◎バイデン政権はオルテガ大統領の野党政治家や人権活動家に対する弾圧をめぐり、多くの政府高官や関係者に制裁を科している。
ニカラグア、オルテガ大統領(右)とその妻ムリジョ副大統領の看板(Oswaldo Rivas/ロイター通信)

ニカラグアのムリジョ(Rosario Murillo)副大統領は30日、米国の新しい大使の入国は認められないと再度表明した。

国営メディアによると、独裁者オルテガ(Daniel Ortega)大統領の妻であるムリジョ氏は「ロドリゲス(Hugo Rodriguez)米国大使の入国を許可しない」と外務省を通じて声明を発表したという。

ムリジョ氏は米国を「ヤンキー帝国」と非難し、大使の入国は認められないと主張した。「帝国主義者にハッキリ伝えておきましょう。ヤンキー帝国大使の入国は認められません...」

米上院は29日にロドリゲス氏の大使就任を承認した。

バイデン政権はオルテガ氏の野党政治家や人権活動家に対する弾圧をめぐり、多くの政府高官や関係者に制裁を科している。

オルテガ氏と与党サンディニスタ民族解放戦線(FSLN)は昨年11月、欧米諸国に「茶番」と呼ばれた総選挙で4期連続となる勝利を収めた。

オルテガ氏はカトリック教会を含む政府に批判的な宗教・団体・活動家を「外国のスパイ」と呼び、厳しく取り締まっている。政府を批判したという理由で閉鎖を命じられたNGOや団体は1000を超えた。

多くの野党政治家や活動家が国外逃亡を余儀なくされている。

オルテガ氏は政府を批判する個人や団体を「犯罪者」「テロリスト」「米国の手先」などと非難し、西側と決別。中露に急接近している。

オルテガ氏は7月、ロドリゲス氏が政府を批判したという理由で同氏の着任申請を取り下げた。

ロドリゲス氏は今週開かれた上院公聴会で、「ニカラグアに方向転換をもたらすために、あらゆる経済・外交手段を用いる」と約束した。

またロドリゲス氏はニカラグアを「中米のバリア国家」と評し、オルテガ氏を「独裁者」と糾弾した。

ニカラグア外務省は30日の声明で、「政府はその権限、国家主権を行使して、ロドリゲス氏に与えられた承認を直ちに撤回する」と表明。入国は認められないとした。

ニカラグアの元米州機構(OAS)大使であるマクフィールズ(Arturo McFields)氏は30日、ムリジョ氏を非難し、「米国とニカラグアの関係は過去数十年で最悪」と懸念を表明した。

マクフィールズ氏はオルテガ氏の人権侵害を非難し、今年3月に辞任した。

一方、ロイター通信は今週、外交筋の話を引用し、「ニカラグア政府がEU大使に国外退去を要請した」と報じた。EU大使は「ペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)」に指定されたとみられる。

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