◎ロシア軍はミサイルやイラン製自爆ドローンを使って送電線や発電所を執拗に攻撃している。
ウクライナのゼレンスキー(Volodymyr Zelenskyy)大統領は3日、ロシア軍が戦場でウクライナ軍に圧倒されている腹いせに「エネルギーテロ」を行っていると非難した。
ゼレンスキー氏は3日に公開した動画で、人口の10%に相当する450万人が停電の影響を受けたと報告。エネルギーインフラに対する攻撃を「非人道的」と糾弾した。
ロシア軍はミサイルやイラン製自爆ドローンを使って送電線や発電所を執拗に攻撃している。
一方、南部ヘルソン州の親ロシア首長は3日、ロシア軍が同州の西岸から撤退する可能性があると報告した。
ウクライナ軍はヘルソン州の州都ヘルソン市の奪還を目指し、攻勢を強めているとみられる。
一部の専門家はロシア軍のエネルギーインフラ攻撃について、「ウクライナ軍の追撃をかわす作戦のひとつ」という見方を示している。
ウクライナ大統領府によると、この1カ月で国内の発電所の3分の1が破壊されたという。
その結果、政府は寒さが厳しくなり始めるこの時期に国民に節電を要請せざるを得なくなった。
ゼレンスキー氏は動画の中で、「電力供給が一時的に断たれ、450万人が影響を受けた」と報告した。
ゼレンスキー氏はエネルギーインフラへの攻撃について、「前線で戦果を上げられないロシアの弱さの現れである」と述べた。「ロシアはウクライナ軍に押され、敗走し、やけくそになり、前線から遠く離れたインフラにミサイルを撃ち込んでいます」
「ウクライナ軍には勝てないと悟り、エネルギーを断つことで国民を追い詰めようとしているのです..」
ロシア国防省はエネルギーインフラを標的にしていることを認めている。
ゼレンスキー氏は前線の戦況をほとんど明らかにしていないが、南部ヘルソン州の親ロシア首長はウクライナ軍に押されていることを認め、住民の「強制避難」を始めている。
首長はロシア国営メディアの取材に対し、「ロシア軍はヘルソン西岸から撤退する可能性が高い」と語った。
しかし、ウクライナ政府はこの発言に疑問を呈し、ウクライナ軍を油断させる「偽旗作戦」の可能性があると警告している。
西側の一部メディアも関係者や情報筋の話を引用し、「ロシア軍の高官や将校はヘルソン州から撤退している」と報じている。
ウクライナ軍は冬が来る前に少しでも多くの領土を取り戻したいと考えている。そこにとどまる住民は助けがなければ冬を越せないかもしれない。
一方、ロシアは冬が来る前に防衛線を確立し、併合した地域の支配を確立しようとするだろう。
ウクライナ公共放送もヘルソン州の戦況はほとんど分からないと報じている。しかし、同放送局は関係者の話を引用し、「予備役の部分動員で招集された一部の兵士が市内に配備され、部隊の撤退が完了するまでウクライナ軍を食い止める役目を担う可能性がある」と報じている。
一部の専門家も「予備役は戦闘経験豊富な部隊を守る人間の盾、捨て駒になる」と指摘している。
ヘルソン州の銀行は閉鎖され、その他の小売店や博物館なども略奪の対象になったと報じられている。
ロシア軍はこの地域から数万人をロシア領内に「避難」させたと主張しているが、ウクライナはこれを「強制移住」と呼び、戦争犯罪と糾弾している。
オースティン(Lloyd Austin)米国防長官は3日、「ウクライナ軍には南部の都市を奪還する力がある」と述べた。
しかし、ウクライナ軍はまだこの地域で戦闘を続けている。一部メディアは「ロシアの罠を警戒して前進を控えている」と報じている。
ロシアは侵攻開始直後にヘルソン州を占領した。
しかし、この地域では1カ月以上前からウクライナ軍の反攻作戦が続いており、ロシアは目標の見直しを迫られている。
ヘルソン州はロシアに強制併合された4州のひとつである。