◎南部オデーサはクリミア半島とモルドバ東部の分離主義国家「沿ドニエストル」の中間に位置する。
ウクライナ当局は10日、ロシア軍が南部の港湾都市オデーサの港を攻撃したと明らかにした。
ロシア軍は東部ドネツク州とルハンシク州の完全制圧を目指しているとされるが、ウクライナ軍の兵器輸送を妨害するために、その他の地域へもミサイルを撃ち込んでいる。
戦争は11週目に突入し、完全に泥沼化した。ウクライナ軍は首都キーウを防衛し、現在は北東部の第二の都市ハルキウ州の奪還を目指しているとされる。
ロシア軍は東部のテロ国家と2014年に併合したクリミア半島を結ぶ陸上回廊を完成させるために、ドネツク州マリウポリの完全制圧を目指している。
しかし、マリウポリのアゾフスタリ製鉄所に立てこもるウクライナ軍の精鋭部隊アゾフ連隊はロシアの降伏要求を却下し、守りを固めつつ反撃しているとされる。
国連と赤十字のチームは製鉄所内にいた民間人を全員避難させたと発表したが、当局は9日、「製鉄所内にはまだ民間人約100人が取り残されていると思う」と明らかにした。
ロシア軍のミサイルは民間人の避難所を容赦なく破壊している。
当局は10日の声明で、ハルキウ州イジュムで数週間前に破壊された建物から民間人44人の遺体を回収したと明らかにした。
7日にミサイル攻撃を受けたとされるルハンシク州の避難所（学校）では少なくとも60人が死亡したと報告されている。
一方、国連はウクライナの避難民に関する統計を更新した。それによると、4月末までに避難を余儀なくされた市民は1400万人に達し、そのうち590万人が国外に逃れたという。
オデーサはクリミア半島とモルドバ東部の分離主義国家「沿ドニエストル」の中間に位置する。ロシア軍の高官はウクライナ南部も制圧し、沿ドニエストルを解放すると発言したとされる。
ウクライナ当局によると、ロシア軍は9日にオデーサにミサイルを7発撃ち込み、ショッピングセンターと倉庫を破壊したという。この攻撃で1人が死亡し、5人が負傷した。
ウクライナ軍は民間施設への攻撃が相次いでいることについて、「ロシア軍は精密兵器を使い果たし、命中精度の低いミサイルやロケットを使用している可能性がある」と警告している。
一部の専門家は、「ロシアの目的はウクライナをアゾフ海と黒海から遮断すること」と指摘している。沿ドニエストルとクリミア半島の陸上回廊が完成すれば、ウクライナはおのずと港を失うことになる。
また、仮に港を制圧できなくても、オデーサを破壊し尽くせば、ウクライナは貿易拠点を失うに等しいと指摘する専門家もいる。ロシア軍はオデーサへの攻撃で西側が供給した兵器を数回に分けて破壊したと主張している。
ゼレンスキー（Volodymyr Zelensky）大統領は10日、ウクライナ軍はロシア軍をハルキウ州から押し出していると明らかにした。大統領府によると、軍はハルキウ北東部の4つの村からロシア軍を追い出し、ロシア国境に向かってゆっくり前進しているという。
一方、クレバ（Dmytro Kuleba）外相はロシア軍の侵攻が停滞していることに自信を深め、目標を拡大しているように見える。
クレバ外相は英ファイナンシャル・タイムズのインタビューの中で、ロシア軍を占領地から追い出していると述べている。「ウクライナ軍は強化されており、ドンバスの戦いに勝利すれば、残りの領土の解放を目指すことになります...」
クレバ外相はクリミア半島には言及しなかったが、一部の専門家はウクライナ軍はクリミアの奪取を目指している可能性があると指摘している。
ゼレンスキー大統領は10日に88歳で亡くなったウクライナの初代大統領レオニード・クラフチュク（Leonid Kravchuk）氏に敬意を表した。
