◎ハッキングに成功したグループは「アダラート・アリ(Adalat Ali)」と名乗っている。
イランで8日、国営テレビが何者かにハッキングされ、最高指導者ハメネイ(Ali Khamenei)師を非難する映像が全国に配信された。
報道によると、放送事故は現地時間18時頃に発生したという。ニュース番組が突然白い仮面の写真に切り替わり、続いてハメネイ氏と道徳警察の暴力の犠牲になったアミニ(Mahsa Amini)さんを含む女性4人の写真が映し出された。
ハッキングに成功したグループは「アダラート・アリ(Adalat Ali)」と名乗っている。
テヘランでクルド人女性のアミニさんがヒジャブを適切に着用しなかったという理由で道徳警察に殴り殺された事件は全国規模のデモを引き起こし、一部地域では暴動に発展している。
アミニさんは先月13日、テヘランを訪問中にヒジャブを適切に着用しなかったという理由で道徳警察に殴られ、パトカーに頭を叩きつけられ、車内で暴行を受け、昏睡状態に陥り、3日後に死亡した。
この事件に抗議するデモはイランから世界に拡散し、イラン指導部の責任を問う声が高まっている。
国営テレビはハッキング後まもなく、放送を中断した。
ハッキング映像のキャプションには「私たちに加わって立ち上がりなさい」、別のキャプションには「若者の血があなたの前足から滴り落ちている」と書かれていた。
専門家によると、ハメネイ師に対する不満がここまで大きくなったのは初めてだという。ハメネイ氏は権力をほぼ全て手中に収めている。
ソーシャルメディアで8日に拡散した動画には、テヘランの大学を訪問したライシ(Ebrahim Raisi)大統領に「失せろ」と叫ぶ女子学生の姿が映っていた。
一方、4週目に突入した抗議デモは治安部隊の厳しい取り締まりに直面している。
北西部の都市サナンダジではデモ隊を支援していた車が銃撃を受け、2人が死亡。第2の都市マシュハドでも女性が首を撃たれ死亡したと伝えられている。
国営イラン通信(IRNA)は8日、サナンダジの地元警察の声明を引用し、「反革命分子が市民2人を射殺した」と報じた。
またイラン当局は7日、アミニさんの死因は頭部への打撃によるものではなく、呼吸不全による多機能不全と発表した。しかし、SNSで拡散した動画にはアミニさんが道徳警察に殴られ、引きずり倒され、パトカーに頭を叩きつけられ、車内で暴行を受ける様子が映っている。
ノルウェーに拠点を置く人権団体イラン・ヒューマン・ライツ(IHR)によると、治安部隊の攻撃で殺害された市民は150人を超え、数千人が負傷したという。
テヘランのバザールでは暴徒化した市民が売店に火をつけ、治安部隊を追い払ったと報告されている。他の都市でも多くの小売店が閉鎖を余儀なくされた。