏が首相在任中に外国高官から受け取った贈答品の売却益を正しく申告していなかったとして起訴(収賄罪とみられる)した。
中露寄りのカーン氏は昨年4月に不信任決議で弾劾されて以来、政府・司法・軍を批判し、全国各地で集会を開催してきた。
カーン氏は不信任決議に米国が関与したと主張。「逮捕状はシャリフ(首相)の嫌がらせ」と非難している。
またカーン氏は地検の告発や疑惑を丸ごと否定している。
カーン氏はこの数カ月間、逮捕を回避し、支持者を煽ってきた。デモ隊と警察は各地で激しい戦いを繰り広げている。
9日の逮捕劇はイスラマバード近郊にある大学の土地譲渡の疑惑に関連する別の汚職事件に関するものだったようだ。イスラマバード地裁はこの件に関してカーン氏を8日間勾留するよう命じた。
カーン氏の弁護士のひとりはSNSに声明を投稿。支持者に「徹底抗戦」を呼びかけた。「パキスタンの法の支配を守るために戦い続けるのです!」
カーン氏が所属するパキスタン正義運動(PTI)は警察を非難し、逮捕は違法と主張している。
地元メディアによると、カイバル・パクトゥンクワ州、パンジャブ州、バルチスタン州、イスラマバードなど、いくつかの地域に陸軍兵士が配備されたという。
シャリフ氏は国民に向けたテレビ演説で、「いかなる理由があろうと、暴力的な抗議行動は許されない」と警告した。「法を犯す者には鉄の拳で対応します!」
しかし、カーン氏の支持者は9日夜、東部ラホールの軍施設に攻め込み、室内を物色し、シャンデリアを壊し、パソコンなどを持ち去った。
陸軍は9日を「暗黒の日」と呼び、公共の財産が攻撃された場合は厳しい対応を取ると警告した。