◎北朝鮮は先月、核兵器の使用に関する法令を全会一致で採択。金正恩 党総書記は北朝鮮を「不可逆的な核兵器保有国」と宣言した。
2022年10月10日に北朝鮮当局が公表した写真、弾道ミサイルの発射実験を監督する金正恩 党総書記(Korean Central News Agency/Korea News Service)

北朝鮮の国営メディアは10日、最近行った弾道ミサイルの発射実験は金正恩(Kim Jong Un)党総書記自らが指揮した「戦術核訓練」であり、米韓合同軍事演習への対抗措置であると報じた。

キムは9日の早朝にミサイルを2発発射し、この2週間で7回目となる威嚇行為を行った。

朝鮮中央通信社KCNAによると、キムは「戦術核作戦」なる模擬核弾頭を搭載した弾道ミサイルによる演習を指揮・指導したという。

KCNAは、「尊敬するキム同志は敵軍の司令部、主要港、南方の空港を攻撃することを想定し、戦術核作戦を指揮した」と報じている。

またKCNAは「我が国の核戦力の有効性と実践的な戦闘能力は、いかなる場所からでもいつでも目標を攻撃・破壊することができると完全に示された」としている。

さらにKCNAはキム同志の発言を引用し、「敵が対話と交渉を望んでも、我々は何も話すことはないし、その必要性も感じていない」と報じた。

キムは戦術核の開発を強く望んでおり、昨年1月の党大会でそれを優先すると宣言していた。

北朝鮮は先月、核兵器の使用に関する法令を全会一致で採択。キムは北朝鮮を「不可逆的な核兵器保有国」と宣言した。

それ以来、米国、韓国、日本は原子力空母ロナルド・レーガンを2度にわたってこの地域に派遣するなど、合同演習を行ってきた。キムはこうした演習を侵略のリハーサルと呼んでいる。

KCNAは米韓演習に言及し、「自国の戦争抑止力と核反撃能力を確認し評価するために、戦争を想定した軍事訓練を行うことが決まった」と報じている。

KCNAが公開した写真には▽弾道ミサイルの発射実験(陸上と水中発射タイプ)▽それを監督するキムの雄姿▽麦わら帽子をかぶったキム▽カーキ色のアノラックを着用したキムの姿などが写っていた。

さらに▽兵士と笑顔で談笑するキム▽妻と並んで両手を耳に当てるキムなど、珍しい写真も公開された。

KCNAは最近、弾道ミサイルの発射実験の情報を報じていなかった。韓国のアナリストによると、キムは朝鮮労働党が創設77周年を迎えるにあたり、国民の愛国心を高めるために実験を公表した可能性があるという。

写真には短距離弾道ミサイルや300mm多連装ロケットシステムなども写っていた。

一部の専門家はKCNAが突然情報を公開したことについて、「新型の中距離弾道ミサイル(IRBM)の開発は順調に進んでいると世界にアピールしているように見える」と指摘している。

北朝鮮は先週、約5年ぶりにIRBMを発射した。それは日本を飛び越え、太平洋に着弾したと推定されている。

韓国軍は早ければ今月中にも北が2017年以来となる地下核実験を行う可能性があるという見方を示している。

KCNAによると、キムは「大規模な複合空襲」なる訓練も指揮し、初めて150機以上の戦闘機が同時に離陸したという。

韓国軍は先週、北の戦闘機12機が南北境界線の北側で編隊飛行・射撃訓練を行ったため、戦闘機30機をスクランブル発進させたと報告している。

韓国メディアはこの問題に詳しい専門家の話を引用し、「北朝鮮は米韓の連帯と準備は無駄になると世界に発信したかったのかもしれない」と報じている。「北がすぐに引き下がることはなく、米韓も決して折れないでしょう」

<北朝鮮が採択した核兵器の使用に関する法令の要点

▽核戦力は国の主権と領土、人民の生命と安全を外部の軍事的脅威と侵略、攻撃から守る国防の主要戦力となる。

▽核戦力は敵対勢力に朝鮮民主主義人民共和国との軍事的対決が破滅をもたらすことを明確に理解させ、侵略と攻撃の企てを断念させることによって戦争を抑止することを主要任務とする。(核抑止力)

▽核戦力は抑止が失敗した場合、敵対勢力の侵略と攻撃を撃退し、戦争に決定的な勝利を収めるための作戦任務を遂行するものとする。

▽核戦力は各種の核弾頭、運搬手段、指揮統制システムおよびその運用と更新のためのすべての人員、設備、施設によって構成される。

▽最高人民会議の国務院長は核兵器に関するすべての決定権を有する。

▽敵対勢力の攻撃を受けて国家核戦力の指揮統制体制が危険にさらされた場合、あらかじめ決定された作戦計画に基づき、挑発と指揮の起点を含む敵対勢力を撃滅するために自動的かつ直ちに核攻撃を開始するものとする。

▽核戦力は使用の命令後、直ちに使用する。

▽朝鮮民主主義人民共和国は国家と人民の安全を著しく脅かす外部からの侵略と攻撃に対処するため、核兵器を最後の手段として使用することを大原則とする。

▽朝鮮民主主義人民共和国は非核兵器国が他の核兵器国と結託して朝鮮民主主義人民共和国に対する侵略と攻撃に加担しない限り、核兵器による威嚇や核兵器の使用を行わない。

▽朝鮮民主主義人民共和国は次のような場合に核兵器を使用することができる。

1.核兵器またはその他の大量破壊兵器による攻撃が開始されたと判断される場合。

2.敵対勢力による国家指導部および核戦力の指揮機関に対する核または非核攻撃が行われた、または行われそうになったと判断される場合。

3.国家の重要な戦略目標に対する致命的な軍事攻撃が行われた、または間近に迫っていると判断される場合。

4.戦争の拡大・長期化を防止し、有事における戦争の主導権を握るための作戦の必要性が不可避的に生じた場合。

5.その他、国家の存亡と国民の安全に対する壊滅的危機に、核兵器のみによって対応せざるを得ない状況が生じた場合。

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