シカゴ／人種差別がもたらした史上最悪の日

ジョージ・フロイド氏の死に対する抗議活動は、シカゴを燃やした

イリノイ州最大の都市シカゴは、史上最悪と言っても過言ではない週末を迎えた。5月31日には24時間で少なくとも18人が殺害された。

殺人事件の連鎖は、ミネソタ州ミネアポリスで殺害されたジョージ・フロイド氏の死に対する抗議活動がもたらした。風の街シカゴの暴力と略奪は今だ収まらず、住民たちは戦々恐々としている。

シカゴ大学犯罪研究所の調査によると、5月最後の週末3日間で少なくとも85人が銃撃され、24人が射殺された。なお、犠牲者のほとんどは黒人だったという。

シカゴ・サンタイムズの発表したデータによると、事件に巻き込まれたのは学生、親、中年労働者などだった。

同犯罪研究所には1961年までの事件、事故記録が保管されており、シニアリサーチディレクターのマックス・カプステイン氏は「今回のような異常事態は経験したことがないし、見たこともない。不特定多数の住民が訳も分からぬうちに銃撃され、命を落としている。シカゴ史上最悪の週末と言って間違いないだろう」と述べた。

カプステイン氏は、5月25日に発生したフロイド氏殺人事件に伴う抗議活動が開始されて以降、シカゴ警察（CPD）の警察官たちが通常通りにパトロールを行えなかったと指摘。ただし、警察官たちが意図したことではなく、大規模な抗議活動や街の混乱によって、人員がそれらの対応に割かれてしまったためである。

「CPDは数千、数万人規模の抗議活動に注視せざるを得ず、通常のパトロール業務が不足した。残念なことに、大規模な抗議活動は週末に集中、その他のエリア守る警察官たちは姿を消し、結果、あちこちで理不尽な殺人事件が発生した」と同氏は述べた。

同犯罪研究所のデータによると、24時間当たりの殺害件数がこれまでで最も多かった日は1991年8月4日の13人。今回、この不名誉な記録を大幅に更新した。

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殺人事件

シカゴのロリ・ライトフット市長によると、5月31日の緊急コールセンター（911）受付件数は約65,000件。これは1日の平均受付数を50,000件以上を上回る驚異的な件数だったという。

同警察はサンタイムズの取材に対し、「5月最後の週末に経験した戦いは、かつてない規模のものだった。国務省は、犯人の動機を特定すべく市内で発生した複数の事件を調査している。影響を受ける全ての住民、特に、これらの無意味な殺人事件によって殺害または負傷した人々への正義を徹底しなければならない」とコメントした。

二人の子供を持つ36歳のアンジェロ・ブロンソン氏は、ワシントンD.C.からシカゴに住む家族の元を訪れた際、何者かによって射殺された。

三人の子供を持つ32歳のジョン・ティッグス氏は、街の携帯電話ショップで事件に遭遇。店舗で料金を支払っていた時、背後から銃撃され、死亡した。

大学生のラザラー・ダーニアルズ氏（18際）とケイシャネイ・ボールデン氏（18際）は、5月31日日曜日に射殺された。

シカゴの殺人発生率はアメリカの都市の中で最も高いが、近年減少傾向にあった。1990年代には1年間で900人以上が殺害されることも珍しくなかったが、治安維持対策が徹底され、件数は徐々に減少していた。

2018年に殺害された人は561人。これは同国最大の都市であるニューヨークとロサンゼルスの合計を上回っている。2019年には492人が殺害された。

9日、トランプ大統領はニューヨーク州バッファローでの抗議活動中、警察官に突き飛ばされ負傷した男性に対し「男は警察のデバイスを無力化させるために、通信をスキャン、破壊工作を試みていた」とツイートした。

75歳のマーティン・グギノ氏が突き飛ばされ負傷した映像には、同氏が携帯電話を掲げ、警察官の列に接近する様子が記録されている。なお、同氏は頭部を負傷、同日退院したが、コメントを発表できる状態ではないという。

同氏が警察のデバイスに対し何かをしようとしていた、という証拠は見つかっていない。なお、スマートフォンアプリの中には、警察の通信を傍受できると”主張する”ものが多数存在する。しかし、一般市民が手にできる”程度”のアプリで、警察のデバイスを妨害したり、破壊工作を行うことはまず不可能、と考えてよい。

負傷したグギノ氏の弁護士は、「なぜトランプ大統領は負傷した一国民に対し、根拠のない危険な非難をしたのか。彼と彼の家族は困惑している。彼は暴力を否定する平和的な抗議者だった」とコメントした。

今回のツイートに対しツイッター社は、ルールに違反するものではない、とコメントしている。