◎労働組合は政府の提案を却下し、1月19日にストを計画していると発表した。
フランス政府は10日、2030年までに定年年齢を現在の62歳から64歳に引き上げると提案した。
ボルヌ(Elisabeth Borne)首相はこの改革案について、「社会保障費を抑える措置のひとつ」と説明した。
年金改革はマクロン(Emmanuel Macron)大統領が2017年に初当選した際の公約のひとつである。
しかし、労働組合は改革案を却下し、1月19日にストを計画していると発表した。
ある労組の書記長はSNSに、「年金支給開始年齢を60歳に引き下げればマクロンを応援する」と投稿している。
ボルヌ氏は年金受給者への支援を含む年金改革の概要を説明したうえで、「この改革案は国民に恐怖と疑問を呼び起こすだろう」と語った。
最新の世論調査によると、回答者の8割が定年年齢の引き上げに反対している。一部の国会議員はこの改革案が昨年の議会選におけるマクロン氏の与党「共和国前進」の大敗につながったと指摘するほどだ。
ボルヌ氏は「社会保障費の増大と赤字を放置するのは無責任だ」と語った。「それは必然的に税金の大幅な引き上げと年金の減額につながり、年金制度に脅威を与えることになるのです!」
議会が改革案を承認すれば、定年年齢は今年9月から1年に3ヶ月ずつ引き上げられることになる。2027年には63歳3カ月に、2030年には目標の64歳になる。
▽2027年以降の年金受給には43年の就労が必要(現在は42年)。
▽新規退職者に対し、最低賃金の85%以上(現在の水準で月額約1200ユーロ)の年金を保証する。
▽警察官、刑務官、航空管制官、その他肉体的・精神的に過酷な業務に従事する公務員は早期退職の権利を維持する。
▽鉄道労働者、電力・ガス労働者などの定年年齢や給付額が異なる、いわゆる「特別制度」を廃止する。
年金はマクロン氏が提案する改革の重要な部分を占めてきた。しかし、この計画は2018年の黄色いベスト運動、コロナの感染拡大で中断を余儀なくされた。
公共部門で働く労働者はマクロン氏の提案に強く反対している。改革が実現すれば、それ以降の新入社員は先輩たちが享受してきた特別制度を受けられなくなる。
極左政党「不服従のフランス」のメランション(Jean-Luc Melenchon)氏は改革案を「後退」と呼び、極右「国民連合」のル・ペン(Marine Le Pen)党首は「絶対に賛成しない」と明言した。
世論調査によると、回答者のほぼ半数が改革の必要性を理解している。フランス以外の先進国も医療費、年金、その他の社会保障費の増加に頭を悩ませている。
ボルヌ氏はこの改革によって年金予算を均衡化し、2030年までの間に年間177億ユーロを節約できると説明した。
またボルヌ氏は、「定年引上げは高齢者の雇用率を高めることにつながる」と述べた。
しかし、SNSには「早く引退したい」「死ぬまで働くなんて嫌だ」などと言ったコメントが多数寄せられている。
ロシアのウクライナ侵攻がもたらした経済危機の影響で人口の大多数を占める労働者階級の生活はひどく困窮している。
政府が示した改革案は来月初めに審議入りする予定だ。与党共和国前進は昨年の議会選で大敗し、過半数割れとなった。