◎アフリカ北部のチュニジアやリビアなどにはサハラ砂漠以南の紛争や混乱に巻き込まれた多くの亡命希望者が押し寄せている。
チュニジアの首都チュニスで25日、サイード(Kais Saied)大統領の人種差別発言に抗議するデモ行進が行われ、数百人が参加した。
サイード氏は今週、「サハラ砂漠以南の亡命希望者が犯罪を引き起こしている」と発言し、人権団体などから非難を浴びていた。
AP通信によると、同国のジャーナリスト組合といくつかのNGOがデモを主催したという。
人々は「人種差別反対」「移民の基本的人権を保障しろ」「サイード弾圧警察」などと書かれたプラカードを掲げて市中心部を行進した。
サイード氏はサハラ以南の亡命希望者について、「暴力、犯罪、容認できない行為を繰り返している」と指摘。移民を取り締まる緊急措置が必要という考えを示していた。
NGO「チュニジア社会経済権利フォーラム」はSNSに声明を投稿。「サイード氏の発言後、サハラ以南から避難してきた人々に対する人種差別、ヘイトスピーチ、暴力が増加している」と嘆いた。
また同フォーラムは「サイード氏はサハラ以南の移民を追い出すために、反移民派を煽っている」と非難した。
地元の人権団体によると、警察は移民への嫌がらせや暴力を容認することが多々あるという。ある移民は公共交通機関の利用を妨げられたとSNSに投稿している。
デモに参加した男性はAP取材に対し、「サイードはサハラ以南の人々を追い出すために嘆かわしい発言をし、ヘイトを助長している」と語った。
別の男性は「サイードは移民を受け入れない欧州諸国を真似して人々を送還しようとしている」と語った。
アフリカ北部のチュニジアやリビアなどにはサハラ砂漠以南の紛争や混乱に巻き込まれた多くの亡命希望者が押し寄せている。
人々は西欧への亡命を夢見て、頼りないゴムボートやボロボロの木造船に乗り、イタリアのシチリア島などを目指す。
地元メディアによると、アルジェリアに近い山岳地帯ではこの数日でサハラ以南の移民とみられる約100人が国境警備隊に拘束されたという。
サイード氏の発言はSNSで嵐を巻き起こしたものの、一部の支持者はこの発言を称賛している。
チュニジアは深刻な政治・経済危機に直面している。国連の推計によると、人口約1200万人のうち400万人が貧困層であり、同国の沿岸警備隊と警察は予算不足の影響で移民の捜索・救助に苦慮しているという。
あるツイッターユーザーはこう投稿している。「移民の保護や送還に予算を割り当てる余裕はありません。彼らを砂漠に送り返しなさい」