国連、メキシコ人外交官をハイチ事務所の所長に任命、ギャング暴力激化

ルイス氏は首都プルトープランスとその周辺で暴力が激化する中、BINUHの責任者として、厳しい任務を担うことになる。
2023年8月25日/ハイチ、首都ポルトープランス、ギャングの暴力に抗議する女性(Odelyn Joseph/AP通信)

国連のグテレス(Antonio Guterres)事務総長がメキシコの外交官であるカルロス・ルイス(Carlos Ruiz)氏を国連ハイチ統合事務所(BINUH)の所長に任命した。国連が3日、明らかにした。

BINUHは声明で、ルイス氏は2019年からコロンビアの国連特別代表として勤務し、同国の和平合意の実施状況を監視し、政府と左翼ゲリラ間の最近の和平交渉にも携わってきたと明らかにした。

ルイス氏は首都プルトープランスとその周辺で暴力が激化する中、BINUHの責任者として、厳しい任務を担うことになる。

ハイチの治安は2021年7月のモイーズ(Jovenel Moise)大統領暗殺と同年8月に西部で発生したM7.2の大地震で崩壊し、破壊と暴力が蔓延している。

ポルトープランスでは3年ほど前から複数のギャングが地域の支配権をめぐって血みどろの抗争を繰り広げている。大統領のポストは今も空席のままだ。

ポルトープランスの90%がギャングの支配下に置かれ、市内の学校、企業、公共機関はほぼ全て閉鎖。2つの主要刑務所もギャングの攻撃で崩壊し、4000人以上の受刑者が脱獄した。

ポルトープランスと周辺地域の暴力は昨年10月頃から激化。アルティボニット県ではグラン・グリフとみられる武装ギャングが複数の地区を襲撃し、市民少なくとも115人を虐殺した。逮捕者は出ていない。

最新のギャング間抗争は3月初めに勃発。ポルトープランスの大部分を支配するギャング連合「ヴィヴ・アンサム(Viv Ansam)」と対立する複数のギャングが民間人を巻き込みながら激しい縄張り争いを繰り広げている。

国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)はギャングがポルトープランスを越えて中央地域に影響力を拡大していると警告。今年1月から5月末までの間に少なくとも2680人がギャング暴力で死亡し、130万人もの市民が避難を余儀なくされていると報告した。

国連薬物犯罪事務所(UNODC)は2日、ギャングがポルトープランスの「ほぼ全域」を支配したと明らかにした。

BINUHが運営するMSS(ハイチ国連支援ミッション)はポルトープランスなどで国家警察を支援しているが、兵力、資金、装備の不足に直面し、困難な状況にある。

暫定大統領評議会のアルフォンス・ジャン(Fritz Alphonse Jean)議長は先月、ギャングとの戦いを有利に進めるため、外国の民間軍事会社を雇っていることを初めて認めた。

米国やカナダはMSSを平和維持部隊に格上げするよう求めているが、中国とロシアが難色を示している。

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