◎ロー対ウェイドの転覆を支持する5人の最高裁判事はすべて共和党の大統領によって任命され、そのうち3人はドナルド・トランプ前大統領が任命した。
米上院のチャック・シューマ―上院院内総務は5日、「人口妊娠中絶は合法である」とする法案を来週採決すると明らかにした。
中絶を非合法化する可能性がある最高裁の審理草案はリベラル派と女性の怒りを引き起こした。
保守的なミシシッピ州が起こしたロー対ウェイド裁判の判決を覆そうとする裁判の判決は6月下旬から7月上旬頃に下される見込み。
シューマー氏は記者団に、「この投票は共和党が性と生殖に関する健康と権利に反対していることを明らかにする」と語った。
下院は昨年、ロー対ウェイド裁判の判決を成文化する法案を賛成218ー反対211で可決した。共和党員と民主党員1人が反対に投票した。
民主党は上院の多数派だが、共和党のフィリバスター(議事妨害)を回避するためには60票の賛成が必要であるため、この法案は共和党員10人が賛成に回らない限り廃案になる可能性が高い。
シューマー氏は、「米国民は来週、共和党が中絶を禁止する過激派側につくか、女性、少女、家族の側につくかを知ることになるだろう」と語った。
中絶を合法とする1973年の画期的な判決は、合衆国憲法は中絶の権利を保障していると「解釈」したが、議会はこれまで、この判決を成文化する法案に反対してきた。
▽ロー対ウェイド事件(1973年):最高裁は妊娠中絶を「合衆国憲法で保障される権利」と認め、堕胎禁止を初めて違憲と認めた。
共和党の上院議員10人が賛成に回れば、中絶の権利は合衆国憲法で保障されることになる。
今週初めにポリティコ社が報じた草案は、最高裁の保守派が1973年の判決を覆し、中絶を規制する権限を各州に与える可能性が高いことを示唆している。
全米の保守的な州は人工中絶を禁じる州法をすでに複数施行している。少なくとも13の州がロー対ウェイド裁判の判決が覆された時点で中絶を禁止するトリガー法を施行しており、他の州も同様の措置を取る可能性がある。
ジョージ・W・ブッシュ元大統領が任命したサミュエル・アリート判事は草案の中で、「今こそ憲法に耳を傾け、中絶の問題を国民が選んだ代表者(最高裁判事)に戻す時である」と述べている。
最高裁は草案を本物と認めたが、そこに書かれている内容で決まったわけではないと説明している。
ロー対ウェイドの転覆を支持する5人の最高裁判事はすべて共和党の大統領によって任命され、そのうち3人はドナルド・トランプ前大統領が任命した。
シューマー氏はロー対ウェイドを覆そうとする動きについて、「強硬右派が望んでいることだ」と指摘した。「レイプ、近親相姦、強制妊娠...右派はこれらの被害者の中絶すら禁じようとしています」
「共和党の政治家は米国の女性に、あなたの体、あなたの権利はあなたのものではなく私たちのものと言っています。このような自由も権利も民主主義もないビジョンを成立させるわけにはいきません。上院共和党は来週、女性の権利に対する敵意を助長してきた、長年にわたって行ってきたすべての悪事に答えなければならないでしょう」
一部の共和党員は最高裁の文書が漏洩したことに懸念を表明している。
テキサス州のジョン・コーニン上院議員は5日の声明で、「リークは最高裁に対する政治的圧力を引き起こし、司法の独立を脅かしている」と指摘した。
「この草案をリークした人物は現職の裁判官に考えを改めさせようとしています。あるいは、バイデンのインフレ、犯罪、移民、国家安全保障や世界平和への挑戦といった様々な問題から米国民の関心をそらさせ、中絶に賛成する民主党の背中を押そうとしている可能性があります」