◎心理学者のエイドリアン・ファーナム氏は、「心配なのはプーチン大統領がボタンを押す、恐ろしく軽率な行動に出ることだ」と述べている。
西側諸国は自分の世界に閉じこもったウラジーミル・プーチン大統領が想像もつかないようなことをする可能性に頭を悩ませている。
ロシア政府や軍の高官はプーチン大統領の心の中に入り込み、彼の意図をより良く理解しようと試みたが、失敗したと信じられている。
ロシア軍の思いもよらぬ停滞と西側諸国の経済制裁がプーチン大統領に圧力をかけているかどうかは分からないが、それを探る必要性はますます高まっている。
多くの専門家が「ウクライナ危機を世界大戦に発展させないためには、プーチン大統領の心理状態を理解する必要がある」と指摘している。
一部のメディアはプーチン大統領は病気やPTSDを発症した可能性があると報じる一方、多くの専門家が「プーチン大統領は孤立し、自分の世界に閉じこもり、外部の意見を聞き入れないようにしている」と考えている。
プーチン大統領は戦争前の安全保障会議で高官と距離を取り、マクロン仏大統領との直接会談でも同様の措置を取った。
米政府高官はAP通信の取材に対し、「プーチン大統領の軍事作戦はKGBの将校が考案したように見える」と述べ、懸念を表明した。
軍事作戦の考案者は明らかにされていないが、ウクライナ侵攻はロシアに大混乱をもたらした。多くの専門家が、「ロシア軍の現地将校は準備ができておらず、兵士の多くが作戦を理解せぬままウクライナに入った」と指摘している。
戦争初期にウクライナ市民に保護され、暖かいお茶に涙した若いロシア兵は何が起きているのか分からない様子だった。
かつてCIA(中央情報局)のロシア作戦を担当していたジョン・サイファー氏は、「クレムリンの動きを理解することが難しい理由は、プーチンが唯一の意思決定者であるため」と説明している。
英MI6の元長官であるジョン・ソワーズ卿もBBCニュースのインタビューの中で、「ロシアの厳重に保護された体制下で指導者の心理を知ることは極めて難しく、部下の多くも何が起きているのか知らない」と述べている。
西側の情報当局の分析によると、プーチン大統領は自ら作り出した世界の中に閉じこもっているため、外部の情報はほとんど入ってこず、特にプーチン大統領の考えを否定するような情報は全く入ってこないという。
プーチン大統領と考えを共有する高官は少なからずいると信じられているが、ウクライナ侵攻に関しては、ほんの一握りしか知らなかったと推定されている。
欧米の情報当局者は侵攻を知っていた一握りについて、「プーチン大統領の考えやこだわりを支持する信者ばかり」と指摘している。
プーチン大統領は1990年代にロシアが受けた屈辱を克服し、国の経済を発展させたいという願望と、欧米がロシアを抑えつけロシアを世界の権力争いから追い出そうとしていると信じ、駆られている。
プーチン大統領に会ったことがある高官はBBCニュースのインタビューの中で、「プーチンは2011年にリビアのカダフィ大佐が追放され殺害される映像を見ることに固執していたと記憶している」と述べている。
CIAのバーンズ長官はプーチン大統領の精神状態を評価するよう求められた際、「長年にわたり、不満と野心の中で煮詰まっていた」と述べ、「その見解は硬化し、第三者の視点とは大きく異なる」と表現した。
一部のメディアや多くのソーシャルメディアユーザーは、「プーチン大統領は狂った」「頭がおかしくなった」と指摘しているが、心理学者はウクライナ侵攻を理解できないからと言って、決断した人物を狂っていると決めつけるのは間違いだと述べている。
CIAにはアドルフ・ヒトラーを理解する試みから続く「リーダーシップ分析」を行うチームが存在する。このチームは機密情報に基づいて経歴、人間関係、健康状態を調査する。
AP通信によると、ドイツのメルケル前首相は2014年、当時のオバマ大統領に「プーチン大統領はは別世界に生きている」と述べたという。
マクロン仏大統領は先月、プーチン大統領との直接会談後に、「彼は以前と比べるとより硬く、より孤立しているように感じた」と述べたと報じられている。
ジョージ・HW・ブッシュ財団のシニアフェローであるケン・デクレバ氏は、「プーチンは精神的な病気ではないだろうし、何かが変わったようには見えないが、近年はより急ぎ、より孤立していると思われる」と述べている。
西側諸国はプーチン大統領の信頼できる情報を入手できないことに焦っている。主要メディアは先日、「ロシアの諜報機関はプーチン大統領に、作戦はあっという間に終わる、ウクライナ軍はあっという間に降伏するなどといったバラ色の予想を提示した」と報じた。
そして今週、AP通信などはある西側政府高官のコメントを引用し、「プーチン大統領はロシア軍の現状を知らないのかもしれない」と報じた。これが事実かどうかは分からないが、事実であればプーチン大統領がロシア軍の停滞を知った時、より危険な作戦に打って出る可能性がある。
AP通信の取材に応じた西側の政府関係者は、「問題はプーチン大統領がより残忍な方法を取るかどうか、使用する兵器をエスカレートさせるかどうかだ」と述べた。
ロシア当局は米国がウクライナ国内で生物化学兵器の準備を進めていると主張し、同様の兵器でそれに対抗する可能性を示唆した。
心理学者のエイドリアン・ファーナム氏は、「心配なのは彼がボタンを押す、恐ろしく軽率な行動に出ることだ」と述べている。
これは「狂人理論」と呼ばれる戦術のひとつで、今回の戦争に当てはめると、プーチン大統領は「死なばもろとも」の精神で核兵器を西側に拡散するほど狂っていると思わせ、ウクライナを降伏させる。
ファーナム氏は「プーチンは失敗や弱さを許さない。プーチンは失敗や弱さを許さないし、そういうものを軽蔑している。追い詰められて弱ったプーチンは、より危険なプーチンであり、狂った熊は檻から出して森に帰した方がいい場合もある」と述べ、最悪の事態を想定することが重要と述べている。