◎中道左派の野党労働党はモリソン氏に引導を渡すと誓っている。
オーストラリアの与野党はコロナウイルス、インフレ、気候変動などに焦点を当てた6週間におよぶ選挙戦を繰り広げ、21日の連邦議会選に臨む。
モリソン(Scott Morrison)首相率いる保守連合は4期目を目指し、有権者に支持を呼び掛けてきた。
中道左派の野党労働党はモリソン氏に引導を渡すと誓っている。
モリソン氏は4月に選挙戦を開始し、労働党の政治家はAUSを危険にさらすと有権者に訴えてきた。
モリソン氏は昨年末に早期解散を決断し、多くの専門家が「有権者はモリソン政権のコロナ対策を評価するだろう」と予測した。
しかし、この半年でオミクロン株の拡大、ワクチン接種の鈍化、食料と燃料価格の高騰を含む複数の問題が発生し、モリソン氏は支持率を大きく落とした。
同国の今年のコロナ死者は過去2年の累計を大きく上回っている。2020年と2021年の死者は約2200人、今年はこの数カ月で5000人以上が死亡している。
モリソン政権は20日に投票規定を一部変更し、最近コロナに感染した人の電話投票を認めた。
選挙管理委員会の委員長はオーストラリア放送協会(ABC)のインタビューの中で、「この時期の変更はリスクを伴うが、コロナの感染拡大と国民感情を考えると致し方ない」と語った。
ロシアのウクライナ侵攻もモリソン氏に圧力をかけている。
統計局によると、今年1月~3月の間の消費者物価指数は、前年同時期と比べて5.1%上昇した。これを受け、AUS準備銀行は今月、政策金利を引き上げた。なお、同行が金利を選挙期間中に引き上げたのは2007年以来約15年ぶり。
2007年11月の金利引き上げ後、ハワード(John Howard)首相率いる保守政権は野党に敗れた。
労働党の報道官は20日、準備銀行の利上げを「モリソン生活費危機」と呼び、保守連合を批判した。
労働党は中国とソロモン諸島が締結した安全保障協定に狙いを定め、モリソン氏を攻撃している。
労働党はこの協定をAUSの外交史上最大の失敗と呼び、モリソン氏の対応を痛烈に批判した。
この協定はAUSだけでなく、インド太平洋の安全保障に影響を与える可能性がある。
AUSはソロモン諸島と安全保障条約を結び、数億豪ドルの援助を提供してきた。
ソロモン諸島のソガバレ(Manasseh Sogavare)首相は島内に中国軍基地が建設されることはないと主張し、中国も「西側の言いがかりだ」と懸念を一蹴した。
モリソン氏は労働党が政権を取れば中国の経済的圧力に対抗できなくなると主張し、ソロモンの問題が選挙前に噴出したのは「中国の陰謀」と指摘している。
モリソン氏は無党派層を引き込みたいと考えているが、この層は気候変動問題に注力する無党派候補を支持しているようだ。
無党派候補は保守連合や労働党より環境に配慮した政策を公約に掲げ、与党に温室効果ガスの削減目標を強化するよう求めるとしている。
モリソン氏は2030年までに排出量を2005年比で26%〜28%削減するとしている。一方、労働党は43%の削減を約束している。
最新の世論調査によると、労働党は保守連合をわずかにリードしている。しかし、世論調査会社の信用は2019年の選挙で失墜し、まだ回復していない。
2019年選挙の保守連合と労働党の票の割り合いは51.5%ー48.5%。国内5大世論調査会社が予測した結果とは正反対であった。
2019年の選挙後、市場・社会調査機関が行った調査によると、世論調査の回答者の多くが労働党支持者であることが判明した。