◎サイード大統領は2021年7月末に当時の首相を解任したうえで議会を閉鎖し、権力を手中に収めた。
チュニジア政府は19日、欧州労働組合連合(ETUC)がサイード(Kais Saied)大統領に抗議するデモに関与したことを受け、その幹部に国外退去を命じた。
ETUCのアイルランド事務局長であるリンチ(Esther Lynch)氏は18日、港湾都市スファックスのデモで演説し、サイード政権を痛烈に批判した。
政府はこれを「内政干渉」と批判し、リンチ氏に国外退去を命じた。
このデモを主催した労働組合UGTT(チュニジア一般労働組合)はサイード氏が政敵、メディア、司法、経済界、労組を弾圧をしていると非難。サイード氏に退陣を求めている。
サイード氏は2021年7月末に当時の首相を解任したうえで議会を閉鎖し、権力を手中に収めた。
野党と活動家はサイード氏の強硬措置をクーデターと非難し、各地で抗議デモを続けている。議会は昨年3月に解体され、12月に議会選が行われたものの、投票率は8.8%にとどまり、先月の第2回投票も悲惨な結果に終わった。
リンチ氏は演説の中で、先月逮捕された労組幹部の釈放を要求した。
またリンチ氏はサイード政権に対し、UGTTと協議し、破綻寸前の経済を救う方法を官民で模索するよう呼びかけた。
チュニジア大統領府はツイッターに声明を投稿。「当局は大統領令に基づき、UGTTデモにおけるリンチ氏の内政干渉発言に強く抗議し、24時間以内に退去するよう命じる」としている。
ETUCは19日、リンチ氏がチュニジアを離れたと発表した。
サイード政権はアラブ世界のモデルとみなされた民主主義を脅かし、経済危機に拍車をかけている。
国際通貨基金(IMF)は昨年末、チュニジアに対する19億ドルの融資を凍結した。
チュニジア政府は対外債務の処理にひどく苦労し、公務員の給与支払いやロシアのウクライナ侵攻がもたらした食料・燃料価格の高騰に対処する資金を必要としている。
同国の先月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で60%増。CPIはこの1年上昇し続けており、人口の大多数を占める低中所得者層の生活に深刻な影響を与えている。