◎コソボは2008年にセルビアからの独立を一方的に宣言した。
セルビアの首都ベオグラードで15日、西側諸国が提案したコソボ問題の解決策に抗議する集会が開かれ、数百人が参加した。
デモ隊はブチッチ(Aleksandar Vucic)大統領にコソボとの関係正常化を模索する西側の提案を拒否し、交渉から撤退するよう求めた。
ある右翼グループは「コソボの反逆者を倒せ」と叫び、「降伏しない」と書かれた横断幕を掲げて行進した。
AP通信によると、デモ隊はベオグラードの大統領府前まで行進し、交通を妨害したという。
コソボの領土をセルビアの国章で上書きする旗を掲げたグループは、「ロシアを裏切るな!米国に屈するな!」と叫びながら行進した。
国営テレビによると、あるグループが大統領府のフェンスを乗り越えようとしたものの、機動隊に阻まれ、追い返されたという。逮捕者は出ていないようだ。
米国とEUは紛争解決を目指し、各国の関係者と協議を進めている。
コソボは2008年にセルビアからの独立を一方的に宣言した。西側諸国の大半は独立を承認したが、セルビアやその同盟国であるロシアと中国は認めていない。
コソボ紛争(1998~99年)の死者は1万3千人と推定されている。セルビア軍によるアルバニア系住民の弾圧は国際的な批判を引き起こし、NATOは紛争を終わらせるためにセルビアを空爆した。
ブチッチ政権はEU加盟を目指す一方、ロシア・中国寄りの政策を取り、有権者の大多数はこの政策を支持しているようにみえる。
米国はロシアがコソボ危機を利用してバルカン半島を不安定にし、ウクライナ侵攻から注意をそらせようとしていると懸念している。
ブチッチ氏は「西側の提案を検討する用意がある」と表明している。提案の詳細は公表されていないが、西側はコソボの国連を含む国際機関への加盟に反対しないよう規定したいとみられる。
デモを主催した団体はブチッチ氏に交渉中止と提案の詳細を公表するよう求めた。
ブチッチ氏は提案について、「セルビアのEU加盟交渉を加速させ、国際的孤立を防ぐもの」と評している。
ブチッチ氏はロシアとの関係を維持し、欧州の中で唯一、対ロシア制裁に参加していないが、ウクライナ侵攻は非難している。