◎政府当局者は15日の声明で、これまでに1,297人の死亡を確認し、少なくとも5,700人が負傷したと述べた。
2021年8月15日/ハイチ、西部レ・カイ、遺体を運び出すボランティア(Joseph Odelyn/AP通信)

ハイチの政府当局によると、西部地域で発生した地震の死亡者は1,200人を超え、5,000人以上が負傷したという。

地震は8月14日の午前8時30分頃(現地時間)に発生した。アメリカ地質調査所(USGS)によると、震源は首都ポルトープランスから西におよそ125キロ離れた地点で、震源の深さは10キロ、地震の規模を示すマグニチュードは7.2と推定されている。

政府当局者は15日の声明で、これまでに1,297人の死亡を確認し、少なくとも5,700人が負傷したと述べた。行方不明者の数は分かっていない。

現地メディアによると、南西部沿岸の町レ・カイの被害が特に深刻で、多くの民家、教会、学校が崩壊または損傷したという。政府の対策チームは被害の全容把握と救助活動にあたっている。アリエル・アンリ首相は被害の全容を把握するまで国際的な支援は求めないと述べたが、すでに多くの国々と人道機関が現地に要員を派遣している。

アンリ首相は14日の声明で1カ月の非常事態を宣言した。

一方、米国国立ハリケーンセンターは15日、カリブ海を西進している熱帯低気圧はハイチ西部に大雨をもたらす可能性があると述べ、洪水や地滑りに警戒するよう呼びかけた。

ソーシャルメディアには、崩壊した建物から遺体を運び出すボランティアや消防当局者と思われる人々の写真が数多く共有された。レ・カイの英国国教会大執事のアビアデ・ロザマ氏はニューヨーク・タイムズ紙の取材に対し、「住民たちは泣き崩れ、通りは悲鳴で満たされています」と語った。「住民たちは愛する人の命、医療援助、水と食料を求めています...」

自宅を失ったレ・カイの住民ジェニー・オーギュスト氏は地面に敷いたマットレスの上で横になり、負傷した胸、腹部、腕を押さえた。オーギュスト氏は職場で屋根の崩壊に巻き込まれ負傷したが、九死に一生を得た。「私は全て失いました。何もありません。政府と自治体は水すら配ってくれません...」

アンリ首相は15日、「国立緊急センターの命を受けた対策チームは現地で救助活動と全容解明に向けた調査を進めている」と記者団に語った。「私たちは住民の救助活動、助け合い、復興に向けた全ての努力に敬意を表します。被災地に支援を提供する努力を称え、団結しましょう」

一方、ユニセフのヘンリエッタ・フォア事務局長は15日の声明で、「被害は深刻であり、多くのハイチ人が緊急に医療、きれいな水、避難所を必要としています」と述べ、親から引き離された多くの子供たちを保護しなければならないと国際社会に呼びかけた。

また、2010年のハイチ地震と先月発生したジョブネル・モイーズ大統領の暗殺事件に言及したうえで、「今回の地震は政情不安、ギャングの暴力、貧困と食糧不足、そしてコロナウイルスの感染拡大に拍車をかけている」と警告した。

ハイチは先月、国連と世界保健機関(WHO)が主導するCOVAXイニシアティブから初めてコロナワクチンを受け取り、接種を開始したばかりだった。

2021年8月15日/ハイチ、西部レ・カイの住民(Joseph Odelyn/AP通信)

レ・カイの市民保護局によると、被害を受けた建物は12,000戸を超える見込みだという。また、地域内の病院、学校、企業の事務所、教会も大きな被害を受けた。

被災した病院は患者をまともに受け入れることができず、全国各地の医療当局者やNGOがレ・カイを支援するために現地入りし、奮闘していた。セントボニフェイス病院の担当を任されたNGOヘルスエクイティ・インターナショナルの小児科医であるイノバート・ピエール博士はAP通信の取材に対し、「重症者の治療を急がなければならない」と述べた。

ピエール博士のチームはセントボニフェイス病院に重傷者を数名搬送したが、救急車の数に限りがあるため、多くの負傷者が被災地に取り残されていると指摘した。

アメリカのジョー・バイデン大統領はハイチに対する即時の支援を承認し、国際開発庁(USAID)のサマンサ・パワー長官を支援チームのリーダーに指名した。

パワー長官は15日、バージニア州の捜索救助チームを現地に派遣したとツイートした。

米国沿岸警備隊はUSAIDと協力して、医療関係者をハイチの首都ポルトープランスから西部地域に移送し、一部の負傷者を首都の医療機関に搬送していると述べた。

キューバの医療チーム253人は西部地域で負傷者の応急処置にあたっている。

国連のアンナ・ジェフリーズ報道官は15日、最初の支援部隊がハイチ政府と共に南部地域を通過したと述べた。またジェフリーズ報道官によると、世界食糧計画(WFP)は17日にトラックで食糧を運び込む予定だという。

2010年1月に首都ポルトープランスで発生したハイチ地震(M7.0)では推定30万人が死亡した考えられているが、正確な死亡者数は不明。地震により、推定100万人が住居を失い、数十万人が飢餓に直面し、町は荒廃し、大統領官邸を含むほとんどの建物が崩壊した。

2021年8月15日/ハイチ、西部レ・カイ、女性たちは崩壊した自宅から持ち物を回収した(Joseph Odelyn/AP通信)
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